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国際評価基準(IVS)とは?グローバルな不動産評価のルールを解説

国際評価基準(IVS)の概要と不動産鑑定評価への影響を解説。IVSCの役割、市場価値と公正価値の定義、日本の鑑定評価基準との相違点、鑑定士試験での出題ポイントを説明します。

国際評価基準(IVS)とは

国際評価基準(International Valuation Standards、以下IVS)とは、国際評価基準審議会(International Valuation Standards Council、以下IVSC)が策定・公表する、資産評価に関する国際的な基準のことである。不動産に限らず、動産、事業、金融商品、無形資産など、あらゆる種類の資産の評価に適用される包括的な基準体系として位置づけられている。

IVSCは1981年に設立された非営利組織であり、ロンドンに本部を置く。世界各国の評価専門家団体が加盟しており、日本からは公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会がメンバーとして参加している。IVSは定期的に改訂が行われ、直近ではIVS 2022が公表されている。

IVSの目的は、評価の品質と一貫性を国際的に確保し、評価の利用者(投資家、金融機関、規制当局等)の信頼を高めることにある。特に、国際財務報告基準(IFRS)の普及に伴い、公正価値測定の基礎となる評価の信頼性が重視される中で、IVSの存在意義はますます大きくなっている。

IVSの構成と不動産鑑定評価における位置づけ

IVSの構成

IVS 2022は以下のような構成をとっている。

一般基準(General Standards):すべての評価に共通する基本的な要件を定めている。

  • IVS 101:評価の範囲(Scope of Work)
  • IVS 102:調査と遵守(Investigations and Compliance)
  • IVS 103:報告(Reporting)
  • IVS 104:評価の基礎(Bases of Value)
  • IVS 105:評価アプローチと手法(Valuation Approaches and Methods)

資産別基準(Asset Standards):資産の種類ごとの固有の留意事項を定めている。

  • IVS 200:事業及び事業持分(Business and Business Interests)
  • IVS 210:無形資産(Intangible Assets)
  • IVS 300:不動産持分(Real Property Interests)
  • IVS 400:動産(Personal Property)
  • IVS 410:開発用不動産(Development Property)
  • IVS 500:金融商品(Financial Instruments)

IVS 104における価値の基礎

IVSの中核をなすのが、IVS 104「評価の基礎」(Bases of Value)である。ここでは、以下の主要な価値概念が定義されている。

市場価値(Market Value):評価時点において、自発的な売主と自発的な買主との間で、適切なマーケティングの後に、各当事者が知識をもち慎重に行動し、かつ強制されることなく行われる独立当事者間取引において、資産が交換されるであろう推定金額をいう。

市場賃料(Market Rent):評価時点において、適切なマーケティングの後に、各当事者が知識をもち慎重に行動し、かつ強制されることなく行われる独立当事者間取引において、不動産が賃貸されるであろう推定金額をいう。

公正価値(Fair Value):特定の当事者間において、各当事者の個別の利点または不利な点を反映した資産の交換推定価格をいう。IFRSにおける公正価値(IFRS第13号)とは定義が異なる点に注意が必要である。

投資価値(Investment Value):特定の投資家または投資家グループにとっての、個別の投資目的に基づく資産の価値をいう。

日本の鑑定評価基準との関係

日本の不動産鑑定評価基準は、IVSとは独立した国内基準として策定されているが、IVSの概念や枠組みとの整合性を意識した改訂が進められている。主要な概念の対応関係は以下のとおりである。

IVSの市場価値(Market Value)は、日本の鑑定評価基準における正常価格に概念的に対応する。ただし、定義の文言や想定される市場条件には細かな差異がある。IVSの投資価値(Investment Value)は、限定価格や特定価格の概念に部分的に対応する。

具体例・実務での使われ方

クロスボーダー取引における活用

海外投資家が日本の不動産を取得する場合、または日本の投資家が海外不動産に投資する場合、IVSに準拠した鑑定評価書が求められることがある。特に、機関投資家やグローバルファンドは、ポートフォリオ全体の評価をIVSベースで統一することにより、異なる国の不動産を同一の基準で比較可能にしている。

例えば、シンガポール系の不動産ファンドが東京のオフィスビルを取得する際、ファンドの投資委員会にはIVSに準拠した鑑定評価書が提出される。日本の不動産鑑定士が作成する鑑定評価書は日本の鑑定評価基準に準拠しているが、IVSとの整合性が確認された上で利用されるケースが一般的である。

IFRS対応の公正価値測定

IFRSを任意適用している日本企業やIFRS適用が義務づけられている海外企業では、IFRS第13号「公正価値測定」に基づいて投資不動産等の公正価値を測定する必要がある。IVSはIFRS第13号の公正価値の概念と高い整合性を有しており、IVSに準拠した鑑定評価額がIFRSの公正価値として利用されることが多い。

