重要文化的景観とは?文化財保護法での意味を図でわかりやすく解説
地域における人々の生活又は生業と、その地域の風土により形成された景観地(文化的景観)のうち特に重要なものを、都道府県又は市町村の申出に基づいて文部科学大臣が選定したものです。つまり、棚田や漁村のように人の暮らしが作った風景を、指定ではなく選定という形で守る仕組みで、現状変更は30日前の届出で足ります。
重要文化的景観とは
山あいの棚田や、川沿いに舟小屋が並ぶ漁村、里山と集落が一体になった風景を思い浮かべてください。こうした景色は、自然だけでできたものではなく、そこに住む人々が田を耕し、魚を獲るという暮らしと生業を続けてきたからこそ形作られたものです。法律はこれを「文化的景観」と呼び、そのうち特に重要なものを重要文化的景観として文部科学大臣が選定します。人が暮らし続けることで残る風景なので、建物や土地を国が厳しく縛るのではなく、地元の都道府県や市町村が先に守る手当てをし、国がそれを選んで支える形になっています。

人の暮らしと生業が作った風景を、地元の申出に基づいて国が選定する。
選定は、都道府県又は市町村の申出に基づいて文部科学大臣が行います
文部科学大臣は、都道府県又は市町村の申出に基づき、その都道府県や市町村が景観法の景観計画区域又は景観地区の中で保存のため必要な措置を講じている文化的景観のうち、特に重要なものを重要文化的景観として選定できます(134条1項)。申出をするのは景観を抱える地元の都道府県か市町村で、国が自分から選ぶことはありません。景観計画区域や景観地区の中にあることと、地元が保存の措置を講じていることが前提になっているのは、暮らしの中の風景を守るには地元の取組みが欠かせないからです。重要文化的景観がその価値を失った場合その他特殊の事由があるときは、文部科学大臣が選定を解除できます(135条)。
現状変更は30日前までの届出で足り、許可は要りません
重要文化的景観の現状を変更し、又は保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、その日の30日前までに文化庁長官に届け出ます(139条1項)。維持の措置や非常災害の応急措置、他の法令の命令に基づく措置、保存への影響が軽微な行為は届出も要りません。届出を受けた文化庁長官は、必要な指導、助言又は勧告ができます(139条3項)。田を耕し家を直しながら暮らす人々の営みそのものが景観なので、許可で止めるのではなく届出で見守る形をとっています。

暮らしながら守る風景だから、現状変更は許可ではなく30日前の届出。
滅失やき損は、知った日から10日以内に届け出ます
重要文化的景観の全部又は一部が滅失し、又はき損したときは、所有者又は権原に基づく占有者は、その事実を知った日から10日以内に文化庁長官に届け出ます(136条)。重要文化的景観の保存に著しい支障を及ぼすおそれがない場合として省令で定める場合は、届出は要りません。事前の現状変更が30日前、事後の滅失やき損が10日以内という日数は、重要文化財や登録有形文化財と同じです。
文部科学大臣は、都道府県又は市町村の申出に基づき、当該都道府県又は市町村が定める景観法…に規定する景観計画区域又は…景観地区内にある文化的景観であつて、文部科学省令で定める基準に照らして当該都道府県又は市町村がその保存のため必要な措置を講じているもののうち特に重要なものを重要文化的景観として選定することができる。
出典: 文化財保護法 134条1項
実務ではこう使う
重要文化的景観に選定された農村では、棚田や水路が景観の骨格として保存され、宅地開発や大型の施設は入りにくくなります。地域分析では、景観の保存が観光の収益をもたらす一方で、農地から宅地への転換が進みにくいことを、地域要因として両面から書きます。個々の農地や家屋の評価では、外観を変える改修に30日前の届出が要ることを個別的要因として確かめます。
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