都市再開発法 - 第一種・第二種市街地再開発事業の仕組みを解説
不動産鑑定士試験の行政法規で頻出の都市再開発法を解説。第一種(権利変換方式)と第二種(管理処分方式)の違い・施行者・権利変換計画・不動産鑑定評価との関係を詳しく説明します。
都市再開発法とは
都市再開発法は、市街地の計画的な再開発を促進するための法律です。老朽化した建築物が密集し、防災上・環境上の問題がある市街地において、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図ることを目的としています。
不動産鑑定士試験の行政法規では出題頻度の高い法律であり(過去問16問)、特に第一種と第二種の事業方式の違い、権利変換の仕組み、施行者の種類が繰り返し問われます。不動産鑑定評価においても、再開発事業の施行区域内にある不動産の評価や、権利変換後の床面積・価格の算定に関わる重要な法令です。
市街地再開発事業の2つの方式
都市再開発法による市街地再開発事業には、第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業の2種類があります。この2つの違いは試験で頻出です。
この法律において「市街地再開発事業」とは、市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、都市計画法及びこの法律で定めるところに従って行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する事業並びにこれに附帯する事業をいう。― 都市再開発法 第2条第1号
第一種市街地再開発事業(権利変換方式)
第一種市街地再開発事業は、権利変換方式によって行われます。これは、施行区域内の土地・建物等の権利者が、再開発後の建物の床(権利床)に権利を変換する方式です。
権利変換の仕組み
権利変換とは、施行前の土地・建物に対する権利を、施行後に建設される施設建築物の床に変換することです。
(権利変換のイメージ)
施行前: 施行後:
┌─────────┐ ┌─────────────────────┐
│ A の土地 │ │ 施設建築物(高層ビル) │
│ B の建物 │ ─権利変換→ │ ・A の権利床(○○㎡) │
│ C の土地 │ │ ・B の権利床(○○㎡) │
└─────────┘ │ ・保留床(売却対象) │
└─────────────────────┘
- 権利床:従前の権利者が取得する床部分
- 保留床:施行者が取得し、建設費に充てるために売却する床部分
第一種の施行者
第一種市街地再開発事業の施行者は以下の通りです。
| 施行者の種類 | 説明 |
|---|---|
| 個人施行者 | 土地の所有者・借地権者が単独または共同で施行 |
| 市街地再開発組合 | 土地所有者・借地権者が設立する組合(最低5人以上・同意率3/4以上) |
| 再開発会社 | 株式会社が施行(全員同意型) |
| 地方公共団体 | 都道府県・市区町村 |
| 独立行政法人都市再生機構 | UR都市機構 |
| 地方住宅供給公社 | 地方住宅供給公社 |
第一種市街地再開発事業において、市街地再開発組合を設立するには、施行区域内の土地所有者及び借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意を得ることが必要である。
第二種市街地再開発事業(管理処分方式・全面買収方式)
第二種市街地再開発事業は、管理処分方式(全面買収方式)によって行われます。これは、施行区域内の土地・建物等を施行者が全面的に取得(収用)し、再開発後に権利者に床を分譲する方式です。
第二種市街地再開発事業は、市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため必要な場合において施行するものとする。― 都市再開発法 第87条(概要)
第二種の施行要件
第二種は、第一種より大規模かつ緊急性の高い再開発を想定しており、以下のような場合に施行されます。
- 規模が政令で定める規模(施行区域面積0.5ha以上)以上
- 施行区域内の建築物が著しく老朽化または防災上危険な状態
- 土地の合理的な高度利用を促進するため緊急性が高い
