はじめに ― 会計学は基本問題の確実な得点が鍵
不動産鑑定士試験の会計学は、簿記・財務諸表論・管理会計の3分野から出題されます。公認会計士試験ほどの難易度ではありませんが、基本的な論点を正確に理解していなければ得点できません。特に計算問題では、仕訳の基本ルールや原価計算の手順を正確に実行する力が求められます。
本記事では、会計学の頻出テーマから厳選した10問の演習問題を、詳細な解説付きで紹介します。会計学の重要論点については会計学の重要論点を、学習法については会計学の勉強法をあわせてご覧ください。
演習問題 第1問:減価償却(定額法)
確認問題
取得原価1,000万円、耐用年数10年、残存価額ゼロの有形固定資産を定額法で減価償却する場合、毎年の減価償却費は100万円である。
解説
定額法の計算式は「(取得原価 - 残存価額) ÷ 耐用年数」です。本問では (1,000万円 - 0) ÷ 10年 = 100万円となります。定額法は毎期同額の減価償却費を計上する最も基本的な方法です。残存価額がゼロの場合は単純に取得原価を耐用年数で割れば求められます。
減価償却は会計学の最重要テーマです。定額法・定率法・生産高比例法の3つの方法を確実に使い分けられるようにしましょう。
演習問題 第2問:減価償却(定率法)
確認問題
定率法では、毎期の減価償却費は一定であり、定額法と同じ金額になる。
解説
定率法は「期首帳簿価額 × 一定率」で減価償却費を計算するため、毎期の減価償却費は一定ではありません。取得初期に多額の減価償却費を計上し、年数が経つにつれて減少していきます(逓減型)。定額法が毎期同額であるのに対し、定率法は早期に多額を費用化する点が異なります。設備の技術的陳腐化が早い資産に適しています。
演習問題 第3問:減損会計
確認問題
減損会計において、減損の認識の判定は割引前将来キャッシュフローの総額と帳簿価額を比較して行う。
解説
減損会計の手順は(1)減損の兆候の把握、(2)減損の認識、(3)減損の測定の3段階です。減損の認識の判定では、割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回る場合に減損損失を認識します。割引前のキャッシュフローを使用するのは、割引率の見積もりの困難さを回避するためです。認識した後の測定段階では、帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)まで減額します。
演習問題 第4問:有価証券の分類
確認問題
売買目的有価証券は時価で評価し、評価差額は当期の損益として処理する。
解説
有価証券は保有目的に応じて4種類に分類され、それぞれ評価方法が異なります。売買目的有価証券は期末に時価で評価し、評価差額(評価益・評価損)は当期の損益として損益計算書に計上します。これは、短期的な売買利益の獲得を目的として保有する有価証券であるため、時価の変動を即座に損益に反映させるのが適切であるとの考えに基づいています。
演習問題 第5問:その他有価証券の評価
確認問題
その他有価証券は時価で評価し、評価差額はすべて当期の損益として処理する。
解説
その他有価証券は時価で評価しますが、評価差額は当期の損益ではなく、原則として純資産の部に直接計上します。これを「全部純資産直入法」といいます(部分純資産直入法も認められています)。その他有価証券は長期保有目的であり、期末時点の時価変動を即座に損益に反映させることは適切でないとの考えに基づいています。売買目的有価証券との処理の違いを正確に区別することが重要です。
演習問題 第6問:リース会計
確認問題
ファイナンスリース取引のうち所有権移転外のものは、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして減価償却を行う。
解説
