開発法とは?不動産鑑定で大規模な土地・素地を評価する手法を解説
開発法の仕組みと計算構造を解説。開発許可が必要な土地(素地)の鑑定評価方法、開発完了後の価格から開発費用を控除する手法、マンション適地・戸建分譲適地の適用例と試験の出題ポイントをまとめています。
開発法とは
開発法とは、対象不動産について、開発(造成・建築等)を行うことが最有効使用と認められる場合に、開発後の不動産の価格(開発完了後の更地又は建物及びその敷地の価格)から、開発に通常必要とされる費用及び発注者の適正な利潤を控除して対象不動産の試算価格を求める手法です。
開発法は、総論第7章に規定される鑑定評価の三方式(原価法・取引事例比較法・収益還元法)とは別に、特定の不動産類型に対して各論第1章で規定される手法です。大規模な土地や開発を要する土地(素地)の評価において、特に有効な手法として位置づけられています。
開発法の基本的な考え方は、「開発後に実現する価値(開発完了後の価格)から、その価値を実現するために必要なコスト(開発費用と利潤)を差し引いた残りが、現時点における土地の価値である」というものです。
開発法が適用される不動産
適用対象
開発法が適用される典型的な不動産は以下のとおりです。
| 不動産の種類 | 具体例 | 開発の内容 |
|---|---|---|
| 素地(宅地見込地) | 農地・山林が宅地に転換される見込みの土地 | 造成工事、道路・上下水道の整備 |
| 大規模画地 | 広大な未利用地、工場跡地 | 区画割り、造成、インフラ整備 |
| マンション適地 | マンション建設に最適な更地 | マンション建設 |
| 戸建分譲適地 | 戸建住宅の分譲に適した更地 | 区画割り、戸建住宅建設 |
最有効使用との関係
開発法を適用するための前提条件は、対象不動産について開発を行うことが最有効使用と認められることです。
対象不動産の最有効使用がそのままの状態での利用(現況利用の継続等)である場合には、開発法の適用は適切ではありません。最有効使用が開発(造成・建築等)であると判断される場合にのみ、開発法の適用が妥当となります。
最有効使用の判断にあたっては、以下の事項を考慮します。
- 法的に許容される開発の内容(都市計画法、建築基準法等の規制)
- 物理的に可能な開発の内容(地形、地盤等の条件)
- 経済的に合理的な開発の内容(市場の需給動向、開発コスト等)
開発法の計算構造
基本的な計算式
開発法の計算式は以下のとおりです。
開発法による試算価格 = 開発完了後の価格 - 通常の造成費等 - 発注者の適正な利潤 - 付帯費用
この計算式の各構成要素について、以下で詳しく解説します。
各構成要素の解説
1. 開発完了後の価格
開発完了後の価格とは、開発が完了した場合に想定される不動産の価格です。開発の内容に応じて、以下のように把握されます。
| 開発の内容 | 開発完了後の価格 |
|---|---|
| 宅地造成(分譲素地) | 造成完了後の各画地の更地価格の合計 |
| マンション建設 | 建物完成後の区分所有建物及びその敷地の価格(各住戸の分譲価格の合計) |
| 戸建住宅分譲 | 建物完成後の各戸建住宅(建物及びその敷地)の価格の合計 |
開発完了後の価格は、開発完了時点における市場価格を予測して求めます。この予測にあたっては、取引事例比較法や収益還元法を適用して、開発完了後の不動産の市場価値を適正に把握する必要があります。
2. 通常の造成費等(開発費用)
通常の造成費等とは、開発を行うために通常必要とされる費用をいいます。具体的には以下の項目が含まれます。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 造成工事費 | 土地の造成に要する工事費(切土・盛土、擁壁工事等) |
| 建築工事費 | 建物の建築に要する工事費(マンション・戸建住宅等) |
| 設計・監理費 | 設計及び工事監理に要する費用 |
| インフラ整備費 | 道路、上下水道、電気・ガス等の整備費用 |
| 開発許可関連費用 | 開発許可申請に要する費用 |
| 公共施設負担金 | 開発に伴う公共施設の整備負担金 |
| 各種負担金 | 水道負担金、下水道受益者負担金等 |
3. 発注者の適正な利潤
発注者の適正な利潤とは、開発事業を行う発注者(デベロッパー等)が事業リスクを負担することの対価として、通常期待される利潤をいいます。
利潤率は、開発事業のリスクの大きさ、事業期間の長さ、市場環境等を考慮して判定します。一般的には、開発完了後の価格に対する一定の比率として把握されることが多いです。
4. 付帯費用
