Phase II(詳細調査)とは?土壌汚染の実態把握と不動産評価の関係
Phase II(詳細調査)の目的と調査方法を解説。土壌サンプリングの手順、溶出量基準・含有量基準の判定、調査費用の目安、不動産鑑定評価への影響、鑑定士試験の出題ポイントを説明します。
Phase II(詳細調査)とは
Phase II(詳細調査)とは、地歴調査(Phase I)の結果を踏まえ、実際に土壌や地下水のサンプル(試料)を採取・分析し、土壌汚染の有無および汚染の程度を定量的に把握する調査のことである。Phase Iが文献調査と現地踏査に基づく定性的な評価であるのに対し、Phase IIは物理的なサンプリングと化学分析に基づく定量的な評価を行う点が決定的に異なる。
土壌汚染対策法の枠組みでは、Phase IIは「試料採取等の調査」に相当する。指定調査機関が実施し、採取した試料を計量証明事業者等が分析することにより、特定有害物質の濃度が法定の基準値を超過しているか否かを判定する。超過が確認された場合には、要措置区域または形質変更時要届出区域への指定につながる。
不動産鑑定評価との関連では、Phase IIの調査結果は土壌汚染の程度を定量的に示す客観的なデータであり、汚染地の鑑定評価における減価額の算定根拠として極めて重要な位置を占める。調査結果に基づき、必要な対策工法とその費用を見積もることが可能となるためである。
土壌汚染対策法における Phase II の位置づけ
調査の法的根拠
土壌汚染対策法に基づく土壌汚染状況調査は、地歴調査(土地の利用の履歴等の調査)と試料採取等の調査で構成される。Phase IIは後者に該当し、地歴調査で「特定有害物質によって汚染されているおそれがある」と判定された区画について実施される。
法律上、Phase IIの調査は指定調査機関が行わなければならない。指定調査機関は、環境大臣の指定を受けた専門機関であり、技術管理者の配置等の要件を満たす必要がある。
調査の手順
Phase IIの調査は、汚染物質の種類に応じて以下の手順で実施される。
第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)の場合:
まず土壌ガス調査を実施する。対象区画を10メートル格子に区切り、各格子の中央付近で土壌ガスを採取・分析する。土壌ガスが検出された区画については、さらにボーリング調査により土壌試料および地下水試料を採取し、溶出量基準との比較を行う。
第二種特定有害物質(重金属等)の場合:
対象区画を30メートル格子(汚染のおそれが比較的少ない区画)または10メートル格子(汚染のおそれが多い区画)に区切り、各格子の表層土壌(深度0から5センチメートルおよび5から50センチメートル)を採取する。採取した試料について溶出量基準および含有量基準との比較を行う。
第三種特定有害物質(農薬等)の場合:
第二種と同様のサンプリング方法で表層土壌を採取し、溶出量基準との比較を行う。
基準値の体系
土壌汚染対策法における汚染の判定基準は、以下の2つで構成される。
溶出量基準:土壌から地下水に溶出する有害物質の量に関する基準。地下水の飲用による健康リスクを評価するものであり、すべての特定有害物質(26物質)に設定されている。例えば、鉛の溶出量基準は0.01mg/L以下、トリクロロエチレンは0.01mg/L以下である。
含有量基準:土壌に含有される有害物質の量に関する基準。土壌の直接摂取(口や皮膚からの摂取)による健康リスクを評価するものであり、第二種特定有害物質(重金属等)9物質にのみ設定されている。例えば、鉛の含有量基準は150mg/kg以下、ヒ素は150mg/kg以下である。
溶出量基準のみを超過した場合は、地下水経由のリスクが問題となり、要措置区域または形質変更時要届出区域に指定される。含有量基準を超過した場合は、直接摂取のリスクが問題となり、同様に区域指定がなされる。
具体例・実務での使われ方
事例1:揮発性有機化合物の調査
Phase Iの結果、クリーニング工場跡地でテトラクロロエチレンの使用歴が確認された敷地(2,000平方メートル)についてPhase IIを実施したケースを想定する。
まず、対象区画を10メートル格子(20地点)に区切り、土壌ガス調査を実施した。その結果、旧溶剤使用区域を中心とする8地点でテトラクロロエチレンの土壌ガスが検出された。
次に、土壌ガスが検出された8地点についてボーリング調査を実施し、深度1メートル、3メートル、5メートル、帯水層の各深度で土壌試料と地下水試料を採取した。分析の結果、5地点で溶出量基準(0.01mg/L)を超過するテトラクロロエチレンが検出され、最大値は0.15mg/L(基準の15倍)であった。汚染は地下水面付近に集中しており、深度方向では3メートルから5メートルの範囲が最も汚染濃度が高かった。
この調査結果に基づき、対策工法として原位置浄化(バイオレメディエーション)が検討され、浄化費用は約8,000万円、浄化期間は約3年と見積もられた。
事例2:重金属汚染の調査
鋳造工場跡地(3,000平方メートル)でPhase IIを実施したケースである。Phase Iの結果、鉛およびヒ素による汚染のおそれが指摘されていた。
対象区画を10メートル格子(30地点)に区切り、各地点で表層土壌(5区間混合試料)を採取した。分析の結果、溶出量基準については鉛が3地点で超過(最大0.05mg/L、基準値0.01mg/L)、含有量基準については鉛が5地点で超過(最大800mg/kg、基準値150mg/kg)していた。
