/ 不動産鑑定の基礎知識

不動産鑑定の有効期限は?評価書の使える期間と注意点

不動産鑑定評価書の有効期限について徹底解説。法律上の有効期限の有無、実務で使える期間の目安、価格時点の意味、評価書の更新が必要なケースや再鑑定のタイミングまで、初めての方にもわかりやすく説明します。

はじめに

不動産鑑定評価書を取得した方から、「この評価書はいつまで使えますか?」という質問をいただくことがよくあります。決して安くない費用をかけて取得した鑑定評価書ですから、「できるだけ長く使いたい」と考えるのは当然のことです。

結論から言えば、不動産鑑定評価書には法律上の「有効期限」は定められていません。しかし、不動産の価格は常に変動するものですから、時間が経てば経つほど評価書に記載された金額と実際の市場価値との間にずれが生じてきます。「有効期限がない」ことと「いつまでも有効である」ことは、まったく別の話なのです。

本記事では、鑑定評価書の「有効期限」に関する正しい知識と、実務上どのくらいの期間まで使えるのか、どんなときに再鑑定が必要になるのかについて、わかりやすく解説します。さらに「価格時点」という鑑定評価の根幹をなす概念を掘り下げ、相続税・裁判・金融機関・会計など場面ごとの扱いの違い、再鑑定や時点修正のコストを抑える工夫、そして「不動産鑑定 有効期限」「鑑定評価書 期間」「価格時点 有効期限」といった疑問に正面から答えます。


法律上の有効期限はない

鑑定評価基準の規定

不動産鑑定評価基準や不動産の鑑定評価に関する法律には、鑑定評価書の有効期限に関する規定は存在しません。つまり、法的には「この評価書は〇年で無効になる」というルールはないのです。

ただし、鑑定評価基準では「価格時点」という重要な概念が定められています。

不動産の鑑定評価によって求める価格又は賃料は、鑑定評価の基本的事項として確定された対象不動産についてのものであるとともに、鑑定評価を行った年月日についてのものである。この年月日を価格時点という。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章

つまり、鑑定評価書に記載された価格は「価格時点(評価を行った特定の日)」における価格であって、それ以降の日付については保証していないということです。

「有効期限がない」ことの意味

有効期限がないということは、「いつまでも使える」という意味ではありません。反対に、「いつ時点の評価なのかを自分で判断して使う必要がある」ということです。鑑定評価書の利用者側に、適切な判断が求められるのです。

言い換えれば、有効期限の判断責任は「制度」ではなく「利用者」にあります。たとえば賞味期限であれば、製造者がパッケージに日付を印字し、消費者はそれを見て判断できます。しかし鑑定評価書には、そうした「期限の印字」が制度として存在しません。代わりに「価格時点」という1点の日付が記され、その日からどれだけ時間が経ち、どれだけ市場や対象不動産が変化したかを、利用者・提出先・裁判所などが個別に評価することになります。

「鑑定評価」と「価格調査」は別物

近年は、正式な鑑定評価ではなく「価格調査」「価格意見」といった簡易な調査を依頼するケースも増えています。両者は成果物としての性格が異なり、有効性の考え方や使える場面も変わります。

区分性格主な使い道価格時点の扱い
鑑定評価書不動産鑑定士による正式な鑑定評価。基準に準拠裁判・税務・公的提出など対外的に強い証拠力が必要な場面価格時点が明記され、責任の所在が明確
価格調査・価格意見書鑑定評価に該当しない簡易な調査・意見社内検討・参考・初期的な目安調査時点は示されるが、証拠力は鑑定評価書に劣る

公的な場面で「有効性」が問われるのは基本的に正式な鑑定評価書です。簡易な調査は、価格時点が新しくても証拠力そのものが弱い点に注意してください。鑑定評価が必要かどうか迷う場合は、鑑定が必要になる5つのケースも参考になります。