IFRS第13号の公正価値は、「市場参加者間の秩序ある取引において、測定日に資産を売却するために受け取るであろう価格または負債を移転するために支払うであろう価格」と定義されており、出口価格(Exit Price)の概念に基づいている。

J-REITと海外投資家

J-REITの投資口は海外投資家も多数保有しており、J-REITが開示する鑑定評価額の国際的な信頼性が問われている。日本の鑑定評価基準に基づく鑑定評価額とIVSの市場価値の整合性については、日本不動産鑑定士協会連合会がガイドラインを公表し、実務的な対応を進めている。

評価手法の国際比較

IVS 105では、評価アプローチとして市場アプローチ(Market Approach)、収益アプローチ(Income Approach)、原価アプローチ(Cost Approach)の3つを掲げている。これは日本の鑑定評価基準における取引事例比較法、収益還元法、原価法の3手法に対応する。手法の名称や細部の手続きには差異があるものの、基本的な考え方は共通している。

試験での出題ポイント

IVSの市場価値と鑑定評価基準の正常価格の比較

IVSの市場価値の定義と日本の鑑定評価基準の正常価格の定義を比較し、共通点と相違点を説明できることが求められる。両者はいずれも合理的な市場参加者を前提とした交換価値の概念であるが、定義の文言や前提条件に差異がある点を整理しておく必要がある。

IVSとIFRSの関係

IVSがIFRSの公正価値測定(IFRS第13号)とどのように関連するかを理解しておくことが重要である。IVSの市場価値はIFRSの公正価値と高い整合性を有しているが、完全に同一ではない。特にIVSにおける公正価値(Fair Value)の定義がIFRSの公正価値とは異なる点は注意が必要である。

評価の基礎(Bases of Value)の体系

IVSが定義する複数の価値概念(市場価値、市場賃料、公正価値、投資価値、清算価値等)の体系を理解し、それぞれの概念が日本の鑑定評価基準のどの概念に対応するかを整理しておくべきである。

IVSCの役割と組織

IVSCがどのような組織であり、どのようにIVSが策定されるかについての基本的な知識も押さえておく必要がある。IVSCの組織構成(理事会、基準審議会、専門家諮問委員会等)やメンバー構成の概要を理解しておくとよい。

よくある疑問・誤解

「IVSは不動産専用の基準」ではない

IVSは不動産の評価基準として認識されることが多いが、実際にはすべての種類の資産(事業、金融商品、無形資産、動産等)を対象とする包括的な評価基準である。不動産に関する固有の規定はIVS 300(不動産持分)およびIVS 410(開発用不動産)に定められているが、これらは一般基準の上に構築される追加的な規定である。

IVSの市場価値とIFRSの公正価値は同じか

IVSの市場価値(Market Value)とIFRSの公正価値(Fair Value)は、概念的に非常に近いが、厳密には同一ではない。IFRSの公正価値は出口価格(Exit Price)として定義されるのに対し、IVSの市場価値は交換価格として定義される。また、IVS自体も「公正価値」を独自に定義しており、これはIFRSの公正価値とは異なる概念である。この3つの概念を混同しないことが重要である。

日本の鑑定士はIVSに準拠する義務があるか

日本の不動産鑑定士が国内業務を行う際に準拠すべきは、日本の不動産鑑定評価基準である。IVSへの準拠は義務づけられていない。ただし、クロスボーダー取引やIFRS対応の評価業務では、依頼者からIVSへの準拠が求められることがあり、その場合はIVSの要件を理解し対応する能力が必要となる。

IVSは法的拘束力を持つか

IVS自体は法的拘束力を有する法令ではなく、あくまで民間団体が策定した自主基準(ベストプラクティス基準)である。ただし、各国が法令や規制の中でIVSを参照または採用している場合には、間接的に法的効力を持つことがある。イギリスのRICS(王立チャータード・サーベイヤーズ協会)の評価基準(Red Book)はIVSを採用しており、RICSメンバーにはIVSへの準拠が義務づけられている。

関連用語

  • 減損会計 - IFRSの減損テスト(IAS第36号)と連動し、IVSに基づく評価が活用される
  • 賃貸等不動産の時価 - 日本の会計基準における時価開示で、IVSの市場価値概念と関連する
  • 低価法 - 棚卸資産の評価における時価概念で、IAS第2号を通じてIVSと関連する
  • 資産除去債務 - IFRSのIAS第37号に対応する会計処理で、IVSによる評価が関連する場面がある
  • スティグマ - 国際的にも議論される不動産の心理的減価要因で、IVSの評価実務でも考慮される
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