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実務修習の修了考査対策|合格率と効果的な準備方法を解説

不動産鑑定士の実務修習の修了考査対策を解説。修了考査の概要、合格率(約7〜8割)、出題傾向、効果的な準備方法、不合格になるケースと対策を紹介します。

修了考査は鑑定士登録への最後の関門

不動産鑑定士試験(論文式試験)に合格した後、鑑定士として正式に登録するためには「実務修習」を修了しなければなりません。そして、その修了を認定するのが「修了考査」です。修了考査は、鑑定士登録への最後の関門であり、ここで不合格になると再度修習を受ける必要が生じるため、しっかりとした対策が求められます。

修了考査の合格率は概ね7〜8割程度と、論文式試験と比較すれば高い水準です。しかし、逆に言えば2〜3割の修習生が不合格となっており、決して油断できる試験ではありません。特に、鑑定評価報告書の作成経験が浅い修習生や、指導鑑定士との関係構築がうまくいかなかったケースでは、不合格のリスクが高まります。

本記事では、実務修習の全体像を踏まえつつ、修了考査の概要、合格率の推移、効果的な準備方法を詳しく解説します。これから実務修習に臨む方、あるいは修了考査に不安を感じている方の参考になれば幸いです。


実務修習の全体像と修了考査の位置づけ

実務修習は、国土交通大臣の登録を受けた実務修習機関(公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会)が実施する研修プログラムです。論文式試験合格者が鑑定士として登録するために必ず修了しなければならない課程であり、その内容は大きく以下の3つで構成されます。

講義(eラーニング)

鑑定評価に関する実務知識を体系的に学ぶ講義です。オンデマンド形式のeラーニングで受講でき、自分のペースで進められます。内容は以下のような科目に分かれています。

  • 不動産鑑定評価に関する実務
  • 不動産の類型別評価手法
  • 鑑定評価報告書の作成方法
  • 不動産に関する法令・税制
  • 不動産市場の分析手法

基本演習

全国数カ所の会場で行われる集合研修です。実際の鑑定評価業務を模したケーススタディを通じて、評価手法の実践的な適用方法を学びます。グループワーク形式で行われることが多く、他の修習生との議論を通じて理解を深めます。

実地演習

指導鑑定士のもとで、実際の不動産について鑑定評価報告書を作成する実習です。これが実務修習の中核を成す部分であり、修了考査にも直結します。

実地演習では、合計13類型の不動産について鑑定評価報告書を作成します。13類型とは以下の通りです。

番号類型内容
1更地建物のない土地の評価
2建付地建物が存する土地の評価
3借地権借地権の評価
4底地底地の評価
5区分所有建物及びその敷地マンション等の評価
6自建(事務所)自用の事務所ビルの評価
7自建(住宅)自用の住宅の評価
8貸家及びその敷地賃貸不動産の評価
9商業地の更地商業地域の土地評価
10工業地の更地工業地域の土地評価
11農地農地の評価
12林地林地の評価
13宅地見込地宅地見込地の評価

コースの選択肢

実務修習には主に以下の2つのコースがあります。

  • 1年コース: 1年間で全課程を修了するコース。鑑定事務所に所属している方向け
  • 2年コース: 2年間かけて修了するコース。他の仕事を続けながら修習する方向け

1年コースは短期間で修了できるメリットがありますが、業務と並行して13本の報告書を作成する負担は非常に大きくなります。一方、2年コースは時間的余裕がある反面、モチベーションの維持が課題となります。

確認問題

実務修習の実地演習では、合計10類型の不動産について鑑定評価報告書を作成する。


修了考査の概要と試験形式

修了考査は、実務修習の全課程を修了した修習生が受験する最終試験です。試験の内容と形式について詳しく見ていきましょう。

試験の構成

修了考査は以下の2部構成で実施されます。

第1部: 記述考査(筆記試験)

鑑定評価報告書の作成に関する知識と実務能力を問う筆記試験です。与えられた条件に基づいて、鑑定評価の手順や手法の適用方法を記述する形式が中心です。

主な出題範囲は以下の通りです。

  • 鑑定評価の基本的事項の確定(対象確定条件、価格の種類等)
  • 各手法(取引事例比較法、原価法、収益還元法)の適用
  • 試算価格の調整と鑑定評価額の決定
  • 鑑定評価報告書の記載事項

第2部: 口述考査(口頭試問)

修習生が作成した鑑定評価報告書の内容について、面接形式で質疑応答を行う試験です。自分が作成した報告書の内容を的確に説明できるか、評価の根拠を論理的に述べられるかが問われます。

試験時間と配点

区分時間配点(目安)
記述考査約3時間60%程度
口述考査約20〜30分40%程度

記述考査と口述考査の総合評価で合否が決まります。どちらか一方が極端に低いと、総合点が基準を超えていても不合格になる可能性があるため、バランスの良い対策が必要です。