実務上の有効期間の目安

法律上の有効期限はないものの、実務上は「この期間内であれば使えるだろう」という目安があります。

場面別の有効期間の目安

使用場面実務上の目安根拠・理由
裁判所への証拠提出価格時点から1年以内裁判所が時点の近さを重視する傾向
相続税の申告相続開始日に近い価格時点税務上は相続開始日の時価が基準
金融機関への担保評価3か月〜1年金融機関が独自に期限を設定
売買の参考資料3か月〜6か月市場変動リスクを考慮
会計上の時価評価決算日に近い価格時点会計基準が決算日時点の時価を要求
公共事業の用地取得契約時に近い価格時点用地取得基準に基づく

なぜ「3か月〜1年」が目安になるのか

実務でよく語られる「3か月〜1年」という幅には、いくつかの理由があります。

  • 公的指標の更新サイクル: 地価公示は毎年1月1日時点、都道府県地価調査(基準地価)は毎年7月1日時点、相続税路線価は毎年1月1日時点と、不動産価格の代表的な公的指標は概ね半年〜1年単位で更新されます。鑑定評価もこれらを重要な資料とするため、1年を超えると参照指標が一巡し、評価の前提が古くなりやすいとされます。
  • 市場サイクルの体感: 取引事例や賃料水準が体感できるほど動くのに、平時で半年〜1年程度かかることが多いと言われます。逆に言えば、半年以内であれば「大きくは動いていないだろう」と推定しやすい、という実務感覚です。
  • 提出先の慣行: 後述する金融機関や裁判所など、提出先側が「○か月以内」という運用を持っていることが多く、その最大公約数として3か月〜1年に収れんします。

ただしこれはあくまで「平時の目安」です。市場が急変した局面では、3か月前の評価でも実態と乖離しうる点に注意してください。

金融機関のルール

金融機関は、融資の担保評価に鑑定評価書を利用する場合、独自に有効期間を設定していることがあります。たとえば、「価格時点から6か月以内の鑑定評価書に限る」「1年以内のものであること」といったルールです。融資に使う場合は、事前に金融機関に確認しておきましょう。

金融機関が期間に厳格なのは、担保価値が融資の保全に直結するためです。価格時点が古い評価書は、担保割れのリスクを正しく反映できないおそれがあるため、保守的に短い有効期間を設けたり、追加で内部評価を併用したりするのが一般的です。

不動産投資ファンドの場合

不動産投資ファンドやREIT(不動産投資信託)では、保有物件の鑑定評価を毎年(半年ごとに行う場合もあり)更新することが法令で義務付けられています。これは投資家に対して最新の時価情報を開示する必要があるためです。

REITの場合、決算期ごとに保有不動産の鑑定評価額を開示し、簿価との差や含み損益を投資家に示すことが求められます。つまりREITの世界では「鑑定評価書は決算のたびに更新するもの」という前提で運用されており、有効期間という概念以前に、定期更新が制度として組み込まれているわけです。


「価格時点」を正しく理解する

鑑定評価書の有効性を判断するうえで、最も重要な概念が「価格時点」です。「価格時点 有効期限」という検索が多いのも、結局は「いつの価格なのか」が有効性の核心だからです。

価格時点とは

価格時点とは、鑑定評価額が「いつの時点の価格なのか」を示す日付です。鑑定評価書には必ず価格時点が明記されており、たとえば「価格時点: 令和7年1月15日」と記載されていれば、その評価額は令和7年1月15日時点における適正な価格であることを意味します。

価格時点の3類型(現在・過去・将来)

価格時点は必ずしも「現在」とは限りません。鑑定評価基準では、価格時点を求める時点との関係で次の3つに整理しています。

価格時点は、鑑定評価を行った年月日を基準として、現在の場合(現在時点)、過去の場合(過去時点)及び将来の場合(将来時点)に分けられる。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章
類型内容典型例
現在時点評価作業の時点と価格時点がほぼ一致通常の売買検討・担保評価
過去時点過去のある日を価格時点とする相続開始日の評価、係争時点の評価
将来時点将来のある日を価格時点とする開発完了後の想定価格など(資料の信頼性に限界があり慎重な扱いが必要)

