/ 鑑定理論

必要諸経費等とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等です。つまり、貸し続けるために貸主の手元から出ていくお金のことで、純賃料と合わせて実質賃料を形づくります。

必要諸経費等とは

家賃10万円のアパートでも、10万円がそのまま大家の儲けになるわけではありません。固定資産税や火災保険料を払い、廊下の電球を替え、壊れた給湯器を直し、空室の月や家賃を払ってくれない入居者の分も見込んでおく必要があります。こうした貸し続けるために出ていくお金が必要諸経費等で、貸主が受け取る賃料の全部(実質賃料)から差し引いた残りが大家の取り分である純賃料です。基準は、実質賃料をこの二つから成り立つものと定めています。

必要諸経費等の図解:家賃の一部は税金・保険・管理の支払いに出ていく。残りが純賃料。

家賃の一部は税金・保険・管理の支払いに出ていく。残りが純賃料。

実質賃料は、純賃料と必要諸経費等から成り立ちます

基準は実質賃料を、純賃料と、不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等から成り立つものと定めています。純賃料は貸主の元手に対する利益に当たる部分で、必要諸経費等は貸し続けるための支出に当たる部分です。積算法が、基礎価格に期待利回りを乗じた額に必要諸経費等を加算して積算賃料を求めるのは、この組み立てをそのまま計算式にしたものです。基礎価格に期待利回りを乗じた額が純賃料に当たると読めます。収益分析法も、収益純賃料に必要諸経費等を加算して収益賃料を求めます。

積算法では六つの必要諸経費等が掲げられています

基準が積算法の必要諸経費等として掲げるのは、減価償却費、維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)、公租公課(固定資産税、都市計画税等)、損害保険料(火災、機械、ボイラー等の各種保険)、貸倒れ準備費、空室等による損失相当額の六つです。建物の目減り、日々の手入れ、税金、保険、家賃の取りはぐれ、部屋が空く間の収入減、と並べると、どれも貸し続ける限り避けられない支出だと分かります。法人税や所得税は基準の列挙にありません。これらは貸主の所得に課される税で、不動産を貸し続けるための支出ではないと読めます。

必要諸経費等の図解:積算法の必要諸経費等は六つ。所得に課される税は入らない。

積算法の必要諸経費等は六つ。所得に課される税は入らない。

減価償却費は、期待利回りと二重にならないように扱います

六つのうち減価償却費だけには、償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合には計上しない、という但し書きが付いています。基準はこの但し書きだけを置いていますが、次のように読めます。償却前の純収益は減価償却費を引く前の額なので、それに対応する期待利回りで求めた純賃料には、建物の目減り分が既に入っています。そこへ必要諸経費等としてもう一度減価償却費を足すと、同じ費用を二度数えることになります。償却後の純収益に対応する期待利回りを用いるなら、純賃料に目減り分は入っていないので、減価償却費を計上します。

必要諸経費等の図解:償却前の期待利回りなら、減価償却費は既に純賃料に入っている。

償却前の期待利回りなら、減価償却費は既に純賃料に入っている。

収益還元法の総費用とは、列挙が違います

収益還元法で賃貸用不動産の純収益を求めるときの総費用は、減価償却費、維持管理費、公租公課、損害保険料等の諸経費等を加算して求めると定められ、貸倒れ準備費と空室等による損失相当額は並んでいません。積算法の必要諸経費等は六つ、総費用は四つに「等」が付く形で、同じ費用の話でも列挙が違います。基準は理由を書いていませんが、収益還元法は価格を求める手法で、総収益と総費用の両方を実態に合わせて査定するので、空室や貸倒れは総収益を見込む段階で織り込むと読めます。利回り法とスライド法の必要諸経費等は積算法に準じるので、六つの列挙がそのまま使えます。

実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等(以下「必要諸経費等」という。)から成り立つものである。

出典: 総論第7章 第2節

実務ではこう使う

家賃の評価書では、固定資産税・都市計画税の課税明細、火災保険の証券、管理委託契約と修繕の実績から必要諸経費等を一つずつ積み上げます。空室等による損失相当額と貸倒れ準備費は、周辺の空室率や敷金による担保の程度から見込みを査定し、敷金で十分に担保されていれば貸倒れ準備費を計上しない判断もあり得ます。期待利回りを償却前と償却後のどちらの純収益に対応させたかを明記し、減価償却費の計上の有無をそれにそろえます。

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