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公認会計士とのダブルライセンスを目指す学習戦略

公認会計士と不動産鑑定士のダブルライセンスを目指す方に向けた学習戦略を解説。会計士試験との科目重複、免除制度の活用法、効率的な学習順序、合格後のキャリアパスまで詳しく紹介します。

はじめに - 最強のダブルライセンスと言われる理由

公認会計士と不動産鑑定士のダブルライセンスは、「士業の最強コンビ」と呼ばれることがあります。会計・監査の専門家である公認会計士と、不動産評価の専門家である不動産鑑定士、この2つの資格を兼ね備えた人材は極めて希少であり、市場価値が非常に高いのが特徴です。

この2つの資格には科目の重複が多く、片方に合格していればもう片方の学習負担が大幅に軽減されます。特に公認会計士試験の合格者は、鑑定士試験の論文式において経済学と会計学が免除されるという大きなメリットがあります。

本記事では、公認会計士の資格を持つ方(または目指している方)が不動産鑑定士とのダブルライセンスを目指す際の具体的な学習戦略を解説します。どちらを先に取得すべきか、科目免除の活用法、効率的な学習順序、そして取得後のキャリアパスまで網羅的に紹介します。


公認会計士と鑑定士の試験科目の重複

2つの試験の科目がどの程度重なっているかを確認します。

科目の対応関係

公認会計士試験の科目鑑定士試験の科目重複度
財務会計論会計学非常に高い
管理会計論会計学(一部)高い
経済学(選択)経済学非常に高い
企業法民法(一部)中程度
租税法行政法規(税法部分)やや低い
監査論-重複なし
-鑑定理論重複なし
-行政法規ほぼ重複なし

重複による学習負担の軽減効果

公認会計士試験に合格していれば、鑑定士試験の論文式5科目のうち、以下の科目で大きなアドバンテージがあります。

  • 会計学:ほぼ学習不要。会計士試験の知識で十分対応可能
  • 経済学:会計士試験で経済学を選択していれば大幅に軽減。選択していない場合でも、数理的思考力は活用できる
  • 民法:企業法で学んだ法律的思考力が活きる。ただし民法固有の学習は必要

実質的に新規に学ぶ必要があるのは「鑑定理論」と「行政法規」の2科目であり、これは大きなアドバンテージです。


科目免除制度の詳細

公認会計士の資格保有者が鑑定士試験で利用できる科目免除制度を整理します。

短答式試験の免除

公認会計士試験の合格者には短答式試験の免除はありません。短答式試験(鑑定理論+行政法規)は全員が受験する必要があります。

論文式試験の免除

公認会計士試験の合格者は、論文式試験において以下の科目が免除されます。

免除科目免除の根拠
会計学公認会計士試験合格による
経済学公認会計士試験合格による

つまり論文式試験で受験するのは「鑑定理論」「民法」の2科目のみとなります。5科目から2科目への大幅な負担軽減です。

免除を受けるための手続き

  • 論文式試験の出願時に免除申請を行う
  • 公認会計士試験の合格証書の写しを提出
  • 免除が認められた科目は「免除」として扱われ、得点には影響しない

免除のメリットとデメリット

メリットデメリット
論文式の負担が2科目に大幅軽減得意科目で得点を稼ぐチャンスがなくなる
鑑定理論と民法に集中できる鑑定理論の配点比率が相対的に高まる
学習期間を短縮できる民法で失点すると致命的になる

どちらを先に取得すべきか

ダブルライセンスを目指す場合、取得順序によって戦略が大きく変わります。

パターン1:会計士 → 鑑定士(推奨)

最も効率的なパターンです。会計士合格による科目免除を最大限に活用できます。

メリット

  • 経済学・会計学の免除が受けられる
  • 会計士の学習で培った論理的思考力・記述力が鑑定理論の論文に活きる
  • 会計士の実務経験が鑑定理論の理解を助ける場面もある

推奨スケジュール

時期学習内容
会計士合格後〜6ヶ月鑑定理論の基礎学習+行政法規の導入
7〜12ヶ月目短答式対策の集中学習
12〜14ヶ月目短答式受験 → 合格
14〜20ヶ月目鑑定理論(論文)+民法の論文対策
20〜22ヶ月目論文式受験 → 合格

