都市計画法の用途地域13種類 - 建築制限と不動産価格への影響を解説
不動産鑑定士試験で必須の用途地域13種類を徹底解説。住居系8種・商業系2種・工業系3種の建築制限と不動産鑑定評価における最有効使用への影響を体系的にまとめました。
用途地域とは
用途地域は、都市計画法に基づき、土地の利用目的に応じて都市を13種類の地域に区分する制度です。不動産鑑定士試験の行政法規において、都市計画法の概要と並んで最頻出のテーマの一つです。用途地域の指定により、その地域で建築可能な建物の種類・規模が建築基準法によって具体的に規制されます。
用途地域の理解は、不動産鑑定評価における最有効使用の判定において欠かせません。どの用途地域に位置するかによって、その土地に建てられる建物の種類と規模が決まり、それが最有効使用を規定し、最終的に不動産の価格を左右するためです。
用途地域の根拠規定
用途地域の定義は都市計画法第9条に規定されています。
用途地域は、土地の合理的な利用を図るため都市計画法及び建築基準法その他の法律の規定による建築物その他の工作物に関する制限のもとに、一体として良好な環境を形成すべき地域について定めるものとする。― 都市計画法 第9条
用途地域は、市街化区域には必ず定める必要があります。一方、市街化調整区域には原則として用途地域を定めることができません。
市街化区域には、用途地域を必ず定めなければならない。
13種類の用途地域の体系
用途地域は「住居系」「商業系」「工業系」の3グループ、計13種類から構成されています。2018年(平成30年)の都市計画法改正で田園住居地域が新設され、それまでの12種類から13種類に増えました。
住居系(8種類)
住居系用途地域は、良好な住環境を保護することを目的としています。制限の強さは以下の順番で弱くなります。
| 用途地域 | 主な特徴 | 建ぺい率の限度 |
|---|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅の良好な住環境を保護。最も制限が厳しい。高さ制限10m or 12m | 30〜60% |
| 第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅の環境保護。150㎡以下の店舗可 | 30〜60% |
| 第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅の良好な環境保護。大学・病院等可 | 30〜60% |
| 第二種中高層住居専用地域 | 1,500㎡以下の店舗・事務所可 | 30〜60% |
| 第一種住居地域 | 住居の環境保護。3,000㎡以下の店舗・事務所・ホテル等可 | 50〜80% |
| 第二種住居地域 | 主に住居の環境保護。パチンコ店・カラオケ等も可 | 50〜80% |
| 準住居地域 | 道路沿道の住環境保護。自動車関連施設等も可 | 50〜80% |
| 田園住居地域 | 農業との調和を図りつつ低層住宅の環境保護(2018年新設) | 30〜60% |
商業系(2種類)
| 用途地域 | 主な特徴 |
|---|---|
| 近隣商業地域 | 近隣住民の日用品の購買等を目的とした商業地域。住宅・学校等も可 |
| 商業地域 | 主として商業の利便を増進するための地域。ほぼすべての用途が可。危険な工場等は不可 |
工業系(3種類)
| 用途地域 | 主な特徴 |
|---|---|
| 準工業地域 | 軽工業の工場等の環境悪化のない工業の利便。住宅・商業施設も可 |
| 工業地域 | 主として工業の利便を増進。住宅は建築可だが学校・病院・ホテルは不可 |
| 工業専用地域 | 工業の利便を増進するための地域。住宅は建築不可 |
工業専用地域においては、住宅を建築することはできない。
田園住居地域(2018年新設)
田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域として、2018年(平成30年)の都市計画法改正で新設された13番目の用途地域です。
田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。― 都市計画法 第9条第8項
田園住居地域の主な特徴:
- 建築可能な用途:低層住宅、農産物直売所(500㎡以下)、農産物加工所(500㎡以下)、農業の生産資材の倉庫等
- 建てられないもの:商業施設(農業に関係するものを除く)、工場、病院等
- 農地の建築制限:地域内の農地では、土地の形質変更等に市区町村長の許可が必要(農地の保全)