「過去時点」の評価は、相続や裁判で頻繁に登場します。亡くなった日や別居した日といった「過ぎ去った1日」の価格を、後から復元的に求めるわけです。

価格時点が重要な理由

不動産の価格は、以下のような要因によって日々変動しています。

  • 経済情勢の変化: 景気の回復・後退、金利の変動
  • 不動産市場の動向: 需要と供給のバランスの変化
  • 周辺環境の変化: 新駅の開業、大型商業施設のオープン、嫌悪施設の建設
  • 法規制の変更: 用途地域の変更、建ぺい率・容積率の見直し
  • 災害の発生: 地震、台風、洪水などによる被害

これらの変化が起これば、同じ不動産でも価格が大きく変わる可能性があります。そのため、「いつ時点の価格なのか」が極めて重要になるのです。

価格時点と鑑定評価書の作成日は違う

鑑定評価書の「作成日(交付日)」と「価格時点」は異なることがあります。たとえば、相続の案件では、被相続人が亡くなった日(相続開始日)を価格時点とする鑑定評価を、亡くなった後に依頼することがあります。この場合、価格時点は過去の日付になりますが、鑑定評価書の作成日は現在の日付です。

混乱を避けるため、鑑定評価書を受け取ったら次の3つの日付を必ず区別して確認しましょう。

日付の種類意味有効性判断での役割
価格時点評価額が示す「いつの価格か」最重要。提出先が求める時点と一致しているか
鑑定評価を行った年月日(調査時点)実際に調査・分析を行った時期過去時点評価で資料がどこまで遡れたかの目安
作成日・交付日評価書が完成・交付された日書類としての発行時期。提出時期の管理に使う

「価格時点 有効期限」を考えるときに見るべきは、原則として一番上の「価格時点」です。作成日が新しくても、価格時点が古ければ評価としては古い、という点を取り違えないようにしましょう。鑑定評価書のどこに何が書かれているかは鑑定評価書の読み方で詳しく解説しています。


鑑定評価書の更新が必要になるケース

以下のようなケースでは、既存の鑑定評価書を使い続けるのではなく、新たに鑑定評価を取得する(再鑑定する)ことを検討すべきです。

ケース1: 市場が大きく変動した

不動産市場が急激に変動した場合、たとえ数か月前の鑑定評価書であっても、実態と大きく乖離している可能性があります。たとえば、近年では新型コロナウイルスの影響でオフィス需要が変化したケースや、金利上昇が住宅価格に影響を与えたケースなどがあります。

市場変動の「大きさ」を自分で測るのは難しいものですが、地価公示・基準地価・地価LOOKレポート(主要地区の四半期動向)など公的な指標を確認すると、対象エリアがどの程度動いているかの目安になります。指標が短期間で大きく動いている局面では、価格時点が新しくても更新を検討する価値があります。

ケース2: 対象不動産に変化があった

鑑定評価後に、対象不動産そのものに以下のような変化があった場合は、再鑑定が必要です。

  • 増改築やリフォームを行った
  • 建物の一部が毀損した(災害、事故など)
  • テナントが入れ替わった(投資用不動産の場合)
  • 隣接地との境界確定が行われた
  • 土壌汚染が判明した

これらは「対象確定条件」や評価の前提そのものが変わるケースです。市場の変動なら時点修正で対応できることもありますが、対象不動産自体が変わった場合は、原則として新たな鑑定評価が必要になります。

ケース3: 周辺環境が大きく変わった

対象不動産の周辺に大きな変化があった場合も、評価額に影響が出ます。

  • 新しい鉄道駅や道路が開通した
  • 大規模商業施設がオープンした
  • 嫌悪施設(騒音源、悪臭源など)が建設された
  • 都市計画の変更があった(用途地域の変更など)

