/ 鑑定理論

償却前の純収益とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

総費用に減価償却費を計上せずに求めた純収益です。建物その他の償却資産(建物等)を含む不動産の純収益は基本的にこれを用い、償却前の純収益に対応する還元利回りで還元します。

償却前の純収益とは

築20年の賃貸マンションは、年々古くなって値打ちが減っていきます。会計ではその減る分を減価償却費として毎年の費用に数えますが、実際に現金が出ていくわけではありません。鑑定評価では、この帳簿上の費用を引く前の純収益、つまり家賃から維持管理費や公租公課など実際に出ていくお金だけを引いた残りを基本に使います。これが償却前の純収益で、建物が古くなる分は、費用ではなく利回りや復帰価格の側で織り込みます。

償却前の純収益の図解:現金が出ていかない減価償却費は引かずに、純収益を求める。

現金が出ていかない減価償却費は引かずに、純収益を求める。

純収益と還元利回りは、償却前どうし、償却後どうしで揃えます

直接還元法は純収益を還元利回りで割って価格にするので、分子と分母の取り方が食い違うと価格がずれます。留意事項は、建物等を含む不動産では基本的に償却前の純収益を用い、それに対応した還元利回りで還元すると定め、償却後の純収益を用いる場合には還元利回りも償却後に対応するものを用いなければならないとしています。取引事例から利回りを求めるときも、その取引利回りが償却前後どちらの純収益に対応するものかに留意します。積算法で償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合も、必要諸経費等に減価償却費を計上しません。

償却前の純収益の図解:分子の純収益と分母の還元利回りは、償却前後を揃える。

分子の純収益と分母の還元利回りは、償却前後を揃える。

DCF法では、建物等の償却を復帰価格において考慮します

DCF法でも毎期の純収益は基本的に償却前で求めます。建物が古くなる分は、保有期間の満了時点に売る価格である復帰価格がその分だけ低くなることで織り込まれます。留意事項は「建物等の償却については復帰価格において考慮される」と定めており、割引率で考慮するのではありません。

償却前の純収益の図解:古くなる分は売るときの値段に出るから、DCF法では復帰価格で考慮する。

古くなる分は売るときの値段に出るから、DCF法では復帰価格で考慮する。

総論は「基本的に」償却前とし、償却後を用いる場合もあります

総論の留意事項は「基本的に」償却前の純収益を用いると書いており、償却後の純収益と償却後に対応する還元利回りの組合せも認めています。減価償却費の算定には定額法や償還基金率を用いる方法があります。証券化対象不動産の鑑定評価では、各論第3章の留意事項が純収益を償却前のものとして求めることとしているので、その場合は減価償却費を計上しません。

また、建物その他の償却資産(以下「建物等」という。)を含む不動産の純収益の算定においては、基本的に減価償却費を控除しない償却前の純収益を用いるべきであり、それに対応した還元利回りで還元する必要がある。

出典: 総論第7章 第1節

実務ではこう使う

実務の収益価格は、ほぼすべて償却前の純収益と償却前に対応する還元利回りの組合せで求めます。取引利回りの資料を使うときは、その利回りが減価償却費を引く前の純収益で計算されたものかを必ず確かめ、評価書にも償却前である旨を書きます。

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