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論文式試験で部分点を稼ぐテクニック - 白紙を出さない戦略

不動産鑑定士の論文式試験で部分点を最大限稼ぐテクニックを解説。完璧な答案が書けなくても合格点に届く戦略、白紙を絶対に出さない方法、科目別の部分点獲得術を具体的に紹介します。

はじめに ― 合格者は「部分点の達人」である

不動産鑑定士の論文式試験において、すべての問題で完璧な答案を書ける受験生はほとんどいません。合格者と不合格者の差は、完璧な答案を書けるかどうかではなく、「不完全な答案からいかに多くの部分点を拾えるか」にあります。

論文式試験の合格率は例年15%前後で推移しており、合格ラインは概ね6割前後です。つまり、4割は間違えてもよいのです。重要なのは、分からない問題に対しても白紙にせず、何らかの記述を残して部分点を積み上げることです。この「部分点を拾う力」が、合格ライン付近にいる多くの受験生の合否を分けています。

本記事では、論文式試験で部分点を最大限に稼ぐための具体的なテクニックを解説します。答案構成の基本については答案構成の基本を、時間配分の戦略については論文式試験の時間配分をあわせてご覧ください。


部分点の仕組みを理解する

部分点を効率的に稼ぐためには、まず論文式試験の採点がどのように行われているかを理解する必要があります。

採点の基本構造

論文式試験の採点は、一般的に以下のような構造で行われていると考えられています。

採点要素内容配点のイメージ
論点の指摘問題に関連する論点を挙げられているか全体の20〜30%
キーワード重要な専門用語・条文を使えているか全体の20〜30%
論理展開論理的な説明ができているか全体の20〜30%
結論適切な結論に至っているか全体の10〜20%
体裁答案の読みやすさ、構成全体の5〜10%

この構造から分かるのは、結論だけで配点の大部分を占めるわけではないということです。論点を指摘し、キーワードを使い、論理的に展開するだけでも、相当の得点が見込めます。

白紙が最悪の選択である理由

白紙は文字通り0点です。しかし、たとえ的外れな内容であっても何か書いてあれば、関連するキーワードが含まれている可能性がある限り、0点にはなりにくいのです。

  • 白紙 → 確実に0点
  • 結論だけ書く → 1〜3点の可能性
  • キーワードと結論を書く → 3〜5点の可能性
  • 不完全でも論理的に書く → 5〜8点の可能性

20点配点の問題で5点を拾えるか拾えないかは、合否を分ける大きな差になります。


全科目共通の部分点テクニック

科目を問わず使える、部分点を稼ぐための基本テクニックを紹介します。

テクニック1:結論を先に書く

答案の冒頭に結論を書くことで、最低限の得点を確保します。論証が不十分でも、結論が正しければ結論点は獲得できます。

具体例:
「本問においては、AはBに対して損害賠償を請求できると解する。以下、その理由を述べる。」

このように結論を先に書いておけば、仮に時間切れで論証が途中までしか書けなくても、結論点は確保できます。

テクニック2:キーワードを散りばめる

採点者は答案の中から特定のキーワードを探しています。論述が不十分でも、適切なキーワードが含まれていれば加点される可能性があります。

鑑定理論の場合:

  • 「最有効使用」「正常価格」「価格形成要因」「市場の特性」
  • 「取引事例比較法」「収益還元法」「原価法」
  • 「地域分析」「個別分析」「対象確定条件」

民法の場合:

  • 「善意無過失」「対抗要件」「信義則」「権利濫用」
  • 「債務不履行」「不法行為」「瑕疵担保責任」

テクニック3:問題文の言葉を活用する

問題文自体が答案作成のヒントを提供しています。問題文で使われている表現や概念を答案に取り込むことで、出題者の意図に沿った答案になります。

テクニック4:ナンバリングで構造を示す

「1. 」「2. 」「(1)」「(2)」といったナンバリングを使うことで、採点者は「この受験生は複数の論点を認識している」と判断できます。内容が薄くても、構造が見える答案は部分点を得やすくなります。

テクニック5:「考えられる」「推測される」で逃げ道を作る

確信が持てない内容を書く場合、断定口調ではなく「〜と考えられる」「〜と推測される」という表現を使うことで、誤答のリスクを軽減できます。ただし、明らかに正しい内容まで曖昧な表現にすると自信がないように見えるので、使い分けが重要です。