合格率の推移と不合格の傾向

修了考査の合格率は年度によって変動がありますが、概ね70〜85%の範囲で推移しています。

年度受験者数(概数)合格率(概数)
2019年約120名約80%
2020年約110名約75%
2021年約130名約82%
2022年約120名約78%
2023年約130名約80%
2024年約125名約79%

合格率は一見高く見えますが、注意すべき点があります。まず、受験者は全員が論文式試験に合格した優秀な人材であるということです。その中で2〜3割が不合格になるということは、修了考査自体がかなりの実力を要求していることを意味します。

不合格になりやすいパターン

不合格者の傾向を分析すると、以下のパターンが多く見られます。

報告書の完成度が低い

13類型の報告書のうち、特に複雑な類型(借地権・底地・貸家及びその敷地等)の報告書の完成度が低いケースです。指導鑑定士のチェックを受けて修正を重ねる時間が足りなかったことが原因です。

口述考査での説明力不足

自分が作成した報告書の内容を、口頭で的確に説明できないケースです。「なぜこの手法を選んだのか」「なぜこの事例を採用したのか」など、評価の根拠を論理的に説明する力が不足しています。

基本的事項の理解不足

鑑定評価基準の基本的事項(対象確定条件、価格の種類、各手法の適用要件等)の理解が不十分なケースです。論文式試験の知識が薄れてしまい、実務に必要な基礎知識が曖昧になっている修習生に多く見られます。

確認問題

修了考査の合格率は概ね70〜85%で推移しており、受験者全員が論文式試験合格者であることを考えると、決して易しい試験ではない。


13類型の報告書作成のポイント

修了考査の成否を左右するのは、13類型の鑑定評価報告書の質です。各類型のポイントを押さえて、完成度の高い報告書を作成しましょう。

更地・建付地の評価

更地と建付地は最も基本的な類型であり、ここでしっかりとした報告書を作成できるかが、以降の類型にも影響します。

  • 取引事例比較法: 事例の選定理由を明確に。地域要因・個別的要因の比較は丁寧に
  • 原価法: 土地の再調達原価の算定根拠を論理的に
  • 収益還元法: 賃料水準の設定根拠を明確に

借地権・底地の評価

借地権と底地は配分法的な考え方が必要であり、報告書の作成難易度が高い類型です。

  • 借地権割合の設定根拠
  • 底地の収益性の分析
  • 契約条件(地代、契約期間等)の反映方法

区分所有建物及びその敷地

マンション評価は取引事例が比較的豊富な類型ですが、敷地の権利関係や管理状況の反映に注意が必要です。

  • 専有面積と共用部分の取扱い
  • 管理組合の運営状況の評価への反映
  • 修繕積立金の水準の分析

農地・林地・宅地見込地

都市部では現物を見る機会が少なく、苦手とする修習生が多い類型です。

  • 農地法、森林法等の法規制の理解
  • 農地・林地特有の個別的要因の把握
  • 宅地見込地の熟成度の判定方法

いずれの類型においても、「なぜそう判断したのか」を報告書に明記することが重要です。口述考査では報告書の内容について深く質問されるため、自分の判断の根拠を常に意識しながら作成しましょう。


指導鑑定士との関係構築

実務修習の成否を握る最も重要な要因の一つが、指導鑑定士との関係構築です。指導鑑定士は修習生一人ひとりに割り当てられ、報告書の指導や実務上のアドバイスを行います。

指導鑑定士の役割

指導鑑定士は以下の役割を担っています。

  • 実地演習における鑑定評価報告書の作成指導
  • 現地調査への同行と調査方法の指導
  • 報告書のチェックと修正指示
  • 修了考査に向けたアドバイス
  • 実務上の疑問点への対応

良好な関係を築くためのポイント

積極的にコミュニケーションを取る

指導鑑定士は多忙な実務家であることがほとんどです。待ちの姿勢ではなく、自分から積極的に質問や相談をすることが大切です。ただし、調べればわかることを安易に質問するのではなく、自分なりに考えた上で「ここまで考えたが、この点が不明です」という形で質問するのが望ましいでしょう。

スケジュールを守る

報告書の提出期限や打ち合わせの日程は厳守しましょう。遅れが生じそうな場合は、早めに相談することが重要です。

フィードバックを素直に受け入れる

指導鑑定士からの修正指示は、時に厳しいものもあります。しかし、それは報告書の質を高めるためのものです。指摘を素直に受け入れ、改善に活かす姿勢が求められます。

報告書の質を段階的に上げる

最初から完璧な報告書を目指す必要はありません。まずは基本的な構成と内容を整え、指導鑑定士のフィードバックを受けながら段階的に質を上げていく方針が効率的です。

指導鑑定士のタイプ別対応法

指導鑑定士にもさまざまなタイプがいます。

タイプ特徴対応のコツ
厳格型細部まで厳しくチェックする提出前に自分でセルフチェックを徹底する
放任型あまり細かい指導をしない自分から積極的に質問し、指導を引き出す
丁寧型一つひとつ丁寧に教えてくれる指導内容をメモし、次に活かす
実務重視型理論より実務の感覚を重視する現地調査に積極的に同行し、実務感覚を吸収する
確認問題

