保全事業とは?自然環境保全法での意味を図でわかりやすく解説
原生自然環境保全地域や自然環境保全地域に関する保全計画に基づいて執行する事業のうち、その地域の自然環境の保全のための施設で政令で定めるものに関する事業です。つまり、巡視歩道や標識、砂防施設など「守るための施設」をつくり管理する事業で、国が執行します。
保全事業とは
自然を守るには、行為を禁止するだけでなく、人が守る側の手を入れることも要ります。巡視のための歩道、立入りを知らせる標識、管理舎、荒れた植生を戻す施設、土砂を止める砂防施設などです。こうした「守るための施設」をつくり管理するのが保全事業で、国が執行し、地方公共団体は環境大臣に協議して一部を執行できます。自然公園法の公園事業が宿舎や道路など利用のための施設まで含むのに対し、保全事業は守るための施設に絞られています。

巡視歩道や管理舎など守るための施設をつくるのが保全事業。国が執行する。
保全事業は国が執行し、地方公共団体は協議して一部を執行します
16条1項と24条1項は、原生自然環境保全地域と自然環境保全地域の保全事業を国が執行すると定め、16条2項と24条2項は、地方公共団体が環境大臣に協議して保全事業の一部を執行できると定めています。地方公共団体に任せられるのは「一部」で、全部を引き受ける仕組みではありません。国の中でも、環境大臣以外の国の機関が保全事業を執行しようとするときは、環境大臣に協議しなければなりません(43条2項)。自然環境の保全は環境大臣の所管なので、他の省庁が施設を整備する場合も環境大臣を通す建て付けです。施設の中身は施行令2条・5条が定め、巡視歩道・管理舎・標識のほか、自然環境保全地域では排水施設、植生復元施設、砂防施設なども入ります。
受益者には、受益の限度で費用の一部を負担させられます
保全事業の費用は執行する者の負担が原則です(36条)。38条は、国又は地方公共団体は、保全事業の執行により著しく利益を受ける者がある場合には、その者に、その受益の限度において費用の一部を負担させることができると定めています。砂防施設で下流の農地が守られる農家のように、事業の恩恵が特定の人に集まるとき、税金だけで賄うのは公平でないからです。負担させるのは義務ではなく裁量で、範囲は受益の限度、対象は費用の一部に限られ、負担させようとするときはその者の意見を聴きます(施行令7条)。他の工事や行為が原因で保全事業が必要になったときは、その原因者に費用を負担させることもできます(37条)。

砂防で守られる下流の農地。受益の限度で費用の一部を負担。
実地調査の立入りは、日の出前と日没後は宅地などに入れません
31条1項は、環境大臣は地域の指定や拡張、保全計画、保全事業の執行に関し、環境大臣以外の国の機関や地方公共団体の長は保全事業の執行に関し、実地調査のため必要があるときは、職員に他人の土地に立ち入り、標識を設置し、測量し、障害となる木竹やかき・さくを伐採・除去させることができると定めています。あらかじめ土地の所有者や占有者などに通知して意見書を出す機会を与え(31条2項)、職員は身分証明書を携帯して提示します(31条4項)。日出前及び日没後は、宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入ってはなりません(31条3項)。人の暮らしの場に暗い時間帯に入ることは負担が大きいので、時間の制限が置かれています。所有者や占有者は正当な理由がない限り立入りを拒めず(31条5項)、立入りで損失を受けた者には通常生ずべき損失が補償されます(33条4項)。

日没後は、柵で囲われた土地や宅地に立ち入れない。
保全事業として行う行為には、地区の行為規制が掛かりません
原生自然環境保全地域の禁止(17条5項1号)、特別地区の許可(25条10項1号)、普通地区の届出(28条6項2号)は、いずれも保全事業の執行として行う行為には適用されません。野生動植物保護地区でも、保全事業を執行するためにする捕獲や採取は禁止の例外です(26条3項3号)。守るための事業なので、守るための規制の外に置かれています。
自然環境保全地域に関する保全事業(自然環境保全地域に関する保全計画に基づいて執行する事業であつて、当該地域における自然環境の保全のための施設で政令で定めるものに関するものをいう。以下同じ。)は、国が執行する。
出典: 自然環境保全法 24条1項
実務ではこう使う
自然環境保全地域に接する土地の評価では、砂防施設や植生復元などの保全事業で著しく利益を受けると費用負担を求められることがあるので、負担金の有無を役所で確認します。実地調査の立入りは所有者が拒めないので、対象地の利用に一時的な制約が生じることも書き添えます。
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