会計士合格から約2年で鑑定士試験の合格が見込めます。

パターン2:鑑定士 → 会計士

鑑定士を先に取得する場合は、会計士試験での免除はありません(鑑定士資格による会計士試験の科目免除制度は存在しない)。ただし、鑑定士試験で学んだ経済学・会計学の知識は会計士試験の一部科目に活用できます。

メリット

  • 鑑定士試験で鍛えた経済学・会計学の知識が会計士試験にそのまま使える
  • 不動産の知識が監査業務で差別化になる

デメリット

  • 免除制度がないため、会計士試験の全科目を受験する必要がある
  • 会計士試験の方が科目数・難易度ともに上回るため、負担が大きい

パターン3:同時並行

同時並行は現実的ではありません。両方とも最難関クラスの国家資格であり、同時に学習を進めると両方とも不合格になるリスクが高いです。


会計士合格者向けの鑑定士試験攻略法

会計士に合格済みの方が鑑定士試験を目指す際の科目別攻略法を解説します。

鑑定理論 - 最重要かつ唯一の完全新規科目

鑑定理論は短答式・論文式の両方で出題される最重要科目です。会計士試験にはない科目であり、完全にゼロからのスタートとなります。

学習のポイント

  • 鑑定評価基準の全体構造を最初に理解する:総論(第1章〜第9章)と各論の関係を把握
  • 暗記が絶対に必要:論文式では基準の文言を正確に引用することが高得点の条件
  • 会計士の論述力を活かす:論理的な文章構成力は大きな武器

会計士試験の知識が活きるポイント

  • 減価償却の概念 → 原価法の減価修正の理解に役立つ
  • 収益認識の考え方 → 収益還元法の理解の助けになる
  • 企業価値評価の考え方 → DCF法の概念に通じる
  • 時価会計の知識 → 鑑定評価の「正常価格」の概念と関連

学習時間の目安:500〜700時間(短答+論文合わせて)

行政法規 - 短答式の勝負科目

行政法規は短答式のみで出題される科目です。会計士試験にはない科目ですが、法律の学習経験(企業法など)がある分、他の初学者よりは効率的に学べます。

効率的な学習法

  1. まず都市計画法・建築基準法の基礎から着手
  2. 国土利用計画法、不動産登記法、土地区画整理法を順次学習
  3. その他の法律(農地法、文化財保護法、SPC法など)を網羅
  4. 過去問で出題パターンを把握

学習時間の目安:200〜300時間

民法 - 会計士の企業法知識を活かす

会計士試験の企業法で培った法律的思考力は、民法の学習に大いに役立ちます。ただし、企業法(会社法中心)と民法は異なる法律であるため、民法固有の学習は必要です。

会計士の知識が活きる分野

  • 法律の論述スタイル(要件→効果の記述)
  • 契約法の基礎知識(契約の成立、有効性、履行)
  • 法人格、権利能力の基本概念

新たに学ぶ必要がある分野

  • 物権法(所有権、地上権、地役権、抵当権の詳細)
  • 不法行為法
  • 家族法・相続法
  • 民法特有の論点(危険負担、債権者代位権、詐害行為取消権など)

学習時間の目安:300〜400時間


会計士合格者向けの学習スケジュール

会計士合格後に鑑定士試験を目指す場合の詳細なスケジュールです。

1.5年計画(最短合格プラン)

会計士合格者は科目免除のメリットを活かして、一般受験者よりも短期間での合格が可能です。

期間学習内容1日の学習時間
1〜3ヶ月目鑑定理論の基礎(基準の通読、体系理解)3〜4時間
4〜6ヶ月目行政法規の集中学習3〜4時間
7〜9ヶ月目短答式過去問演習 + 鑑定理論の暗記4時間
10ヶ月目短答式受験 → 合格-
11〜14ヶ月目鑑定理論の論文対策 + 民法の集中学習4〜5時間
15〜17ヶ月目答案練習 + 模擬試験 + 最終調整5時間
18ヶ月目論文式受験 → 合格-

2年計画(確実合格プラン)

