原生自然環境保全地域とは?自然環境保全法での意味を図でわかりやすく解説
人の活動によって影響を受けることなく原生の状態を維持している、国又は地方公共団体が所有する一定面積以上の土地の区域のうち、自然環境を保全することが特に必要なものとして環境大臣が指定する地域です。つまり、人の手がまったく入っていない自然を、そのまま残すための区域です。
原生自然環境保全地域とは
屋久島の奥や南硫黄島のように、人が踏み込んだことのない森や島があります。道も建物もなく、木が倒れても誰も片づけません。こうした自然は、いちど手を入れると元には戻らないので、この法律の中で最も厳しい区域として囲い、人の活動を原則として締め出します。それが原生自然環境保全地域で、自然環境保全法が守る区域の中で一番手つかずのものです。

人の手が入っていない国や地方公共団体の土地を、環境大臣が囲む。
指定するのは環境大臣で、国や地方公共団体の土地に限られます
14条1項は、原生の状態を維持していること、政令で定める面積以上であること、国又は地方公共団体が所有する土地であることの三つを要件にして、環境大臣が指定すると定めています。面積は施行令1条で1,000ヘクタール以上、周囲が海面に接している島のような区域は300ヘクタール以上です。民有地が要件から外れているのは、区域内の行為をほぼ全部禁止するため、私人の土地では財産権との折り合いがつかないからと考えられます。指定の前には関係都道府県知事と中央環境審議会の意見を聴き、土地を所管する国の機関の長や所有する地方公共団体の同意を得ます(14条2項・3項)。
区域内の行為は、許可制ではなく禁止が原則です
17条1項は、建築物その他の工作物の新築・改築・増築、宅地の造成などの土地の形質の変更、木竹の伐採や植栽、動物の捕獲、家畜の放牧を含む動物を放つこと、火入れやたき火、廃棄物の投棄まで、区域内でしてはならない行為を列挙しています。例外は、環境大臣が学術研究その他公益上の事由により特に必要と認めて許可した場合と、非常災害のために必要な応急措置だけです(17条1項ただし書)。自然環境保全地域の特別地区が「許可を受ければできる」許可制であるのに対し、ここは「そもそもしてはならない」禁止が出発点で、許可は例外中の例外です。木を植えることまで禁じられているのは、人が持ち込んだ植物で原生の植生が変わってしまうためと考えられます。

新築も植栽もたき火も禁止。許可は学術研究など公益上の事由だけ。
指定の際に着手していた行為は、3月間だけ続けられます
17条4項は、地域が指定され又は区域が拡張された際にその区域内で禁止行為に着手している者は、指定又は拡張の日から起算して3月間は引き続きその行為をすることができると定めています。その期間内に許可を申請したときは、許可か不許可の処分があるまで続けられます。進めていた工事を指定の日にいきなり止めさせないための経過措置で、自然環境保全地域の特別地区では同じ期間が6月です(25条8項)。非常災害のために必要な応急措置として禁止行為をした者は、行為をした日から起算して14日以内に環境大臣に届け出ます(17条3項)。

指定の前から建てていた家は、指定の日から3月間は続けられる。
立入制限地区は、原生自然環境保全地域の中にだけ置けます
19条1項は、環境大臣が保全のために特に必要があると認めるときは、保全計画に基づいて区域内に立入制限地区を指定できると定め、19条3項は何人もそこに立ち入ってはならないとします。立入りが許されるのは、許可を受けた行為や応急措置、保全事業の執行、通常の管理行為・軽易な行為で環境省令で定めるもの、環境大臣がやむを得ない事由があると認めて許可した場合などです(19条3項各号)。行為の禁止に加えて人が入ること自体を止める仕組みなので、置けるのは最も厳しい原生自然環境保全地域の中に限られ、自然環境保全地域の中に置くのは特別地区や野生動植物保護地区です。指定や区域の拡張の前には、関係行政機関の長に協議します(43条1項)。
環境大臣は、その区域における自然環境が人の活動によつて影響を受けることなく原生の状態を維持しており、かつ、政令で定める面積以上の面積を有する土地の区域であつて、国又は地方公共団体が所有するもの(…保安林…の区域を除く。)のうち、当該自然環境を保全することが特に必要なものを原生自然環境保全地域として指定することができる。
出典: 自然環境保全法 14条1項
実務ではこう使う
国や地方公共団体の土地だけが対象なので、民有地の評価でこの地域そのものに出会うことはまずありません。隣り合う山林や別荘地の評価では、隣の自然が長く手つかずのまま保たれることを地域要因として見ます。実地調査のための立入りや保全事業の受益者負担は隣地にも及ぶことがあるので、役所で区域の境界を確かめ、評価書の行政的条件に隣接する保全地域の存在を書きます。
関連用語
短答式対策
肢別トレーニングで行政法規を攻略
過去問をベースにした一問一答形式のトレーニング。 行政法規の頻出論点を効率的に学べます。
年額プランなら1日わずか27円