未竣工建物等の鑑定評価
未竣工建物等鑑定評価を基準原文に基づき解説。造成中の土地や建築中の建物について工事完了を前提とする対象確定条件の設定方法を整理。設計図書等の収集義務、法令上の許認可取得、工事完了の実現性判断など条件設定の要件を網羅します。
未竣工建物等鑑定評価とは
不動産鑑定士試験において、未竣工建物等鑑定評価は対象確定条件の一類型として出題される重要な論点です。造成中の土地や建築中の建物について、工事の完了を前提として鑑定評価を行うものであり、条件設定の要件を正確に理解することが求められます。
造成に関する工事が完了していない土地又は建築に係る工事(建物を新築するもののほか、増改築等を含む。)が完了していない建物について、当該工事の完了を前提として鑑定評価の対象とすること(この場合の鑑定評価を未竣工建物等鑑定評価という。)。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
未竣工建物等鑑定評価の位置づけ
対象確定条件としての位置づけ
未竣工建物等鑑定評価は、鑑定評価の条件のうち対象確定条件の一つです。対象確定条件には以下の5類型がありますが、未竣工建物等鑑定評価はその第5類型に位置づけられます。
対象となる不動産
| 対象 | 具体例 |
|---|---|
| 造成中の土地 | 宅地造成工事中の土地、農地から宅地への造成中の土地 |
| 新築中の建物 | 建築工事中のマンション、事務所ビル |
| 増改築中の建物 | リノベーション工事中の建物 |
未竣工建物等鑑定評価の要件
基本的な要件
基準は、未竣工建物等鑑定評価を行う場合に、通常の対象確定条件の妥当性検討に加えて、追加の要件を求めています。
なお、未竣工建物等鑑定評価を行う場合は、上記妥当性の検討に加え、価格時点において想定される竣工後の不動産に係る物的確認を行うために必要な設計図書等及び権利の態様の確認を行うための請負契約書等を収集しなければならず、さらに、当該未竣工建物等に係る法令上必要な許認可等が取得され、発注者の資金調達能力等の観点から工事完了の実現性が高いと判断されなければならない。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
要件の整理
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 設計図書等の収集 | 竣工後の不動産の物的確認のための設計図書等 |
| 請負契約書等の収集 | 権利の態様の確認のための請負契約書等 |
| 許認可等の取得 | 法令上必要な許認可等が取得されていること |
| 工事完了の実現性 | 発注者の資金調達能力等の観点から実現性が高いこと |
留意事項の補足
留意事項は、未竣工建物等鑑定評価について以下のとおり補足しています。
未竣工建物等鑑定評価は、価格時点において、当該建物等の工事が完了し、その使用収益が可能な状態であることを前提として鑑定評価を行うものであることに留意する。
― 不動産鑑定評価基準に関する実務指針(留意事項) 総論第5章
つまり、価格時点においてすでに工事が完了している状態を想定して評価するものであり、工事の進捗途中の未完成の状態を評価するものではありません。
対象確定条件設定の妥当性
鑑定評価書の利用者の利益
すべての対象確定条件に共通する要件として、「鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないか」の観点からの妥当性の確認が求められます。
対象確定条件を設定するに当たっては、対象不動産に係る諸事項についての調査及び確認を行った上で、依頼目的に照らして、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点から当該条件設定の妥当性を確認しなければならない。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
証券化対象不動産における制限
証券化対象不動産の鑑定評価等、鑑定評価書の利用者の利益に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、原則として現実の利用状況と異なる対象確定条件の設定が制限されます。ただし、未竣工建物等鑑定評価については、各論第3章第2節に定める要件を満たす場合には行うことができるとされています。
未竣工建物等鑑定評価が必要となる場面
典型的な依頼目的
| 場面 | 依頼目的 | 具体例 |
|---|---|---|
| 不動産開発の融資 | 完成後の不動産の担保価値の把握 | マンション開発事業への融資の際の担保評価 |
| 証券化 | 投資家への情報開示(完成後の収益性) | 開発型の不動産証券化スキーム |
| 事業計画の検証 | 完成後の不動産の市場価値の判定 | 大規模商業施設の開発計画の経済性検証 |
| 売買 | 建築中の建物の売買価格の参考 | 完成前のマンションの売買 |
実務上の留意点
- 工事の進捗状況の確認: 評価時点における工事の進捗状況を把握する
- 設計変更の可能性: 工事中に設計変更が生じる可能性を考慮する
- 完成時期の見通し: 工期の遅延リスクを検討する
- コスト変動リスク: 建設費の変動が事業収支に与える影響を分析する
他の対象確定条件との関係
| 対象確定条件 | 未竣工建物等鑑定評価との違い |
|---|---|
| 独立鑑定評価 | 既存の建物を除外して更地として評価する(現存する建物を無視する点が異なる) |
| 部分鑑定評価 | 既存の結合状態を所与として構成部分を評価する(現状を前提とする点が異なる) |
| 想定上の条件 | 地域要因・個別的要因の想定(完成を前提とする対象確定条件とは性質が異なる) |
| 未竣工建物等鑑定評価 | 未完成の建物等について完成を前提として評価する |
試験での出題ポイント
短答式試験
| 出題パターン | 正しい理解 |
|---|---|
| 未竣工建物等鑑定評価の位置づけ | 対象確定条件の一類型 |
| 評価の前提 | 工事が完了し使用収益が可能な状態を前提 |
| 追加の要件 | 設計図書等・請負契約書等の収集、許認可の取得、工事完了の実現性 |
| 証券化との関係 | 原則として条件設定は制限されるが、未竣工建物等鑑定評価は例外的に可能 |
| 実現性の判断 | 発注者の資金調達能力等の観点から判断 |
論文式試験
論点1:未竣工建物等鑑定評価の意義と要件。 対象確定条件としての位置づけと、設計図書等の収集・許認可の取得・工事完了の実現性という追加要件を論述する問題です。
論点2:証券化対象不動産における未竣工建物等鑑定評価。 原則として条件設定が制限される中での例外的な取扱いを論じる問題です。
暗記のポイント
- 定義: 「造成に関する工事が完了していない土地又は建築に係る工事が完了していない建物について、当該工事の完了を前提として鑑定評価の対象とすること」
- 追加要件(4つ): 設計図書等の収集、請負契約書等の収集、法令上の許認可等の取得、工事完了の実現性が高いこと
- 評価の前提: 「価格時点において、当該建物等の工事が完了し、その使用収益が可能な状態であることを前提」
まとめ
未竣工建物等鑑定評価は、造成中の土地や建築中の建物について工事の完了を前提として鑑定評価を行うもので、対象確定条件の一類型に位置づけられます。
通常の対象確定条件の妥当性検討に加えて、設計図書等の収集、請負契約書等の収集、許認可の取得、工事完了の実現性が高いことという追加要件を満たす必要があります。証券化対象不動産においても例外的に未竣工建物等鑑定評価が認められる場合があります。
独立鑑定評価と部分鑑定評価、鑑定評価の条件設定、対象確定条件の解説と併せて理解してください。