第二種の施行者
第二種市街地再開発事業の施行者は、以下のいずれかです。
- 都道府県・市区町村(地方公共団体)
- 独立行政法人都市再生機構
- 地方住宅供給公社
個人施行者や組合は第二種の施行者になることができません。
第二種市街地再開発事業は、市街地再開発組合が施行者となることができる。
第一種と第二種の比較
| 比較項目 | 第一種(権利変換方式) | 第二種(管理処分方式) |
|---|---|---|
| 権利取得方法 | 権利変換(合意・協議が基本) | 全面買収(収用権あり) |
| 従前権利者の扱い | 権利床を取得して継続居住可 | 代替地または金銭補償 |
| 施行者 | 個人・組合・会社・公共団体等 | 地方公共団体・UR等のみ |
| 規模 | 比較的小規模から可能 | 0.5ha以上の大規模 |
| 施行手続 | 権利変換計画の認可 | 管理処分計画の認可 |
権利変換計画の概要
第一種市街地再開発事業の核心となる権利変換計画について理解しておきましょう。
権利変換計画の内容
権利変換計画は以下の事項を定めます。
- 施行地区内の従前の土地・建物の権利とその価額
- 施行後の施設建築物の床の権利とその価額
- 施設建築物の各床の概要
- 清算金(価額の差が生じる場合の調整金)
権利変換と不動産鑑定評価
権利変換計画の作成において、不動産鑑定評価は重要な役割を果たします。
施行者は、(中略)権利変換計画において定めるべき事項のうち権利変換前後の価額の算定については、不動産鑑定士の鑑定評価により行わなければならない。― 都市再開発法(概要)
権利変換前の価額(従前資産評価)と権利変換後の価額(従後資産評価)を不動産鑑定士が評価し、権利変換の公平性を担保します。
清算金
権利変換前後の価額に差額が生じる場合、清算金として調整されます。
- 従後資産評価額 > 従前資産評価額:権利者が清算金を支払う
- 従後資産評価額 < 従前資産評価額:権利者が清算金を受け取る
第一種市街地再開発事業において、権利変換計画で定める従前の土地・建物の権利の価額は、不動産鑑定士の鑑定評価によって算定しなければならない。
施行区域の要件
市街地再開発事業の施行区域は、以下の用途地域内に定めなければなりません。
- 高度利用地区内の区域
- 都市再生特別地区内の区域
- 特定用途誘導地区内の区域
また、施行区域内の土地の地積が一定規模以上(原則として0.1ha以上、第二種は0.5ha以上)であることが必要です。
再開発等促進区・特定街区との関係
都市計画において、市街地再開発を促進するための制度として、再開発等促進区や特定街区があります。
- 再開発等促進区:地区計画の中で、土地の合理的な高度利用を促進するために定められる区域
- 特定街区:容積率・高さ・壁面位置等を特別に定めることができる街区(超高層ビルの建設等に活用)
これらの制度と都市再開発法による事業が組み合わさることで、大規模な都市開発が実現されます。
不動産鑑定評価における再開発地区の取り扱い
再開発事業の施行区域内にある不動産の評価には特有の考慮事項があります。
事業前の評価(従前資産評価)
再開発事業前の不動産を評価する際には、以下の点を考慮します。
- 老朽化した建物が密集している状況における現況価格
- 再開発事業による将来の価値上昇の期待(開発利益)は原則として算入しない
- 更地・建付地等の種別に応じた適切な評価手法の選択
事業後の評価(権利床・保留床の評価)
再開発事業後の床の評価では、以下の手法が用いられます。
- 取引事例比較法:類似の施設建築物の床の取引事例との比較
- 収益還元法:床から得られる収益に基づく収益価格の算定
- 原価法:建設費等を基礎とした積算価格の算定
まとめ
都市再開発法の第一種・第二種の違いは試験で頻出です。「第一種=権利変換方式・組合等も施行者になれる」「第二種=全面買収方式・公共団体等のみが施行者」という基本的な対比を確実に押さえてください。
権利変換計画において不動産鑑定士の評価が法的に義務付けられている点は、不動産鑑定士試験の受験者として特に重要な知識です。都市計画法の開発許可制度や土地区画整理法と合わせて、都市整備に関する法制度を体系的に理解しておきましょう。