田園住居地域は「農業と住居が共存する地域」という新しい概念であり、試験でも新設の経緯・位置づけが問われることがあります。
田園住居地域は、2018年(平成30年)の都市計画法改正により新設された用途地域であり、農業の利便の増進を図りつつ、低層住宅の良好な住居環境を保護するための地域である。
用途地域と建築基準法の連動
用途地域の指定により、建築基準法において各用途地域に建築できる建物の種類(用途制限)が規定されます。また、以下の建築規制も用途地域と連動しています。
建ぺい率・容積率
用途地域ごとに、建築基準法によって建ぺい率と容積率の上限が設定されています。
- 建ぺい率:建築面積/敷地面積。住居系は低め、商業系・工業系は高め
- 容積率:延べ床面積/敷地面積。商業地域では最大1,300%まで
これらの数値が高いほど、大きな建物を建てることができ、土地の利用効率が高まります。
斜線制限・高さ制限
住居系の一部の用途地域では、日照・通風の確保のため、道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限が適用されます。また、第一種・第二種低層住居専用地域および田園住居地域では、絶対高さ制限(10mまたは12m)が設けられています。
用途地域と不動産鑑定評価
用途地域は不動産鑑定評価において、地域要因の分析と最有効使用の判定に直接影響します。
最有効使用の判定
最有効使用とは、「その不動産の効用を最高度に発揮できる使用方法」を指します。用途地域は、この最有効使用を法的に規定する最も重要な要素の一つです。
例えば:
- 第一種低層住居専用地域:低層専用住宅が最有効使用
- 近隣商業地域:近隣商業施設・共同住宅等が最有効使用
- 商業地域:大規模商業施設・オフィスビル等が最有効使用
同じ面積・形状・立地の土地であっても、用途地域が異なれば最有効使用が異なり、価格も大きく異なります。
価格への影響
一般的に、商業地域>近隣商業地域>準住居・第一種住居地域>低層住居専用地域の順で、容積率が高く利用効率が高いため地価が高くなる傾向があります。
ただし、立地・交通利便性・需給関係等も価格に影響するため、用途地域だけで価格の高低を判断することはできません。
用途地域の変更と価格変動
用途地域が変更された場合、建築可能な建物の種類・規模が変わるため、不動産の価格に大きな影響を与えます。例えば、第一種低層住居専用地域から近隣商業地域に用途変更されると、商業施設の建築が可能になり、一般的に土地価格は上昇します。
用途地域のない区域での建築
非線引き都市計画区域や準都市計画区域の一部、都市計画区域外では、用途地域の指定がない場合があります。この場合でも、建築基準法の一般的な規制(建ぺい率・容積率の上限など)は適用されます。
また、建築基準法の規定により、用途地域の指定がない区域では、環境上支障があると認められる特定の建築物(花火工場・有害物質を扱う工場等)の建築が制限されます。
試験での頻出ポイントまとめ
13種類の分類と数の確認
- 住居系:8種類(1低・2低・1中・2中・1住・2住・準住・田園)
- 商業系:2種類(近商・商業)
- 工業系:3種類(準工・工業・工専)
覚えるべき制限のポイント
| 内容 | ポイント |
|---|---|
| 住宅が建てられない用途地域 | 工業専用地域のみ |
| 絶対高さ制限がある用途地域 | 第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域 |
| 市街化区域には必ず | 用途地域を定める |
| 市街化調整区域には | 原則として定めない |
| 2018年新設 | 田園住居地域(13番目) |
試験でよく出る引っかけ問題
- 「工業地域では住宅を建てることができない」→ 誤り(工業地域では住宅可。工業専用地域は不可)
- 「市街化調整区域には用途地域を定めてはならない」→ 誤り(原則として定めないが、例外的に定められる場合がある)
まとめ
用途地域13種類の体系(住居系8・商業系2・工業系3)と各用途地域の特徴は、不動産鑑定士試験の行政法規において必須の知識です。特に工業専用地域での住宅建築禁止、絶対高さ制限の適用される低層住居専用地域・田園住居地域、2018年新設の田園住居地域の特徴は頻出事項です。
不動産鑑定評価の観点からは、用途地域が最有効使用を規定し、価格形成に直接影響する最重要の法的要素であることを理解しておきましょう。建築基準法の具体的な建築規制と組み合わせて学習することで、用途地域の制度をより深く理解できます。都市計画法の開発許可制度も合わせて確認しておきましょう。