表示登記(表題登記)とは?建物新築時に必要な登記手続きを解説
表示登記(表題登記)とは不動産の物理的状況を登記簿の表題部に記録する登記です。建物新築時の申請義務、土地の表題登記との違い、手続きの流れを解説します。
表示登記(表題登記)とは
表示登記(ひょうじとうき)とは、不動産の物理的な状況(所在、面積、構造など)を登記簿の表題部に記録するための登記のことである。現行の不動産登記法(平成16年法律第123号)では「表題登記」と呼称されるが、旧法時代の「表示登記」という用語も実務では広く使われている。
表題登記は、不動産の「権利」ではなく「物理的状況」を公示するものであり、権利登記(所有権保存登記、所有権移転登記等)とは性質を異にする。表題登記によって、その不動産がどこに所在し、どのような形状・規模・用途であるかが登記記録に記録される。
建物を新築した場合や、埋立て等により新たに土地が生じた場合には、所有者に表題登記の申請義務が課されている。表題登記は不動産登記制度の出発点であり、これがなされて初めてその不動産に関する登記記録が起こされ、その後の権利登記が可能となる。不動産鑑定評価においても、対象不動産の物的確認の基礎となる重要な登記である。
不動産登記・法律における位置づけ
表題登記に関する法的根拠は、不動産登記法に詳細に規定されている。
不動産登記法第2条第20号は「表題登記」を「表示に関する登記のうち、当該不動産について表題部に最初にされる登記をいう」と定義している。つまり、表題登記とは、ある不動産について登記記録が初めて作成される際の登記である。
土地の表題登記
土地については、不動産登記法第36条が申請義務を規定している。新たに生じた土地(埋立て、公有水面の埋立て等)の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならない。ただし、日本の大部分の土地は既に表題登記がなされているため、実務上、土地の表題登記が新規に申請されるケースは多くない。
建物の表題登記
建物については、不動産登記法第47条第1項が申請義務を規定している。新築した建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならない。この申請義務は、建物を新築した場合に最も一般的に適用される。申請期限(1か月以内)を怠った場合は、10万円以下の過料に処せられる可能性がある(不動産登記法第164条)。
表示に関する登記の種類
表示に関する登記は表題登記だけではない。既に表題登記がなされた不動産について、その物理的状況に変更が生じた場合に行う登記も含まれる。具体的には以下のものがある。
土地に関するものとしては、地目変更登記、地積変更登記、地積更正登記、分筆登記、合筆登記がある。建物に関するものとしては、建物の種類・構造・床面積の変更登記、増築による床面積変更登記、建物の滅失登記、建物の合体による登記がある。
表題登記と権利登記の関係
不動産登記法は、表示に関する登記と権利に関する登記を明確に区別している。表題登記は不動産の物理的状況を公示するものであり、権利登記は所有権その他の権利関係を公示するものである。表題登記が完了した後に、所有権保存登記(不動産登記法第74条)を行うことで、権利部甲区が設けられ、以降の権利登記(所有権移転登記、抵当権設定登記等)が可能となる。
土地家屋調査士の業務
表示に関する登記の申請手続きは、土地家屋調査士が代理して行うのが一般的である。土地家屋調査士法第3条は、土地家屋調査士の業務として表示に関する登記の申請手続き等を規定している。これに対し、権利に関する登記の申請手続きは司法書士が代理するのが一般的である。
具体例・実務での使われ方
不動産鑑定評価の実務において、表題登記(表示に関する登記)は対象不動産の物的確認の基礎となる。
建物新築時の流れ
建物を新築した場合の典型的な流れは以下のとおりである。まず、建物が完成(引渡し)した後、土地家屋調査士が建物の測量を行い、建物図面・各階平面図を作成する。次に、これらの図面と建築確認済証等の添付書類とともに表題登記を申請する。法務局(登記官)が審査を行い、問題がなければ表題登記が完了する。その後、司法書士が所有権保存登記を申請し、さらに住宅ローンがある場合は抵当権設定登記を行う。
鑑定評価における表題部情報の活用