付帯費用には、以下のような項目が含まれます。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売費 | 分譲に要する広告宣伝費、仲介手数料等 |
| 一般管理費 | 事業全般の管理に要する費用 |
| 金利 | 開発期間中の借入金に対する利息 |
| 公租公課 | 開発期間中の固定資産税・都市計画税等 |
| 登記費用 | 各種登記に要する費用 |
投下資本収益率と開発スケジュール
投下資本収益率の考え方
開発法では、開発に要する費用は開発の着手時から完了時までの各段階で投下されます。各費用項目が投下される時期に応じて、投下資本に対する金利負担が発生します。
投下資本収益率は、開発事業に投下される資本に対して、その投下時期から開発完了時までの期間に応じた利回りを反映するものです。
開発スケジュールの重要性
開発法の適用にあたっては、開発スケジュールの設定が重要です。開発スケジュールとは、造成工事の着手から完了、建物の建築着工から竣工、販売開始から完売までの一連のタイムラインをいいます。
開発スケジュールが長くなるほど、投下資本の金利負担が増加し、試算価格が低くなる傾向があります。したがって、開発スケジュールの設定は合理的かつ現実的なものでなければなりません。
素地の評価における開発法
素地とは
素地(そじ)とは、宅地としての利用に供されていないが、将来宅地に転換されることが見込まれる土地(宅地見込地)をいいます。農地、山林、原野などが、都市の発展に伴って宅地化が見込まれる場合に「素地」として評価の対象となります。
素地の評価手法
素地の鑑定評価においては、開発法が特に有効な手法として位置づけられています。素地の評価に適用される主な手法は以下のとおりです。
| 手法 | 内容 |
|---|---|
| 取引事例比較法 | 類似の素地の取引事例に基づく比準価格 |
| 開発法 | 開発完了後の価格から開発費用等を控除した試算価格 |
| 収益還元法 | 開発後の収益に基づく収益価格 |
基準では、素地の鑑定評価について、開発法の適用が重要であることを規定しています。素地は現状では収益を生み出していないことが多いため、開発後の価値から遡及的に現時点の価値を把握する開発法の考え方が特に有効です。
マンション適地の開発法
マンション適地への適用
マンション適地(マンションの建設が最有効使用と判断される更地)に開発法を適用する場合の基本的な考え方は以下のとおりです。
手順1:マンション計画の想定
対象地上に建築可能なマンションの規模(階数、延床面積、住戸数等)を、建築基準法等の法令上の制限と市場の需給動向を踏まえて想定します。
手順2:分譲価格の想定
完成したマンションの各住戸の分譲価格を、類似のマンションの取引事例等を参考にして想定します。
手順3:建築工事費等の見積もり
マンションの建築工事費、設計・監理費、販売費、一般管理費等を見積もります。
手順4:試算価格の算定
分譲価格の合計額から、建築工事費等の各種費用と発注者の適正な利潤を控除して、対象地の試算価格を求めます。
計算例の概要
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 分譲価格の合計(開発完了後の価格) | 30億円 |
| 建築工事費 | ▲18億円 |
| 設計・監理費 | ▲1億円 |
| 販売費・一般管理費 | ▲2億円 |
| 金利相当額 | ▲1億円 |
| 発注者の適正な利潤 | ▲3億円 |
| 試算価格(土地の価格) | 5億円 |
戸建分譲適地の開発法
戸建分譲適地への適用
戸建分譲適地(戸建住宅の分譲開発が最有効使用と判断される土地)に開発法を適用する場合の考え方は、マンション適地の場合と基本的に同様ですが、以下の点が異なります。
1. 区画割りの想定
対象地を適切な区画に分割する計画(区画割り)を想定します。区画割りにあたっては、各区画の面積、形状、接道状況等が市場の需要に適合するよう考慮します。
2. 造成工事の考慮
戸建分譲の場合は、道路の新設・拡幅、上下水道の引込み、擁壁工事、造成工事等のインフラ整備費用が発生します。
3. 建物建築の有無
建売住宅として販売する場合は建物の建築工事費が含まれ、宅地分譲として販売する場合は造成済み宅地の販売価格が開発完了後の価格となります。
開発法と他の手法との関係
原価法との比較
開発法と原価法は、いずれも「費用」に着目する手法ですが、アプローチが異なります。
| 比較項目 | 開発法 | 原価法 |
|---|---|---|
| 出発点 | 開発完了後の価格(将来の価値) | 再調達原価(過去のコスト) |
| 計算方向 | 将来の価格から遡って現在の価格を求める | 過去のコストを基に現在の価格を求める |
| 適用対象 | 開発が最有効使用の不動産 | 再調達原価の把握が可能な不動産 |
