鑑定理論(演習)の攻略法 - 計算問題で満点を狙う方法
不動産鑑定士論文式試験の鑑定理論(演習)を攻略する方法を解説。更地評価・DCF法・賃料計算等の出題パターン分析、計算ミスを防ぐ具体的テクニック、電卓の効率的な使い方まで、100点配点の演習で高得点を狙うための戦略を網羅しています。
鑑定理論(演習)とは何か
鑑定理論(演習)は、論文式試験の5科目のうちの1つで、配点100点です。鑑定理論(論文)の200点と合わせると300点で、全600点の半分を占めます。演習は「実務的な計算問題」が出題される科目であり、具体的な不動産の評価額を三方式で算定するプロセスを記述することが求められます。
鑑定理論(論文)が基準の暗記と論述力を問うのに対し、演習は計算力と手順の正確性を問う科目です。計算問題であるため、正解にたどり着けば確実に得点できる反面、計算ミス1つで大幅に失点するリスクもあります。とはいえ、演習は論文系科目の中でも「努力が点数に直結しやすい」科目とされ、計算手順を体系的に身につければ安定して高得点を狙えます。逆に苦手意識を放置すると、本番で時間内に解き切れず白紙に近い答案になってしまうため、早期からの反復練習が合否を分けます。
この記事では、演習の出題パターン、計算ミスを防ぐテクニック、そして電卓の効率的な使い方まで、演習で高得点を取るために必要な情報を体系的にまとめます。「不動産鑑定士の計算問題はどう勉強すればいいのか」「鑑定理論の演習で満点に近づくにはどうすればよいのか」という疑問に、出題テーマ別の手順・数式・暗記のコツ・FAQまで踏み込んで答えます。鑑定理論(論文)の対策については鑑定理論(論文)の勉強法をご覧ください。
演習という科目の位置づけと採点の考え方
「演習」は基準のどこに根拠があるか
演習で扱う三方式の適用は、すべて不動産鑑定評価基準に根拠があります。基準は鑑定評価の手法について次のように定めています。
鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用すべきである。この場合、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等の理由により複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第7節
演習の答案で「なぜこの方式を採用し、なぜこの方式を参考にとどめるのか」を一言添えられると、計算だけの答案より評価が安定します。計算は手段であり、基準の枠組みに沿って評価額を導く論理が背骨になっていることを忘れないようにしましょう。
採点で点が積み上がる仕組み
演習は「最終的な鑑定評価額が一致したか」だけで採点されるわけではありません。一般に、各方式の適用過程・試算価格・調整・決定の各段階に配点が分散していると考えられます。したがって、最終値を間違えても途中過程が正しければ部分点が積み上がる構造です。
| 答案の構成要素 | 得点の考え方(目安) |
|---|---|
| 前提条件の整理・採用方式の判断 | 評価の方針が基準に沿っているか |
| 各方式の計算過程(計算式の明示) | 過程が正しければ最終値が違っても部分点 |
| 試算価格の算定結果 | 計算結果そのものの正確性 |
| 試算価格の調整 | 各価格の信頼性の検討と重み付けの論理 |
| 鑑定評価額の決定 | 結論と根拠の整合 |
この構造を理解すると、「最後まで解けないかもしれないから途中で諦める」のではなく、「解けるところまで計算式を書き切る」ことの重要性が見えてきます。
出題パターンの分析
演習の出題形式
演習は1〜2問の大問で構成され、各問において具体的な条件(土地の面積・形状・用途地域・取引事例・収支データ等)が与えられ、三方式を適用して鑑定評価額を算出するプロセスを記述します。
答案には以下を記載する必要があります。
- 各方式の適用過程(計算式と計算結果)
- 試算価格の算定結果
- 試算価格の調整と鑑定評価額の決定
主要な出題パターン
パターン1: 更地の評価