仕事と両立する場合は、より余裕のある2年計画がおすすめです。

年次目標重点科目
1年目短答式合格鑑定理論、行政法規
2年目論文式合格鑑定理論(論文)、民法

科目別の学習時間配分

免除科目がある分、残りの科目に集中できます。

科目一般受験者の配分会計士合格者の配分
鑑定理論35%55%
行政法規15%20%(短答のみ)
民法20%25%
経済学15%免除
会計学15%免除

監査法人で働きながらの学習

会計士の多くは監査法人に勤務しています。監査法人の繁忙期・閑散期を考慮した学習計画が重要です。

監査法人の繁忙期と学習の関係

時期監査法人の忙しさ学習への影響
1〜3月繁忙期(期末監査)学習時間が大幅に減少
4〜5月繁忙期のピーク最低限の維持学習のみ
6〜8月閑散期学習に集中できる期間
9〜11月やや忙しい標準的な学習時間を確保
12月普通〜やや忙しい標準的な学習時間を確保

閑散期を最大活用する戦略

監査法人の閑散期(6〜8月)は、まさに鑑定士試験の論文式直前期と重なります。この時期に有給休暇を取得して集中学習に充てることで、効率的な合格が可能です。

監査法人の資格取得支援制度

大手監査法人には資格取得支援制度を設けているところがあります。鑑定士試験が対象になるかは法人によって異なりますが、確認する価値はあります。

  • 受験料・予備校費用の補助
  • 試験休暇の取得
  • 合格祝い金

ダブルライセンスのキャリアパス

公認会計士と不動産鑑定士の両方の資格を持つ人材は非常に希少であり、幅広いキャリアの選択肢があります。

活躍できる分野

分野具体的な業務内容
M&Aアドバイザリー企業買収における不動産価値の評価
不動産ファンド運用投資対象不動産の評価と会計処理の両面を担う
CRE戦略コンサルティング企業の保有不動産の有効活用と財務影響分析
上場企業の不動産時価評価減損会計における不動産評価の専門家
相続・事業承継不動産評価と税務の両面からのアドバイス
裁判・紛争解決不動産に関する訴訟での専門家証人
独立開業会計事務所と鑑定事務所の兼営

年収の目安

キャリアパス年収の目安
大手監査法人(ダブルライセンス保有)800〜1,500万円
不動産ファンド(ダブルライセンス保有)1,000〜2,000万円
コンサルティングファーム900〜1,800万円
独立開業(会計+鑑定)1,000〜3,000万円以上

特に需要が高い業務

近年特に需要が高まっている業務として、以下が挙げられます。

  • IFRS対応の不動産評価:国際会計基準における不動産の公正価値測定
  • 減損テスト:固定資産の減損判定における不動産評価
  • ESG関連の不動産評価:サステナビリティを考慮した不動産価値の算定
  • デューデリジェンス:M&Aや不動産取引における資産評価

会計士受験中の方へ - 将来のダブルライセンスを見据えた学習法

現在会計士試験の受験中で、将来的にダブルライセンスを視野に入れている方へのアドバイスです。

会計士試験の選択科目で「経済学」を選ぶ

会計士試験の論文式では選択科目があります。ダブルライセンスを見据えるなら「経済学」を選択することをおすすめします。経済学の知識は鑑定士試験の経済学にもそのまま活きます(免除を受けない場合でも知識の蓄積として有用)。

企業法の学習で民法の基礎も意識する

会計士試験の企業法は会社法が中心ですが、法律の論述スタイルは民法にも共通します。法的三段論法(法規範の定立→あてはめ→結論)の練習を意識しましょう。

不動産関連の監査クライアントに注目する

監査業務で不動産会社やREITの監査に携わる機会があれば、積極的に関与しましょう。不動産の評価や会計処理を実務で経験することが、将来の鑑定士試験の学習に役立ちます。


まとめ

公認会計士と不動産鑑定士のダブルライセンスは、科目の重複と免除制度を活用することで、効率的に取得が可能です。特に「会計士 → 鑑定士」の順序で取得する場合、経済学と会計学の免除を受けて論文式の負担を2科目に軽減できるのは非常に大きなメリットです。

成功のポイントは以下の4点です。

  • 科目免除を最大限に活用する:経済学・会計学の免除で学習負担を大幅に軽減
  • 鑑定理論に最大の時間を投下する:唯一の完全新規科目に集中する
  • 会計士試験で培った能力を活かす:論理的思考力、記述力、法律の読み方
  • 監査法人の閑散期を活用する:6〜8月の論文式直前期に集中学習

ダブルライセンスの市場価値は非常に高く、キャリアの選択肢が飛躍的に広がります。勉強時間の科目配分短期合格の戦略も参考に、効率的な学習計画を立てて合格を目指しましょう。

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