| 費用の性質 | これから投下する予定の費用 | 既に投下された費用(又は新たに投下する場合の費用) |
収益還元法との関係
開発法は、開発完了後の価格を収益還元法等で求めることがあるため、収益還元法と組み合わせて適用されることがあります。特に、マンション適地の評価において、完成後のマンションの収益価格を開発完了後の価格として用いる場合には、開発法と収益還元法の両方の知識が必要となります。
最有効使用との関係
開発法の適用は、最有効使用の判定と密接に関連しています。最有効使用が開発であると判断されてはじめて開発法の適用が正当化されるため、最有効使用の判定は開発法適用の前提条件です。
実務上の留意事項
開発許可の要否
開発を行う場合には、都市計画法に基づく開発許可が必要な場合があります。開発許可の要否は、開発の規模、所在地域(市街化区域、市街化調整区域等)によって異なります。
開発法を適用する際には、対象地における開発許可の取得可能性を確認し、許可が得られない場合には開発法の適用自体が困難となることに留意が必要です。
開発リスクの反映
開発事業には、以下のようなリスクが伴います。
| リスクの種類 | 内容 |
|---|---|
| 市場リスク | 完成後の販売価格の変動リスク |
| 工事リスク | 工事費の増大、工期の遅延リスク |
| 許認可リスク | 開発許可・建築確認の取得に関するリスク |
| 金利リスク | 借入金利の変動リスク |
| 自然災害リスク | 地震・洪水等による被害リスク |
これらのリスクは、発注者の適正な利潤や割引率に反映されるべきものであり、リスクが高い案件ほど利潤率は高く設定されます。
時間の考慮
開発事業は一般に1年以上の期間を要するため、各費用の投下時期と開発完了後の価格の実現時期にタイムラグが生じます。このタイムラグに伴う資金の時間価値を適切に考慮することが、開発法の精度を高めるうえで重要です。
試験での出題ポイント
短答式試験
短答式試験では、開発法に関する以下の論点が出題されます。
- 開発法の定義: 開発完了後の価格から通常の造成費等と適正な利潤を控除して試算価格を求める手法
- 適用条件: 開発を行うことが最有効使用と認められる場合に適用
- 計算構造: 開発完了後の価格 - 造成費等 - 利潤 = 試算価格
- 適用対象: 素地、大規模画地、マンション適地、戸建分譲適地
- 原価法との違い: 計算方向(将来→現在 vs 過去→現在)
論文式試験
論文式試験では、以下のような論述が想定されます。
- 開発法の仕組みの説明: 計算構造と各構成要素を基準に即して体系的に論述する問題
- 素地の評価における開発法の意義: 素地の特性と開発法が有効な理由を論じる問題
- 開発法と三方式の関係: 開発法が三方式とは別に規定されている理由と位置づけを論じる問題
- 最有効使用との関係: 開発法の適用と最有効使用の判定の関連を論じる問題
暗記のポイント
| 暗記項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発法の定義 | 開発完了後の価格から造成費等と適正な利潤を控除して試算価格を求める手法 |
| 適用条件 | 開発を行うことが最有効使用と認められる場合 |
| 計算式 | 開発完了後の価格 - 造成費等 - 発注者の適正な利潤 - 付帯費用 |
| 主な適用対象 | 素地(宅地見込地)、大規模画地、マンション適地、戸建分譲適地 |
| 造成費等の具体例 | 造成工事費、建築工事費、設計費、インフラ整備費 |
| 付帯費用の具体例 | 販売費、一般管理費、金利、公租公課 |
| 原価法との違い | 開発法は将来の価格から遡及、原価法は過去のコストから出発 |
| 規定箇所 | 各論第1章(三方式とは別に規定) |
まとめ
開発法は、開発を行うことが最有効使用と認められる不動産について、開発完了後の価格から開発費用と適正な利潤を控除して試算価格を求める手法です。素地、大規模画地、マンション適地、戸建分譲適地など、開発を要する不動産の評価において特に有効な手法として位置づけられています。
計算構造は「開発完了後の価格 - 造成費等 - 適正な利潤 - 付帯費用 = 試算価格」というシンプルなものですが、各構成要素の適切な見積もりには、市場分析、建築コストの知見、開発リスクの評価など、幅広い知識が求められます。
試験対策としては、開発法の定義と計算構造、適用条件(最有効使用が開発である場合)、原価法との違い(計算方向の相違)を正確に理解することが重要です。素地の評価、原価法、最有効使用の原則と関連づけて学習を進めることで、各論第1章における開発法の位置づけをより深く理解することができます。