/ 行政法規

保安林とは?森林法での意味を図でわかりやすく解説

水源のかん養、土砂の流出の防備など森林法25条1項に掲げる11の目的を達成するため、農林水産大臣または都道府県知事が指定する森林です。指定されると立木の伐採や土地の形質の変更に都道府県知事の許可が要り(34条)、その代わりに指定で受ける損失は国または都道府県が補償します(35条)。

保安林とは

町の水道の水は、上流の山の森が雨を蓄えてゆっくり流すことで保たれています。斜面の木の根は土をつかんで、土砂崩れを止めています。その森を持ち主の都合だけで切ってしまうと、困るのは下流の町の人たちです。そこで森林法は、水源のかん養や土砂の流出の防備といった公の目的のために森林を保安林に指定し、伐採や開墾を都道府県知事の許可制にしました(25条・34条)。所有者は自由に切れなくなる代わりに、指定によって通常受けるべき損失を国または都道府県から補償されます(35条)。

保安林の図解:町の水と土を守る森だから、公の目的で指定して勝手に切らせない。

町の水と土を守る森だから、公の目的で指定して勝手に切らせない。

指定するのは農林水産大臣と知事で、市町村長は指定できません

農林水産大臣は、国有林と、重要流域内にある民有林(1号から3号までの目的に限る)を保安林に指定できます(25条1項)。重要流域とは、二以上の都府県の区域にわたる流域その他国土保全上または国民経済上特に重要な流域で農林水産大臣が指定するものです。都道府県知事は、重要流域以外の流域内の民有林を1号から3号までの目的で、また民有林を4号から11号までの目的で指定できます(25条の2第1項・2項)。県境を越えて流れる川の水源は一つの県では守りきれないので国が、県の中で収まる流域や地域的な目的は知事が受け持つ分担です。市町村長には指定の権限がなく、利害関係を有する地方公共団体の長として、指定や解除を書面で大臣や知事に申請できるにとどまります(27条)。森林所有者の同意は指定の要件ではなく、指定による損失は補償で埋め合わせます(35条)。

保安林の図解:県境をまたぐ流域は大臣、県の中の流域と地域的な目的は知事。

県境をまたぐ流域は大臣、県の中の流域と地域的な目的は知事。

目的は条文に11個並び、その中から選んで指定します

指定の目的は、水源のかん養、土砂の流出の防備、土砂の崩壊の防備、飛砂の防備、風害・水害・潮害・干害・雪害・霧害の防備、なだれ又は落石の危険の防止、火災の防備、魚つき、航行の目標の保存、公衆の保健、名所又は旧跡の風致の保存の11個です(25条1項各号)。条文に理由は書いていませんが、保安林は所有者の権利を強く制限する制度なので、目的をこの11個に限って、それ以外の理由による指定を防いでいると考えられます。生物多様性の保全や景観の保全は、大切な目的ではあっても、この列挙には入っていません。公衆の保健と名所又は旧跡の風致の保存の目的で指定するときは、環境大臣に協議します(25条3項)。

大臣は先に知事へ通知し、知事が告示と所有者への通知をします

農林水産大臣は、保安林の指定や解除をしようとするときは、あらかじめその旨と、保安林予定森林の所在場所、指定の目的、指定後の指定施業要件を、その森林の所在地を管轄する都道府県知事に通知しなければなりません(29条)。通知を受けた知事は、遅滞なくその内容を告示し、森林の所在する市町村の事務所に掲示し、森林所有者と登記した権利を有する者に通知します(30条)。国が決める指定でも、地元の所有者に知らせる仕事は現地に近い知事が担う二段の流れです。知事は告示のあった保安林予定森林について、90日を超えない期間内で伐採や土地の形質の変更を禁止することができます(31条)。指定や解除をしたときは大臣が告示して関係知事に通知し(33条1項)、保安林台帳は知事が調製して保管し、閲覧を求められたら正当な理由がなければ拒めません(39条の2)。

保安林の図解:大臣から知事へ、知事から掲示と所有者へ。知らせる仕事は現地に近い知事。

大臣から知事へ、知事から掲示と所有者へ。知らせる仕事は現地に近い知事。

保安林の中では、知事の許可なしに伐採も開墾もできません

保安林では、都道府県知事の許可を受けなければ立木を伐採できず(34条1項)、立竹の伐採、家畜の放牧、下草や落葉の採取、土石や樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為にも許可が要ります(34条2項)。申請された伐採の方法が指定施業要件に適合し、伐採の限度を超えないときは、知事は許可しなければなりません(34条3項)。指定施業要件とは、立木の伐採の方法と限度、伐採した跡地に行う植栽の方法・期間・樹種のことで(33条1項)、保安林ごとに指定のときに定まります。許可を出すのは知事だけで、市町村長は関わりません。

農林水産大臣は、次の各号(指定しようとする森林が民有林である場合にあつては、第一号から第三号まで)に掲げる目的を達成するため必要があるときは、森林(民有林にあつては、重要流域(二以上の都府県の区域にわたる流域その他の国土保全上又は国民経済上特に重要な流域で農林水産大臣が指定するものをいう。以下同じ。)内に存するものに限る。)を保安林として指定することができる。…

出典: 森林法 25条1項

実務ではこう使う

保安林かどうかは登記簿の地目では分からないので、都道府県の保安林台帳や林務担当で確かめます。指定を解除しない限り宅地への転用はできず、伐採にも知事の許可が要るため、林地としての価格が前提になります。評価書では法令上の制限として、指定の有無と目的、指定施業要件を記載します。

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