最も基本的な出題パターンです。更地(建物がない土地)について、取引事例比較法による比準価格と収益還元法による収益価格(場合によっては原価法による積算価格)を算定し、鑑定評価額を決定します。
- 取引事例比較法: 事例の選定→事情補正→時点修正→地域要因比較→個別的要因比較→比準価格
- 収益還元法: 土地残余法またはDCF法による収益価格
- 試算価格の調整と鑑定評価額の決定
パターン2: 建物及びその敷地の評価
建物付きの不動産(自用のビル、賃貸マンション等)を評価するパターンです。
- 原価法: 土地の再調達原価+建物の再調達原価−減価修正=積算価格
- 取引事例比較法: 類似不動産の取引事例から比準価格を算定
- 収益還元法: 直接還元法またはDCF法による収益価格
パターン3: DCF法による収益価格の算定
DCF(Discounted Cash Flow)法は近年の頻出テーマです。複数期間のキャッシュフローを現在価値に割り引いて収益価格を算定します。
- 各期の純収益(NOI)の算定
- 割引率の設定
- 復帰価格(ターミナルバリュー)の算定
- 各期の現在価値の合計=DCF法による収益価格
パターン4: 賃料の算定
新規賃料または継続賃料の算定を求められるパターンです。
- 新規賃料: 積算法(基礎価格×期待利回り+必要諸経費)、賃貸事例比較法
- 継続賃料: 差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法
パターン5: 区分所有建物の評価
マンションの一室など、区分所有建物の評価を求められるパターンです。敷地利用権と専有部分を一体として捉え、配分法的な考え方や、対象住戸の階層・位置による個別性の補正が論点になります。
出題テーマの相互関係
これら5パターンは独立ではなく、土台となる計算を共有しています。下表のように、どのパターンでも「事例比較の補正計算」「純収益(NOI)の算定」「現在価値への割引」のいずれかが必ず登場します。基礎計算を完璧にしておけば、どのテーマが出ても対応できます。
| 出題パターン | 主に問われる計算 | 共通して使う基礎計算 |
|---|---|---|
| 更地の評価 | 比準価格・土地残余法・開発法 | 補正計算、NOI、割引 |
| 建物及びその敷地 | 原価法(減価修正)・直接還元法 | NOI、減価率 |
| DCF法 | 多期間の現在価値・復帰価格 | NOI、割引 |
| 賃料の算定 | 積算法・差額配分法等 | 期待利回り、必要諸経費 |
| 区分所有建物 | 配分法・個別性補正 | 補正計算、NOI |
過去の出題傾向
| 年度 | 出題テーマ |
|---|---|
| 2020年 | 貸家及びその敷地の評価(DCF法含む) |
| 2021年 | 更地の評価(取引事例比較法・開発法) |
| 2022年 | 自用の建物及びその敷地の評価 |
| 2023年 | 賃貸用不動産の評価(DCF法中心) |
| 2024年 | 継続賃料の算定 |
DCF法は近年ほぼ毎年出題されており、最重要の計算テーマと言えます。なお上記の年度別テーマは傾向を概観するための目安であり、年により複数テーマが組み合わされることもあります。直近で出ていないテーマ(開発法・区分所有・継続賃料)が翌年の山になりやすいという見方もあるため、出題されたテーマだけに絞らず、全パターンを一通り回せる状態にしておくのが安全です。
鑑定理論(演習)では、必ず原価法・取引事例比較法・収益還元法の三方式すべてを適用しなければならない。
各計算手法の具体的な手順
取引事例比較法の計算手順
取引事例比較法は取引事例比較法の理論を実際の数値で適用するものです。基準は比準価格を求める手順を次のように定めています。
取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行つて求められた価格を比較考量し、これによつて対象不動産の試算価格を求めるものとする。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
