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宅地造成及び特定盛土等規制法 - 盛土規制の許可基準を不動産鑑定士試験向けに解説

不動産鑑定士試験の行政法規で問われる宅地造成及び特定盛土等規制法を解説。2023年改正の内容、宅地造成工事規制区域と特定盛土等規制区域の2区域制度、切土2m・盛土1m・面積500㎡超の許可基準を体系的にまとめます。

宅地造成及び特定盛土等規制法とは

宅地造成及び特定盛土等規制法(以下「盛土規制法」)は、宅地造成や特定の盛土等に伴う崖崩れ・土砂の流出による災害を防止するための規制法です。2021年に静岡県熱海市で発生した土石流災害を契機として、2023年に旧「宅地造成等規制法」が大幅に改正・改称されました。

不動産鑑定士試験の行政法規科目において、この法律は2023年改正の内容を中心に出題されることが増えています。改正前と改正後の制度の違い、2つの規制区域の設定、許可基準の数値(切土2m・盛土1m・面積500㎡)などが主な論点です。

盛土規制法は、単に工事の安全基準を定めるものではなく、不動産の評価においても重要な意味を持ちます。宅地造成工事規制区域や特定盛土等規制区域に所在する土地は、工事に際して許可取得が必要となり、それに伴うコスト・期間・不確実性が土地の価格に影響します。本記事では、改正法の全体像を把握したうえで、試験で問われる重要ポイントを体系的に解説します。


2023年改正の背景と概要

熱海土石流災害と制度の見直し

2021年7月に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害は、不適切な盛土が引き金となったとされています。この事件は社会的に大きな衝撃を与え、既存の「宅地造成等規制法」では規制が不十分であるという問題が浮き彫りになりました。

旧法の主な問題点は以下の通りです。

  • 規制区域が「宅地造成等工事規制区域」のみで、規制対象が市街地周辺に限られていた
  • 盛土を行う場所が規制区域外であれば許可不要であった
  • 規制区域を超えた広域的な盛土規制ができなかった

2023年改正の主な変更点

2023年(令和5年)に施行された改正法の主な変更点は以下の通りです。

項目旧法(宅地造成等規制法)改正後(盛土規制法)
法律名宅地造成等規制法宅地造成及び特定盛土等規制法
規制区域宅地造成工事規制区域のみ宅地造成工事規制区域+特定盛土等規制区域
規制対象宅地造成のみ宅地造成+特定盛土等(農地・森林も対象)
規制権者都道府県知事都道府県知事(政令指定都市等は市長)

この改正により、宅地化を目的としない盛土行為(農地や森林への盛土)も規制の対象に取り込まれ、規制の網が大幅に広がりました。


2つの規制区域

宅地造成工事規制区域

宅地造成工事規制区域は、旧法から引き継いだ規制区域です。

都道府県知事は、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、宅地造成、特定盛土等又は土石の堆積に伴う災害で相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい市街地又は市街地となろうとする土地の区域であって、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものを、宅地造成工事規制区域として指定することができる。― 宅地造成及び特定盛土等規制法 第10条第1項

宅地造成工事規制区域の特徴

  • 主に市街地またはその周辺部が対象
  • 宅地化に伴う造成工事(切土・盛土)を規制
  • 旧法の「宅地造成工事規制区域」に相当する区域
  • 一定規模以上の宅地造成工事には都道府県知事の許可が必要

特定盛土等規制区域

特定盛土等規制区域は2023年改正で新設された規制区域です。

都道府県知事は、基本方針に基づき、かつ、基礎調査の結果を踏まえ、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、宅地造成工事規制区域以外の土地の区域であって、特定盛土等又は土石の堆積に伴う災害で相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの発生のおそれが大きいものを、特定盛土等規制区域として指定することができる。― 宅地造成及び特定盛土等規制法 第26条第1項

特定盛土等規制区域の特徴

  • 宅地造成工事規制区域以外の区域が対象(農地・森林を含む)
  • 宅地化を目的としない盛土・土石の堆積も規制
  • 2023年改正で新設された区域
  • 一定規模以上の特定盛土等には許可または届出が必要

2区域の関係

区域主な対象地域規制対象の行為
宅地造成工事規制区域市街地・その周辺部宅地造成に伴う切土・盛土
特定盛土等規制区域農地・森林など(市街地外)宅地以外を含む盛土・土石の堆積

2つの区域は重複して指定することはできません(特定盛土等規制区域は宅地造成工事規制区域以外の区域に指定)。

確認問題

特定盛土等規制区域は、宅地造成工事規制区域と重複して指定することができる。


許可が必要な工事の基準

宅地造成工事規制区域における許可基準

宅地造成工事規制区域内で宅地造成に関する工事を行う場合、一定規模以上の工事には都道府県知事の許可が必要です。

宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事については、造成主は、当該工事に着手する前に、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。― 宅地造成及び特定盛土等規制法 第12条第1項

許可が必要な工事の規模(宅地造成工事規制区域)

以下のいずれかに該当する切土・盛土を行う場合に許可が必要です。

工事の種類許可が必要な規模
切土高さ2mを超える崖を生じる切土
盛土高さ1mを超える崖を生じる盛土
切土と盛土の複合高さ2mを超える崖を生じる場合
面積切土・盛土の面積が500㎡を超える場合

この数値は試験で頻出です。「切土2m・盛土1m・面積500㎡」として覚えておきましょう。

確認問題

宅地造成工事規制区域内で、高さ1.5mの崖を生じる切土を行う場合は、都道府県知事の許可が必要である。

特定盛土等規制区域における規制

特定盛土等規制区域内での特定盛土等については、規模に応じて許可または届出が必要です。

許可が必要な場合(大規模なもの)