所有権移転外ファイナンスリースでは、リース期間終了後に物件が貸手に返還されるため、リース期間を耐用年数、残存価額をゼロとして減価償却を行います。一方、所有権移転ファイナンスリースでは、リース期間終了後も借手が使用し続けるため、自己所有の固定資産と同様の耐用年数・残存価額で減価償却を行います。
演習問題 第7問:税効果会計
確認問題
将来減算一時差異に対しては繰延税金負債を計上する。
解説
将来減算一時差異に対して計上するのは繰延税金資産であり、繰延税金負債ではありません。将来減算一時差異とは、将来の課税所得を減少させる差異であり、将来の税金が減少するという経済的利益を有するため、資産として計上します。一方、将来加算一時差異(将来の課税所得を増加させる差異)に対しては繰延税金負債を計上します。この対応関係を正確に覚えることが重要です。
演習問題 第8問:標準原価計算
確認問題
標準原価計算における直接材料費差異は、価格差異と数量差異に分解される。
解説
直接材料費差異は、価格差異(標準価格と実際価格の差に基づく差異)と数量差異(標準消費量と実際消費量の差に基づく差異)に分解されます。価格差異 = (標準価格 - 実際価格) × 実際消費量、数量差異 = (標準消費量 - 実際消費量) × 標準価格で計算します。同様に、直接労務費差異は賃率差異と作業時間差異に分解されます。
演習問題 第9問:CVP分析
確認問題
固定費が500万円、変動費率が60%の場合、損益分岐点売上高は1,250万円である。
解説
損益分岐点売上高は「固定費 ÷ (1 - 変動費率)」で計算します。本問では 500万円 ÷ (1 - 0.6) = 500万円 ÷ 0.4 = 1,250万円です。(1 - 変動費率)は限界利益率(貢献利益率)に等しく、売上高のうち固定費の回収に充てられる割合を示します。損益分岐点とは、売上高と総費用が等しくなる(利益がゼロになる)点のことです。
演習問題 第10問:NPV法(正味現在価値法)
確認問題
正味現在価値(NPV)がプラスの投資案は、投資を実行すべきと判断される。
解説
正味現在価値法(NPV法)は、投資から得られる将来キャッシュフローの現在価値の合計から初期投資額を差し引いた値(NPV)に基づいて投資判断を行う方法です。NPVがプラスであれば、その投資は必要収益率以上のリターンをもたらすため、投資を実行すべきと判断されます。NPVがゼロの場合は必要収益率ちょうどのリターン、NPVがマイナスの場合は投資を見送るべきと判断されます。NPV法は不動産の投資判断にも活用される方法です。
演習問題の活用法
仕訳の練習
本記事の問題で取り上げた論点に関連する仕訳を実際に書いてみましょう。
| 取引 | 練習すべき仕訳 |
|---|
| 固定資産の取得 | (借)建物 ×× / (貸)現金預金 ×× |
| 減価償却 | (借)減価償却費 ×× / (貸)減価償却累計額 ×× |
| 減損損失の計上 | (借)減損損失 ×× / (貸)建物 ×× |
| 有価証券の評価替え | (借)有価証券評価損益 ×× / (貸)売買目的有価証券 ×× |
| 税効果会計 | (借)繰延税金資産 ×× / (貸)法人税等調整額 ×× |
計算問題のパターン練習
会計学の計算問題は、パターンを繰り返し練習することで確実に得点できるようになります。特に以下のパターンは必ず解けるようにしておきましょう。
- 減価償却費の計算(定額法・定率法)
- 減損損失の認識判定と測定
- 標準原価計算の差異分析(3分法)
- CVP分析(損益分岐点・目標利益達成売上高・安全余裕率)
- 有価証券の評価替えの仕訳
まとめ
会計学の演習問題を通じて、減価償却、減損会計、有価証券、リース会計、税効果会計、標準原価計算、CVP分析、NPV法という主要テーマの理解度を確認しました。これらは不動産鑑定士試験の会計学で繰り返し出題される基本論点です。
間違えた問題は会計基準や教科書に戻って復習し、特に計算問題は繰り返し手を動かして練習しましょう。会計学の重要論点は会計学の重要論点を、学習法は会計学の勉強法を、試験の全体戦略は合格戦略の総合解説をあわせてご覧ください。