手順:
- 取引事例の選定: 問題で与えられた複数の取引事例から適切なものを選ぶ
- 事情補正: 特殊な取引事情がある場合に補正する(例: 売り急ぎ→100/95等)
- 時点修正: 取引時点から価格時点までの地価変動率で補正する(例: 地価指数105/100等)
- 地域要因比較: 事例の所在する地域と対象不動産の近隣地域の違いを補正する
- 個別的要因比較: 事例不動産と対象不動産の個別的な違いを補正する
計算式:
計算例:
事例の取引価格が ㎡当たり 300,000円、売り急ぎがあり事情補正 100/95、時点修正(地価上昇)105/100、対象地は事例地より地域要因で5%劣る(地域要因 95/100)、個別的要因では対象地のほうが3%優れる(102/100 を逆数で扱うのではなく対象=100、事例=97 として 100/97)と与えられたとします。
このように補正率は分数のまま並べ、最後にまとめて1回で計算すると、途中の丸め誤差を減らせます。
計算のポイント:
- 補正率は分数形式(例: 100/105)で表記し、最後にまとめて計算する
- 複数の事例から比準価格を算定した場合は、その調整(平均・加重平均等)も記述する
- 要因比較は「対象を100とし、事例を基準化する」のか「事例を100とする」のか、答案内で表記を統一する
原価法の計算手順
原価法は再調達原価から減価修正を行って積算価格を求めます。基準は原価法を次のように定義しています。
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行つて対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を積算価格という。)。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
建物の積算価格の計算式:
減価率の算定方法(定額法の場合):
計算例: 建物の再調達原価が 120,000,000円、経済的残存耐用年数を考慮した耐用年数50年・経過年数10年であれば、減価率 = 10/50 = 0.2、積算価格 = 120,000,000 × (1 − 0.2) = 96,000,000円となります。観察減価法を併用する指示がある場合は、物理的・機能的・経済的減価を加味して調整します。
建物及びその敷地の場合:
なお減価修正は耐用年数に基づく方法と観察減価法を併用するのが基準の考え方であり、答案でどちらを採ったか明示すると説得力が増します。
収益還元法(直接還元法)の計算手順
直接還元法は収益還元法の基本的な手法です。基準は収益還元法を次のように位置づけています。
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を収益価格という。)。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
計算式:
純収益(NOI)の算定:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総収益(GPI) | 満室想定の賃料収入 |
| 空室損失 | 空室率を考慮した減額 |
| 有効総収益(EGI) | GPI - 空室損失 |
| 総費用 | 維持管理費・修繕費・公租公課・損害保険料等 |
| 純収益(NOI) | EGI - 総費用 |
計算例: 満室賃料(GPI)が年 60,000,000円、空室率5%(空室損失 3,000,000円)、有効総収益 57,000,000円、総費用 17,000,000円であれば、NOI = 57,000,000 − 17,000,000 = 40,000,000円。還元利回りが5%なら、収益価格 = 40,000,000 ÷ 0.05 = 800,000,000円です。
総費用の項目(維持管理費、修繕費、公租公課、損害保険料、貸倒れ準備費、空室等による損失相当額など)は問題ごとに与えられ方が異なるため、与えられた条件を漏れなく拾うことが得点を分けます。
