/ 鑑定理論

収益逓増及び逓減の原則とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

ある単位投資額を継続的に増加させると総収益は増加するが、増加させる単位投資額に対応する収益は、ある点までは増加し、その後は減少するという原則です。つまり、投資を足すほど全体の収益は増えても、追加した一単位が生む収益はどこかで頭打ちになり、やがて減っていきます。

収益逓増及び逓減の原則とは

賃貸マンションを建てるとき、階を一つ増やせば家賃収入の合計は増えます。ただ、二階建てを三階建てにしたときに増える家賃と、九階建てを十階建てにしたときに増える家賃は同じではありません。建築費はかさみ、部屋が増えれば空室も出て、追加した一階分が生む収益はある点を境に減っていきます。合計(総収益)は増え続けても、追加の一単位に対応する収益は逓増から逓減に転じる、というのがこの原則です。基準は、不動産に対する追加投資の場合についても同様だと述べています。

収益逓増及び逓減の原則の図解:階を増やすほど家賃の合計は増えるが、追加した一階分の収益はある点から減る。

階を増やすほど家賃の合計は増えるが、追加した一階分の収益はある点から減る。

増え続けるのは総収益、ある点から減るのは追加一単位の収益です

この原則は、二つの数字を別々に見ます。一つは投資全体から生まれる総収益で、投資を足す限り増え続けます。もう一つは、追加した単位投資額に対応する収益で、ある点までは増え、その後は減ります。合計が増えているからといって追加投資が得とは限らず、追加の一単位が生む収益が減り始めたら投資の効率は落ちています。基準の語は総収益で、費用を引く前の収益の合計を指し、費用を引いた後の純収益とは別の語です。

収益逓増及び逓減の原則の図解:帳簿の合計は増え続けても、追加一単位の収益はある点から減る。

帳簿の合計は増え続けても、追加一単位の収益はある点から減る。

投資を増やす場面の原則で、減らす場面は定めていません

基準が述べるのは、投資額を継続的に増やしていったときの収益の動きだけです。不動産では、建物を建てた後に増築や設備の更新といった追加投資をするかどうかを決める場面が多く、そこで「もう一単位足したらいくら増えるか」を見るための原則だからです。投資を減らしたときに総収益がどうなるかは、この原則の内容ではありません。増やす側の原則だと分かっていれば、追加投資の適否の判定に有用だという寄与の原則とのつながりも見えてきます。

追加投資をどこで止めるかの指針になります

基準は追加投資にも同様に当てはまるとだけ書いていますが、実務ではこう使います。更地にどんな規模の建物を建てるのが最有効使用かを判定するとき、いくつもの規模を想定し、階を一つ増やすたびに、追加した一階分が生む収益と、その一階分にかかる費用を並べて見ていきます。追加した一階分の収益は減り始めてもしばらくは費用を上回りますが、やがて費用を下回る点が来ます。その手前までが、投資を増やす意味のある規模です。寄与の原則が不動産のある部分の寄与の度合いを見るのに対し、この原則は投資を積み増していく過程全体の動きを見ます。

収益逓増及び逓減の原則の図解:追加した一階分の収益が費用を下回る手前が、投資を止める規模。

追加した一階分の収益が費用を下回る手前が、投資を止める規模。

ある単位投資額を継続的に増加させると、これに伴って総収益は増加する。しかし、増加させる単位投資額に対応する収益は、ある点までは増加するが、その後は減少する。

出典: 総論第4章 第6節

実務ではこう使う

賃貸ビルの増床やホテルの客室追加を検討する依頼では、一室増やすごとに増える収益と費用を並べ、どこまで投資すれば収益が最大になるかを見ます。増やしすぎて空室が出れば、追加した一室の収益は費用を下回ります。評価書では、想定した規模まで追加した一室分の収益が費用を上回っていることを、最有効使用の判定理由として書きます。

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