鑑定理論(論文)の部分点テクニック

鑑定理論の論文では、基準条文の正確な引用が配点の大きな割合を占めます。条文を完璧に書けない場合でも、以下のテクニックで部分点を稼ぐことができます。

条文の趣旨を自分の言葉で書く

条文の正確な文言が思い出せない場合は、その条文が言わんとしていることを自分の言葉で書きます。正確な引用には及びませんが、趣旨が合っていれば相応の部分点が期待できます。

正確な引用:
「不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することである。」

趣旨を自分の言葉で書く場合:
「鑑定評価とは、対象不動産がもつ経済的な価値を専門的な見地から判定し、金額として表すことである。」

関連する条文を幅広く触れる

1つの条文を完璧に書くより、関連する複数の条文に触れる方が総合的な得点は高くなる場合があります。特に、体系的な理解を示すことで加点される傾向があります。

具体例を添える

抽象的な説明だけでなく、具体例を添えることで理解度をアピールできます。例えば、「最有効使用」について論じる場合、「例えば、商業地域に所在する低利用の駐車場であれば、当該地域の標準的使用に照らしてビルの建築が最有効使用となり得る」といった具体例を加えます。


鑑定理論(演習)の部分点テクニック

演習の計算問題では、最終的な答えだけでなく、計算過程にも配点があります。この特性を活かした部分点テクニックを紹介します。

計算の方針を最初に宣言する

計算に入る前に「DCF法を適用して収益価格を求める」「取引事例比較法により比準価格を求める」など、使用する手法を明記します。方針の記述だけでも加点の対象になります。

算式を書いてから数値を代入する

算式(公式)と数値の代入を分けて書くことで、仮に計算結果が間違っていても、正しい算式を使っていることが伝われば部分点がもらえます。

悪い例:
「収益価格 = 5,432,000円」(結果のみ)

良い例:
「収益価格 = 純収益 / 還元利回り = 4,800,000円 / 5.0% = 96,000,000円」

途中計算を省略しない

途中の計算過程を丁寧に書くことで、どこまで正しく計算できているかが採点者に伝わります。最終答が間違っていても、途中まで正しければ相応の部分点がもらえます。

計算が行き詰まったら仮の数値で先に進む

ある計算の途中結果が出せない場合、仮の数値を置いて先の計算を進める方法があります。「ここでは仮に○○円とする」と断った上で先に進めば、後続の計算過程で正しい手順を示していることが評価されます。


民法の部分点テクニック

民法では、法的三段論法に基づいた論述が求められます。完璧な三段論法を展開できない場合でも、以下の方法で部分点を拾えます。

条文を指摘するだけでも価値がある

「本問は民法第415条の債務不履行に基づく損害賠償請求の問題である」と条文を指摘するだけでも、論点の把握ができていることが伝わります。

要件を箇条書きにする

条文の要件を箇条書きにして列挙するだけでも、知識があることの証明になります。あてはめが不十分でも、要件の列挙に対して部分点がつきます。

例:
「債務不履行に基づく損害賠償請求の要件は以下のとおりである。
(1) 債務の存在
(2) 債務の不履行
(3) 債務者の帰責事由
(4) 損害の発生
(5) 因果関係」

両論を書いて結論を示す

結論に迷う場合は、「AとするA説とBとするB説がある」と両説を紹介した上で、自分の結論を示す方法があります。どちらの結論でも、論点を認識していること自体が評価されます。

民法の答案作成法については民法の論文答案の書き方で詳しく解説しています。


経済学の部分点テクニック

経済学では、グラフ・数式・文章の三位一体が理想ですが、すべてが揃わなくても部分点は稼げます。

グラフだけでも描く

文章での説明が十分にできなくても、正確なグラフを描けば相当の部分点が期待できます。グラフには以下の要素を必ず含めます。

  • 縦軸と横軸のラベル
  • 曲線の名前(需要曲線D、供給曲線Sなど)
  • 均衡点のマーク
  • シフトの方向を示す矢印

前提条件を明記する

「完全競争市場を仮定する」「消費者は効用最大化行動をとるものとする」など、分析の前提条件を明記するだけでも加点の対象になります。

経済学の用語を正確に使う

「限界費用」「弾力性」「パレート最適」「外部性」など、経済学の専門用語を正確に使用することで、基礎知識があることをアピールできます。

グラフの描き方については経済学のグラフの描き方をご覧ください。


会計学の部分点テクニック

会計学は仕訳・計算問題と理論問題で部分点の稼ぎ方が異なります。

仕訳問題:勘定科目だけでも書く

金額の計算が分からなくても、正しい勘定科目を書けば部分点がもらえる可能性があります。「減価償却費 ○○ / 減価償却累計額 ○○」と科目名だけ書いて金額欄を空欄にするよりも、推定でも金額を入れた方が得点の可能性は高まります。