収益還元法(DCF法)の計算手順
DCF法は複数期間のキャッシュフローを現在価値に割り引く手法です。基準は収益還元法の適用方法として直接還元法とDCF法を挙げています。
収益還元法の適用に当たつては、直接還元法又はDCF法のいずれかの方法を適用するものとする。なお、収益価格を求める際には、その手法の適用過程について十分に吟味すべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
計算式:
計算のステップ:
- 各期の純収益(NOI)を算定する
- 各期のNOIを割引率で現在価値に割り引く
- 保有期間終了時の復帰価格(売却想定価格)を算定する
- 復帰価格を現在価値に割り引く
- 2と4を合計する
復帰価格の算定:
割引率と還元利回りの違い: 受験生が混同しやすいのが、直接還元法の「還元利回り」とDCF法の「割引率」、そして復帰価格算定の「最終還元利回り(ターミナルキャップレート)」です。概念上、還元利回りには将来の純収益や価格の変動予測が織り込まれるのに対し、DCF法の割引率は各期のキャッシュフローを現在価値に割り引くための率であり変動予測は基本的に各期のCFと復帰価格側で表現します。一般に三者は同一ではなく、答案では「どの率を、なぜその水準に設定したか」を区別して書くことが重要です。
ミニ計算例(3期保有): 各期NOIが 40,000,000円で一定、割引率5%、4期目NOIを最終還元利回り5%で還元した復帰価格 = 40,000,000 ÷ 0.05 = 800,000,000円とすると、
NOI一定・割引率=最終還元利回りの単純ケースでは直接還元法と一致するため、概算チェックとして使えます。
DCF法において、復帰価格(ターミナルバリュー)とは、保有期間終了時に不動産を売却する場合の想定売却価格のことである。
賃料の算定パターンを深掘りする
賃料の算定は計算の組み立てが価格評価とは異なるため、苦手にする受験生が多い論点です。新規賃料と継続賃料を整理しておきましょう。
新規賃料の手法
| 手法 | 計算の骨格 |
|---|---|
| 積算法 | 基礎価格 × 期待利回り + 必要諸経費等 |
| 賃貸事例比較法 | 賃貸事例の賃料に事情補正・時点修正・要因比較 |
積算法による積算賃料の式は次のとおりです。
継続賃料の手法
継続賃料は、現行賃料を出発点として、契約締結後の事情変更を反映させる点が新規賃料と決定的に違います。代表的な4手法を押さえます。
| 手法 | 考え方 |
|---|---|
| 差額配分法 | 正常賃料と現行賃料の差額のうち、賃貸人に帰属する部分を現行賃料に加減 |
| 利回り法 | 基礎価格 × 継続賃料利回り + 必要諸経費等 |
| スライド法 | 直近合意時点の純賃料に変動率(スライド指数)を乗じ、必要諸経費等を加算 |
| 賃貸事例比較法 | 継続賃料固有の事情を考慮した賃貸事例との比較 |
差額配分法のイメージは次の式です。配分割合は問題で与えられることが多いので、与えられた割合を正確に当てはめます。
継続賃料の問題では「直近合意時点」「価格時点」「現行賃料」の3つの時点・金額を取り違えないことが最大のポイントです。表に整理してから計算に入る習慣をつけましょう。
計算ミスを防ぐテクニック
計算ミスの類型と対策
演習で最も怖いのは計算ミスです。1つの計算ミスが後続の計算すべてに波及し、大幅な失点につながることがあります。
ミスの類型1: 桁の間違い
数値の桁を間違えるミス。例えば1,000,000円を100,000円と書いてしまうケースです。
対策: 数値を書く際は桁区切りのカンマを必ず入れ、桁数を目視で確認する。
ミスの類型2: 分子と分母の取り違え
補正率の分子と分母を逆にするミス。例えば100/105とすべきところを105/100にしてしまうケースです。
対策: 補正の方向(増額か減額か)を先に判断してから数値を記入する。「事例より対象のほうが条件が良い→増額補正→分子が大きくなる」というロジックを確認する。