実務修習において指導鑑定士は修習生自身が選ぶことができ、途中で変更することも自由にできる。


修了考査の準備スケジュール

修了考査に向けた効果的な準備スケジュールを、1年コースを例に解説します。

修習開始〜6ヶ月目: 基礎固めの時期

  • eラーニングの講義を計画的に受講する
  • 鑑定評価基準の復習(論文式試験の知識をリフレッシュ)
  • 最初の数類型の報告書作成に着手
  • 指導鑑定士との関係構築

この時期に最も重要なのは、論文式試験で学んだ鑑定評価基準の知識を実務に結びつけることです。eラーニングの内容と基準の条文を対照しながら学習すると効果的です。

7〜9ヶ月目: 報告書作成の山場

  • 複雑な類型(借地権・底地・貸家等)の報告書作成
  • 基本演習への参加
  • 作成済みの報告書の見直しと修正
  • 口述考査を意識した説明力の訓練

この時期は報告書の作成が集中する山場です。特に複雑な類型は時間がかかるため、早めに着手することが重要です。同期の修習生と情報交換する機会があれば、積極的に活用しましょう。

10〜12ヶ月目: 仕上げと直前対策

  • 全13類型の報告書の最終チェックと修正
  • 記述考査の模擬問題による演習
  • 口述考査の想定問答集の作成と練習
  • 指導鑑定士への最終確認

直前期は報告書の質を仕上げるとともに、記述考査と口述考査の対策を並行して進めます。特に口述考査は、自分の報告書を「説明する」練習を繰り返すことが合格への近道です。

記述考査の直前対策

記述考査では、以下の事項を重点的に復習しましょう。

  • 鑑定評価の基本的事項(対象確定条件、価格時点、価格の種類等)
  • 三手法(取引事例比較法、原価法、収益還元法)の適用手順
  • 試算価格の調整のプロセス
  • 鑑定評価報告書の記載要件

過去の修了考査の出題傾向を把握している指導鑑定士や先輩鑑定士から情報を得ることも有効です。

口述考査の直前対策

口述考査の対策として、以下の準備を行いましょう。

  • 自分が作成した13類型の報告書の内容を完全に把握する
  • 「なぜこの手法を適用したのか」「なぜこの事例を選んだのか」など、根拠を簡潔に説明できるようにする
  • 指導鑑定士に模擬口述考査をお願いする
  • 想定質問リストを作成し、回答を準備する

不合格後の再チャレンジ方法

万が一、修了考査に不合格となった場合の対応について解説します。

不合格の場合のプロセス

修了考査に不合格となった場合、原則として再度修習を受ける必要があります。ただし、不合格の内容によって対応は異なります。

  • 報告書の質が不十分だった場合: 指摘された箇所を修正し、再提出することが求められることがあります
  • 口述考査の評価が低かった場合: 報告書の内容を深く理解し直し、再度口述考査に臨みます
  • 記述考査の評価が低かった場合: 基礎知識の復習を行い、再度記述考査を受験します

再チャレンジのポイント

不合格の原因を正確に分析し、弱点を克服することが再チャレンジの鍵です。指導鑑定士や同期の合格者からフィードバックを得て、改善点を明確にしましょう。

不合格を過度に恐れる必要はありません。修了考査は「落とすための試験」ではなく「一定水準の実務能力を確認するための試験」です。真摯に修習に取り組み、報告書の質を高めれば、合格は十分に可能です。


まとめ

実務修習の修了考査は、鑑定士登録への最後のステップです。合格率は7〜8割と比較的高いものの、2〜3割の修習生が不合格になる現実を踏まえ、計画的な準備が欠かせません。

修了考査合格のための重要ポイントをまとめると、以下の通りです。

  • 13類型の報告書の質を高める: これが修了考査の最も重要な要素。特に複雑な類型は早めに着手する
  • 指導鑑定士との関係を大切にする: 積極的にコミュニケーションを取り、質の高いフィードバックを得る
  • 鑑定評価基準の知識をリフレッシュする: 論文式試験の知識を実務に結びつけて理解を深める
  • 口述考査の準備を怠らない: 報告書の内容を自分の言葉で説明できるようにする
  • 計画的なスケジュール管理: 報告書の作成が集中する時期を見据えて早めに準備を進める

実務修習の全体像鑑定士のキャリアパスもあわせてご参照ください。また、修了考査合格後の独立開業を見据えた準備も、修習中から始めておくと良いでしょう。

修了考査は決して恐れるべき試験ではありません。日々の修習に真剣に取り組み、一つひとつの報告書を丁寧に作成していけば、自然と合格に必要な力が身につきます。最後の関門を突破し、不動産鑑定士としての新たなキャリアをスタートさせましょう。

確認問題

修了考査は記述考査(筆記試験)のみで構成されており、口述考査(口頭試問)は実施されない。

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