計算問題:途中の集計結果を示す

最終的なP/LやB/Sの数値が合わなくても、途中の集計過程(例えば売上原価の内訳、営業利益の計算など)が正しければ部分点がつきます。

理論問題:会計基準の名称と趣旨を書く

理論問題で詳しい説明ができなくても、「企業会計基準第○号に従い」「取得原価主義の趣旨は〜である」など、基準名と趣旨を書くだけで部分点が期待できます。

仕訳問題の攻略法については会計学の仕訳問題で満点を取る方法をご覧ください。


「捨て問」と「拾い問」の見極め方

すべての問題に全力を注ぐのは非現実的です。限られた時間内で得点を最大化するためには、「捨て問」と「拾い問」を見極める戦略眼が必要です。

捨て問の判断基準

以下のような場合は、最低限の記述(結論とキーワード)だけ残して他の問題に時間を回すことを検討します。

  • 問題の意味自体が理解できない
  • 論点が全く思い浮かばない
  • 必要な知識がまったくない
  • 配点が小さく、時間をかけても得点効率が悪い

拾い問の判断基準

以下のような場合は、時間をかけてでもしっかり得点を稼ぐべきです。

  • 基本的な論点で、多くの受験生が書ける問題(落とすと差がつく)
  • 配点が大きい問題
  • 自分の得意分野に関連する問題
  • 条文や定義を書くだけで一定の得点が見込める問題

配点と時間のバランス

状況戦略想定得点
完全に解ける時間をかけて丁寧に書く8〜10割
半分程度解ける書ける部分を確実に書く4〜6割
少しだけ関連知識があるキーワードと結論を書く1〜3割
全く分からない結論だけでも書く0〜1割

部分点を意識した日頃の学習法

部分点を稼ぐ力は、日頃の学習で意識的に鍛える必要があります。

過去問を「部分点視点」で分析する

模範答案を読む際に、「この答案のどの部分に何点ずつ配点されているか」を推測する練習をします。配点の構造を理解することで、本番での取捨選択が的確になります。

不完全な答案を書く練習をする

あえて知識が不十分なテーマで答案を書き、「知識がなくてもこれだけは書ける」という最低ラインを把握する練習です。本番で同様の状況に陥った際に、パニックにならず対処できるようになります。

キーワードリストを科目別に作成する

各科目で使用頻度の高いキーワードをリスト化し、どんな問題が出てもこれだけは書けるという「引き出し」を増やします。暗記術については暗記術をご覧ください。

タイムプレッシャー下で書く練習

本番より短い時間制限(例えば90分で120分の問題を解く)を設けて練習することで、時間が足りない状況での対応力が鍛えられます。


本番当日の心構え

分からない問題が出ても動揺しない

論文式試験では、全受験生にとって難しい問題が出ることがあります。分からない問題に遭遇しても「他の受験生も同じ状況だ」と考え、冷静に部分点を拾いに行きましょう。

最後まで書き続ける

試験終了の合図があるまで、1文字でも多く書くことを意識します。残り1分でも、キーワードや結論を1つ追加できれば、それが部分点につながる可能性があります。

完璧主義を捨てる

合格に必要なのは満点ではなく合格点です。6割を取れれば合格できるという意識を持ち、完璧な答案を目指すのではなく、確実に得点を積み上げる姿勢で臨みましょう。


まとめ

論文式試験で合格点を取るために最も重要なのは、「白紙を出さない」ことです。どんな問題でも、結論を書く、キーワードを散りばめる、関連する条文を指摘するなどの方法で、部分点を1点でも多く拾うことができます。

部分点を稼ぐ力は、完璧な知識よりも実戦的な試験テクニックに基づいています。日頃から部分点を意識した学習を積み重ね、本番ではどんな問題にも「何かを書く」という姿勢で臨みましょう。合格者の多くは、難問に対しても白紙にせず、できる限りの記述を残した受験生です。

論文式試験の全体的な戦略については論文式試験の概要を、基準の暗記方法については暗記術をご覧ください。

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