ミスの類型3: 累乗計算の間違い
DCF法で(1+割引率)^n の計算を間違えるミス。
対策: 電卓の累乗機能を使い、計算結果を2回確認する。
ミスの類型4: 項目の漏れ
総費用の計算で特定の費用項目を入れ忘れるミス。
対策: 問題文で与えられた条件にチェックマークをつけ、すべて使い切ったか確認する。
ミスの類型5: 単位の間違い
㎡単価と総額を混同するミス。
対策: 計算結果には必ず単位を付記する。
ミスの類型6: 端数処理の不統一
途中の各計算で四捨五入・切り捨てがバラバラになり、最終値がずれるミス。
対策: 端数処理は「途中は丸めず、最終結果のみ指定桁で処理」を基本とし、問題に指示があればそれに従う。処理方法を答案冒頭で宣言しておく。
これらを表で整理すると、本番直前のセルフチェックリストとして使えます。
| ミスの類型 | 主な発生箇所 | 即効性のある対策 |
|---|---|---|
| 桁の間違い | NOI・総額の算定 | カンマ区切りで桁を目視確認 |
| 分子分母の取り違え | 要因比較・時点修正 | 補正の方向を先に判断 |
| 累乗計算 | DCFの割引 | 累乗を2回計算して照合 |
| 項目の漏れ | 総費用・必要諸経費 | 条件にチェックを入れ消し込む |
| 単位の混同 | ㎡単価と総額 | すべての数値に単位を付記 |
| 端数処理 | 多段階計算 | 途中丸めず最終のみ処理 |
検算のテクニック
逆算検算: 最終結果から逆算して、途中の計算結果が正しいか確認する。例えば収益価格が算出できたら、収益価格×還元利回りが純収益と一致するか確認する。
概算チェック: 計算結果がおおよそ妥当な範囲にあるか、直感的に確認する。例えば住宅地の更地で㎡単価が数百万円になっていたら計算ミスの可能性が高い。
部分検算: 時間が限られている場合は、全体を通しで検算するのではなく、特にミスしやすい箇所(補正率の計算、DCFの現在価値計算)だけを重点的に検算する。
試算価格の相互チェック: 比準価格・積算価格・収益価格が大きく乖離していたら、いずれかに計算ミスがある可能性を疑う。乖離が説明できる(市場の特性等)のか、単なるミスなのかを見極めることが調整の説得力にもつながります。
電卓の効率的な使い方
試験で使用可能な電卓
論文式試験では電卓の持ち込みが認められています。ただし、以下の条件があります。
- 使用可能: 一般的な事務用電卓(12桁以上推奨)
- 使用不可: 関数電卓、プログラム機能付き電卓、音の出る電卓
電卓の可否は試験要項で毎年確認するのが鉄則です。要項に反する電卓を持ち込むと使用を認められないことがあるため、本番で使う電卓は試験前に必ず要件を確認しておきましょう。
電卓の基本操作を高速化する
メモリー機能の活用
電卓のメモリー機能(M+、M-、MR、MC)は演習で威力を発揮します。
| キー | 機能 | 使い方 |
|---|---|---|
| M+ | メモリーに加算 | 複数の計算結果を合計したいときに使用 |
| M- | メモリーから減算 | 費用項目を差し引きたいときに使用 |
| MR | メモリーの呼出し | 合計結果を表示する |
| MC | メモリーのクリア | 新しい計算を始める前に使用 |
DCF法でのメモリー活用例:
- MC(メモリークリア)
- 1期目のNOI÷(1+r)^1を計算→M+
- 2期目のNOI÷(1+r)^2を計算→M+
- 3期目のNOI÷(1+r)^3を計算→M+
- 復帰価格÷(1+r)^3を計算→M+
- MR→DCF法による収益価格が表示される
定数計算機能の活用
多くの電卓には定数計算機能があり、同じ数値を繰り返し掛けたり割ったりする際に便利です。DCF法で(1+r)を繰り返し掛ける場合などに活用できます。例えば「÷ 1.05 = = =」と等号を繰り返すことで、1期・2期・3期の現在価値係数を連続して得られる機種もあります。手持ちの電卓の挙動を事前に確認しておきましょう。