  • 盛土: 高さ5mを超える盛土(面積3,000㎡超の場合は高さ2m超)
  • その他、政令で定める一定規模以上のもの

届出が必要な場合(上記許可基準未満のもの)

  • 一定規模以上の盛土等で許可不要のもの
  • 工事着手の30日前までに届出が必要

工事の技術基準と完了検査

工事の技術基準

宅地造成工事規制区域内の宅地造成工事には、工事の安全を確保するための技術基準が設けられています。

  • 排水施設の設置: 雨水その他の地表水・地下水を排除するための排水施設を設置しなければならない
  • 擁壁の設置: 切土・盛土によって生じた崖の安定を確保するため、必要に応じて擁壁を設置しなければならない
  • 盛土の構造: 盛土は締め固めなどの適切な施工方法によらなければならない

完了検査

宅地造成に関する工事が完了した後、造成主は都道府県知事の検査を申請し、検査済証の交付を受けなければなりません。


届出義務 ― 既存宅地の形質変更

既存宅地の届出

宅地造成工事規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者は、宅地において崩壊・流出を防止するための措置を講じなければなりません。また、宅地造成工事規制区域の指定前から存在する宅地(既存宅地)に手を加える場合も、届出義務が課される場合があります。

宅地造成工事規制区域内において、宅地(宅地造成工事規制区域の指定の際、当該宅地造成工事規制区域内において既に宅地造成に関する工事が行われ、又は行われていた土地を含む。)において行われる土地の形質の変更(前条第1項の規定により許可を要するものを除く。)であって政令で定めるものをしようとする者は、その工事に着手する日の14日前までに、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事に届け出なければならない。― 宅地造成及び特定盛土等規制法 第21条

届出が必要な時期は「工事着手14日前まで」であることも試験ポイントです。

変動の届出

宅地造成工事規制区域内の宅地において、地盤の崩落・土砂の流出が発生した場合や、そのおそれが生じた場合にも、都道府県知事への届出が義務付けられています。


不動産鑑定評価における盛土規制法の影響

盛土規制法による規制は、不動産の価格形成に様々な形で影響します。

造成コストへの影響

宅地造成工事規制区域内での宅地造成には、許可申請・擁壁設置・排水施設整備等のコストが追加的に発生します。これらのコストは、素地(更地)の価格評価において開発費用の増大要因として考慮されます。

都市計画法の開発許可制度との関係でいえば、開発許可と盛土規制法の許可の両方が必要になる場合には、許可取得に要する期間・費用がさらに増大し、土地価格に対するマイナス要因となります。

崩壊リスクと価格

特定盛土等規制区域に指定された地域に所在する不動産は、土砂災害のリスクを内包していることを意味します。このリスクは、土地区画整理法等による宅地整備が十分になされていない地域において特に顕在化します。

不動産鑑定評価においては、宅地造成工事規制区域・特定盛土等規制区域の指定の有無を確認し、以下の点を検討します。

  • 工事に必要な許可の種類・難易度
  • 技術基準を満たすための工事費用の見積もり
  • 崩壊・流出リスクに対するマイナス評価
  • 既存宅地の場合、擁壁等の安全性の確認
確認問題

宅地造成工事規制区域内で行う宅地造成に関する工事が完了した場合、造成主は都道府県知事の検査を受け、検査済証の交付を受けなければならない。


試験対策のポイント

短答式試験での頻出問題

盛土規制法の短答式試験では、以下のポイントが頻出です。

  1. 改正の背景: 2021年熱海土石流→2023年改正・改称
  2. 2区域の違い: 宅地造成工事規制区域(市街地周辺)と特定盛土等規制区域(農地・森林等)
  3. 許可基準の数値: 切土2m超・盛土1m超・面積500㎡超
  4. 届出の期限: 既存宅地の形質変更→着手14日前までに届出
  5. 完了検査: 工事完了後に都道府県知事の検査が必要

数値の覚え方

工事の種類基準値覚え方
切土の崖2m超「切(き)り2つ」
盛土の崖1m超「盛(も)り1つ」
工事面積500㎡超「ゴーゴー(500)面積」

切土の許可基準(2m)は盛土(1m)の2倍です。これは切土の方が安定しているため、より大きな崖でも許容できるという技術的根拠に基づいています。


まとめ

宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)は、2023年改正によって旧宅地造成等規制法から大幅に強化された法律です。従来の宅地造成工事規制区域に加えて、特定盛土等規制区域が新設され、農地や森林における不適切な盛土行為にも規制の網が広がりました。

試験対策としては以下の点を確実に押さえてください。

  • 2つの規制区域: 宅地造成工事規制区域(市街地・周辺)と特定盛土等規制区域(農地・森林等)は重複しない
  • 許可基準: 切土2m超、盛土1m超、面積500㎡超で都道府県知事の許可が必要
  • 届出義務: 既存宅地の形質変更は着手14日前までに届出
  • 完了検査: 工事完了後に都道府県知事の検査が必要

不動産鑑定評価との関係では、宅地造成工事規制区域・特定盛土等規制区域の指定が造成コストの増大・土砂災害リスクを通じて土地価格に影響することを理解しておきましょう。

都市計画法の概要建築基準法と組み合わせて学習することで、土地利用規制の全体像の中での盛土規制法の位置付けが理解できます。

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