この結果を受けて、汚染範囲の詳細な特定(絞り込み調査)と対策工法の検討が行われ、掘削除去(汚染土壌の場外搬出・処理)が選択された。掘削除去費用は約2億円と見積もられた。
調査費用の目安
Phase IIの調査費用は、調査対象面積、サンプリング地点数、分析対象物質の種類と数、ボーリングの深度等によって大きく変動する。一般的な目安は以下のとおりである。
- 土壌ガス調査:1地点あたり3万円から5万円
- ボーリング調査:1本あたり30万円から50万円(深度による)
- 土壌分析:1試料あたり3万円から10万円(分析項目数による)
- 地下水分析:1試料あたり5万円から15万円
中規模の工場跡地(3,000平方メートル程度)の場合、Phase IIの総費用は300万円から1,000万円程度となることが多い。汚染の疑いがある物質の種類や調査の精度によって費用は大きく変動する。
不動産鑑定評価への反映
Phase IIの調査結果は、汚染地の鑑定評価における減価額の算定に直結する。調査により確認された汚染の範囲・深度・濃度に基づき、必要な対策工法を選定し、対策費用を見積もることが可能となる。
鑑定評価における減価要因は、通常以下のように整理される。
- 対策費用(浄化費用、封じ込め費用等)
- 対策期間中の使用収益の阻害
- 対策後のスティグマ(心理的嫌悪感による市場性減退)
- モニタリング費用(対策後の経過観察費用)
Phase IIの結果がなければ、これらの減価要因を合理的に見積もることが困難であるため、Phase IIは汚染地の鑑定評価にとって不可欠な前提資料となる。
試験での出題ポイント
Phase IとPhase IIの違い
Phase I(地歴調査)とPhase II(詳細調査)の違いを、調査目的、調査方法、調査結果の性質の観点から正確に説明できることが重要である。Phase Iは定性的なスクリーニング、Phase IIは定量的な実態把握であるという基本的な区別を明確にすべきである。
調査手順の体系
特定有害物質の種類(第一種、第二種、第三種)に応じた調査手順の違いを理解しておく必要がある。第一種は土壌ガス調査から始まるのに対し、第二種・第三種は表層土壌の採取から始まるという手順の違いは基本的な知識として押さえておくべきである。
基準値の体系
溶出量基準と含有量基準の違い(対象リスクの違い、適用される物質の範囲の違い)を正確に理解しておくことが求められる。溶出量基準はすべての特定有害物質に設定されているが、含有量基準は第二種特定有害物質のみに設定されている点は重要である。
鑑定評価基準との関連
Phase IIの調査結果が鑑定評価における減価額の算定根拠としてどのように活用されるかを理解しておく必要がある。特に、「土壌汚染に関する不動産鑑定評価上の運用指針I」において示されている減価要因の体系(浄化費用、使用収益阻害、スティグマ、調査・モニタリング費用)との関連を整理しておくべきである。
区域指定への流れ
Phase IIの結果、基準値を超過する汚染が確認された場合の区域指定(要措置区域または形質変更時要届出区域)への流れを理解しておく必要がある。特に、どのような場合に要措置区域となり、どのような場合に形質変更時要届出区域となるかの判断基準を押さえておくべきである。
よくある疑問・誤解
「Phase IIで汚染が見つからなければ安全」と言えるか
Phase IIの調査結果で基準値を超過する汚染が検出されなかったとしても、土壌汚染が「存在しない」と断言することはできない。サンプリングは離散的な地点で行われるため、サンプリング地点の間に汚染が存在する可能性は排除できない。ただし、適切なサンプリング計画に基づいて調査が実施された場合、基準値超過がないという結果は一定の信頼性をもって土壌汚染リスクが低いことを示すものと評価できる。
Phase IIの調査範囲はどこまでか
土壌汚染対策法に基づく法定調査では、対象地の全域について一定の格子間隔でサンプリングを行うことが原則である。ただし、Phase Iの結果に基づき、汚染のおそれがない区画については調査を省略できる場合がある。一方、不動産取引における自主的なPhase IIでは、Phase Iの結果やコストの制約に応じて調査範囲を調整することがある。自主調査の場合、法定調査ほどの網羅性が確保されないことがあるため、その限界を理解した上で結果を解釈する必要がある。
調査費用は減価要因に含まれるか
Phase IIの調査費用自体が不動産の減価要因として鑑定評価に反映されるかどうかは、状況による。既に調査が実施済みでその費用が支出済みの場合は、鑑定評価額に直接影響しない。一方、今後Phase IIの実施が必要な場合には、見込みの調査費用が減価要因として考慮されることがある。「土壌汚染に関する不動産鑑定評価上の運用指針I」では、調査費用を減価要因の一つとして位置づけている。
汚染が確認された後の対策工法の選択
Phase IIで汚染が確認された場合、対策工法の選択は汚染の種類・程度・範囲、土地の利用目的、コスト等を総合的に考慮して決定される。主な対策工法として、掘削除去(汚染土壌の場外搬出)、原位置浄化(バイオレメディエーション、化学的酸化分解等)、封じ込め(遮水壁の設置等)、覆土(盛土による被覆)などがある。鑑定評価においては、最も合理的な対策工法を前提として減価額を算定すべきであり、必ずしも最も高額な掘削除去を前提とする必要はない。
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