複利現価率を先に用意する
DCFで割引率と期間が固定なら、$1/(1+r)^n$(複利現価率)を先にまとめて計算し、各期NOIに掛ける方式が速くて検算もしやすいです。例として割引率5%の複利現価率は次のとおりです。
| 期 n | $1/(1.05)^n$(概算) |
|---|---|
| 1 | 0.9524 |
| 2 | 0.9070 |
| 3 | 0.8638 |
| 4 | 0.8227 |
| 5 | 0.7835 |
電卓操作の練習方法
演習で高得点を取るためには、電卓操作の速度と正確性が不可欠です。以下の練習を日常的に行いましょう。
- ブラインドタッチ練習: 電卓のキーを見ずに打てるように練習する(1日10分)
- 検算の習慣化: 計算した後に必ず逆算して確認する癖をつける
- メモリー機能の反復練習: DCF法の計算をメモリー機能を使って繰り返し練習する
- 同一機種の徹底使用: 普段の学習から本番と同じ電卓を使い、キー配置とメモリー挙動を体に覚えさせる
答案の書き方
演習答案の構成
演習の答案は、以下の構成で記述します。
1. 前提条件の整理
問題で与えられた条件を簡潔にまとめます。
2. 各方式の適用
各方式について、計算式→計算過程→計算結果の順で記述します。
3. 試算価格の一覧
各方式で算定した試算価格を一覧表にまとめます。
4. 試算価格の調整
各試算価格の信頼性を検討し、どの価格をどの程度重視するかを記述します。
5. 鑑定評価額の決定
最終的な鑑定評価額を決定し、その根拠を簡潔に記述します。
試算価格の調整は基準でも重視されており、単純平均で済ませてはいけません。基準は次のように定めています。
試算価格の調整は、鑑定評価の手順の各段階について、対象不動産に係る地域分析及び個別分析等に照らした適切性、その手法の適用において採用した資料の特性及び限界からくる相対的信頼性等を考慮すべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第7節
答案作成のコツ
計算過程を省略しない: 途中の計算式をすべて記載することで、仮に最終結果が間違っていても部分点を得られます。
数値は見やすく書く: 桁区切りのカンマを入れ、単位(円、円/㎡)を明記する。
補正率の根拠を示す: 各補正率がなぜその値になるのかを簡潔に記述する。
端数処理のルールを明記する: 端数処理の方法(四捨五入、切り捨て等)を答案に記載する。
時間配分を決め打ちする: 解き始める前に各設問への配分時間を決め、超過したら次へ進む。完璧主義で1つの計算に固執すると、解けるはずの後半を落とします。
暗記すべき公式と数値の整理
演習では「考えて導く」時間を減らし、反射的に書き出せる公式を増やすほど有利です。最低限おさえたい式を一覧にします。
| 手法 | 公式 |
|---|---|
| 取引事例比較法 | 比準価格 = 取引価格 × 事情補正 × 時点修正 × 地域要因比較 × 個別的要因比較 |
| 原価法 | 積算価格 = 再調達原価 × (1 − 減価率)、減価率 = 経過年数 / 耐用年数 |
| 直接還元法 | 収益価格 = NOI / 還元利回り |
| DCF法 | 収益価格 = Σ NOIₙ/(1+r)ⁿ + 復帰価格/(1+r)ᴺ |
| 復帰価格 | (N+1期NOI) / 最終還元利回り |
| 積算法(新規賃料) | 積算賃料 = 基礎価格 × 期待利回り + 必要諸経費等 |
| 利回り法(継続賃料) | 継続賃料 = 基礎価格 × 継続賃料利回り + 必要諸経費等 |
暗記のコツ
- 式を「日本語の手順」で唱える: 「比準は、価格に、事情・時点・地域・個別を掛ける」と口で言えるようにすると、本番で式の順序を忘れません。
- 逆数の向きをセットで覚える: 要因比較は「対象 ÷ 事例」の向きを一度自分で固定し、すべての問題で同じ向きに統一する。
- 白紙再現法: テキストを見ずに、白紙に三方式の答案フォーマット(見出しと式)を再現する練習を週1回行う。
よくある質問(FAQ)