鑑定評価では、全部事項証明書の表題部に記載された情報を基に、対象不動産の物的状況を確認する。土地であれば所在・地番・地目・地積が、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積・新築年月日が記載されている。これらの情報は、対象不動産の確定と物的確認の出発点となる。
特に建物の新築年月日(原因及びその日付欄に記載)は、建物の経過年数を算出する上で重要な情報である。経過年数は減価修正の計算に直結するため、表題部の情報は建物評価において不可欠である。
表題部と現況の乖離
実務上注意すべきは、表題部の記載内容と現況が乖離している場合があることである。例えば、増築が行われたにもかかわらず床面積の変更登記がなされていないケースや、用途変更(居宅から事務所への転用等)が行われたにもかかわらず種類変更の登記がなされていないケースがある。鑑定評価では、登記情報だけでなく現地調査によって実際の物理的状況を確認し、両者の乖離がある場合はその旨を鑑定評価書に記載する必要がある。
未登記建物の問題
表題登記がなされていない建物(未登記建物)も少なからず存在する。特に古い建物や増築部分で未登記のケースが多い。未登記建物は登記記録が存在しないため、全部事項証明書を取得することができない。鑑定評価において未登記建物が対象となる場合は、その旨を明記し、現地調査や建築確認記録等により物理的状況を把握する必要がある。
試験での出題ポイント
不動産鑑定士試験において、表題登記に関する知識は行政法規で出題される可能性がある。
申請義務と申請期間
建物の表題登記は、所有権取得の日から1か月以内に申請しなければならない(不動産登記法第47条第1項)。この申請義務と期間は基本的な出題ポイントである。権利登記には申請義務がないのに対し、表題登記には申請義務があるという違いは重要である(ただし、相続登記は令和6年4月から義務化されている点にも注意)。
表示に関する登記と権利に関する登記の区別
両者の性質の違い(物理的状況の公示 vs 権利関係の公示)、申請義務の有無、代理する専門家の違い(土地家屋調査士 vs 司法書士)などは、体系的に理解しておくべきである。
登記官の職権による登記
表示に関する登記は、登記官が職権で行うことができる(不動産登記法第28条)。これに対し、権利に関する登記は原則として当事者の申請によってのみ行われる。この違いは登記制度の基本構造として出題される可能性がある。
分筆・合筆登記の要件
分筆登記と合筆登記は表示に関する登記の一種であり、それぞれ要件が定められている。特に合筆登記の制限(所有者が異なる場合、地目が異なる場合、抵当権の設定がある場合等の制限)は出題されやすい論点である。
区分建物の表題登記
マンション(区分建物)の表題登記には特有の規定がある。区分建物の表題登記は、原始取得者(通常は分譲会社)が一棟の建物に属するすべての区分建物について一括して申請しなければならない(不動産登記法第48条第1項)。
よくある疑問・誤解
Q: 「表示登記」と「表題登記」は違うものですか?
現行法(平成16年制定の不動産登記法)では「表題登記」が正式名称であり、旧法では「表示登記」と呼ばれていた。内容的にはほぼ同じものを指しており、実務では両方の用語が使われている。試験対策としては、現行法の「表題登記」という用語を使うのが正確である。
Q: 表題登記をしないとどうなりますか?
申請義務に違反した場合、10万円以下の過料に処せられる可能性がある(不動産登記法第164条)。また、表題登記がなければ所有権保存登記ができないため、権利の対抗要件を備えることができず、抵当権の設定もできない。住宅ローンの利用にも支障が生じることとなる。
Q: 表題登記は自分で申請できますか?
法律上は所有者本人が申請することも可能である。ただし、建物図面や各階平面図の作成には専門的な測量知識が必要であり、一般的には土地家屋調査士に依頼するのが実務上の標準である。
Q: 表題登記だけで所有権は保護されますか?
表題登記のみでは所有権の対抗力は得られない。所有権を第三者に対抗するためには、表題登記の後に所有権保存登記を行う必要がある。表題登記はあくまで不動産の物理的状況を公示するものであり、権利を公示するものではない。
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