計算が苦手でも演習で得点できますか
できます。演習で問われる計算は四則演算・累乗・パーセントが中心で、高度な数学は不要です。むしろ「手順を正しい順序で、漏れなく実行する」事務処理能力が問われます。反復練習で手順を体に染み込ませれば、計算が苦手な人でも安定した得点源にできます。
演習だけ集中対策しても合格できますか
演習は鑑定理論(論文)と科目として一体であり、論文側の理解(三方式の定義・適用条件・調整の考え方)が演習の論述部分の質を左右します。計算手順と基準理解は車の両輪と考え、並行して進めるのが効率的です。
DCF法ばかり対策すれば十分ですか
DCF法は最重要テーマですが、それだけでは不十分です。更地評価の補正計算や原価法の減価修正、賃料算定は基礎計算として他のパターンにも波及するため、全パターンを一通り回せる状態を目指しましょう。直近で出ていないテーマほど警戒が必要です。
過去問は何年分やればよいですか
目安としては過去10年分を複数回転です。1回目は手順の確認、2回目は時間を計って通し、3回目以降はミスした箇所の重点復習という回し方が効果的とされます。
試算価格の調整は単純平均で書いてはいけませんか
機械的な単純平均は避けるべきとされます。基準は各手法の資料の信頼性や対象不動産の市場特性を踏まえた調整を求めており、なぜその試算価格を重視するのかの論理を示すことが採点上も重要です。
学習スケジュールと練習量の目安
演習対策の学習計画
| 期間 | 学習内容 | 週あたりの学習時間 |
|---|---|---|
| 1〜2ヶ月目 | 各計算手法の基本を理解する。例題レベルの問題を解く | 3〜4時間 |
| 3〜4ヶ月目 | 過去問レベルの問題に挑戦する。時間を計って解く | 4〜5時間 |
| 5〜6ヶ月目 | 本番形式の演習(2時間で1〜2問)を繰り返す | 5〜6時間 |
| 直前1ヶ月 | 過去問の最終回転と計算スピードの仕上げ | 6〜8時間 |
必要な練習量の目安
- 過去問: 過去10年分を3回転以上
- 例題・練習問題: 各テーマ5〜10問以上
- 本番形式の演習: 月に2〜3回以上
直前期のチェックリスト
- 三方式の公式を白紙に再現できるか
- DCFの複利現価率を電卓で素早く出せるか
- 答案フォーマット(前提整理→各方式→一覧→調整→決定)が体に入っているか
- 端数処理・単位表記のルールを自分の中で固定できているか
- 本番と同じ電卓で時間内に1問解き切れるか
鑑定理論(演習)の試験では、関数電卓を使用することができる。
試算価格の調整は、各試算価格を機械的に単純平均して鑑定評価額を決定すれば足りる。
まとめ
鑑定理論(演習)は100点配点の計算科目であり、正確な計算力と答案の体裁が得点を左右します。
出題パターンを押さえる: 更地評価・建物及びその敷地の評価・DCF法による収益価格の算定・賃料の算定が4大パターンです。特にDCF法は近年ほぼ毎年出題されており、最重要テーマと位置づけて対策しましょう。ただし全パターンを一通り回せる状態を目指すのが安全です。
計算ミスを防ぐ: 桁の間違い・分子分母の取り違え・項目の漏れが三大ミスです。検算の習慣化と、計算結果の概算チェックでミスを最小限に抑えましょう。端数処理と単位表記のルールを固定しておくこともミス削減に効きます。
電卓操作を磨く: メモリー機能と定数計算機能を使いこなせるようになると、計算スピードが大幅に向上します。複利現価率を先に用意する方法やブラインドタッチの練習も欠かさずに行いましょう。
計算過程を省略しない: 答案には計算式と途中経過をすべて記載することで、部分点を確実に取りましょう。試算価格の調整は単純平均で済ませず、信頼性の検討の論理を示すことが大切です。
演習は鑑定理論(論文)と合わせて300点を占める重要科目です。論文の基準暗記(鑑定理論(論文)の勉強法参照)と演習の計算力の両方を磨くことで、鑑定理論全体で高得点を確保し、論文式試験の合格を目指しましょう。収益還元法や原価法の理論的な理解を深めることも、演習の計算力向上に直結します。