ケース4: 提出先から新しい評価を求められた

裁判所、金融機関、税務署などに鑑定評価書を提出する場合、提出先から「最新の鑑定評価書を提出してください」と求められることがあります。この場合は、相手方の要求に応じて再鑑定を行う必要があります。

更新要否のセルフチェック

迷ったときは、次のチェックリストで「更新を検討すべきか」を整理してみてください。

  • 価格時点から1年以上経過していないか
  • 対象不動産に物理的・権利的な変化はなかったか
  • 周辺環境に大きな変化はなかったか
  • 市場(公的指標)が短期間で大きく動いていないか
  • 提出先が独自の有効期間ルールを持っていないか

1つでも当てはまれば、鑑定士や提出先に相談する価値があります。


相続税申告における鑑定評価書の時期

相続税の申告で鑑定評価を利用する場合、価格時点のタイミングが特に重要です。

基本的な考え方

相続税の課税対象となる不動産の価額は、原則として「相続開始日(被相続人が亡くなった日)における時価」で評価します。したがって、鑑定評価書の価格時点も相続開始日に設定するのが基本です。

路線価評価との関係

通常、相続税の申告では路線価を使って不動産の価値を算出します。しかし、路線価による評価が実態と大きくかけ離れている場合には、鑑定評価書を証拠として提出し、路線価に代えて鑑定評価額で申告することが認められています。

この場合、鑑定評価書の価格時点が相続開始日とずれていると、税務署から「この鑑定評価は相続開始日時点の価格を反映していない」として否認されるリスクがあります。相続で鑑定が必要なケースも確認しておくとよいでしょう。

申告期限との関係

相続税の申告期限は、相続開始日から10か月以内です。鑑定評価に2〜4週間かかることを考慮すると、早めに鑑定士に依頼することが大切です。申告期限ぎりぎりになってから「鑑定評価が必要だった」と気づくと、間に合わない可能性があります。

相続スケジュールと価格時点の関係(イメージ)

相続税申告では、「価格時点=相続開始日(過去)」「作成日=依頼後(現在)」「提出=申告期限まで」という時間軸を押さえると整理しやすくなります。

タイミング主な出来事価格時点との関係
相続開始日被相続人が死亡この日が価格時点になる
開始後すぐ〜数か月遺産整理、鑑定の必要性検討早期に鑑定士へ相談
申告期限の2〜3か月前まで鑑定士へ依頼・調査過去時点(相続開始日)で評価
申告期限(10か月以内)申告書とともに評価書を提出作成日は現在でも価格時点は相続開始日

ポイントは、相続税の鑑定はほぼ必ず「過去時点評価」になることです。依頼が遅れても価格時点は相続開始日に固定されますが、調査資料の入手や分析に時間がかかるため、依頼が遅れるほど申告期限に間に合わないリスクが高まります。


裁判における鑑定評価書の有効性

裁判で鑑定評価書を証拠として提出する場合の注意点です。

裁判所は「価格時点の近さ」を重視する

不動産に関する訴訟では、争点となる時点にできるだけ近い価格時点の鑑定評価書が求められます。たとえば、離婚に伴う財産分与で「別居時の不動産の価値」が争われている場合、別居した日に近い価格時点の鑑定評価書が説得力を持ちます。

争点ごとに「合わせるべき価格時点」が違う

裁判では、何が争われているかによって、価格時点をどこに合わせるべきかが変わります。

争いの類型合わせるべき価格時点の例
離婚・財産分与別居時点または基準時とされる時点
遺産分割遺産分割時または相続開始時(争点による)
共有物分割・代償金分割・清算の基準とされる時点
立退き・賃料増減額賃料改定の効力発生時点など
損害賠償損害発生時点

「とりあえず現在の価格で」と評価を取ってしまうと、争点の時点とずれて証拠としての価値が下がることがあります。依頼前に、弁護士・鑑定士と「どの日を価格時点にするか」を必ず擦り合わせましょう。

古い鑑定評価書の証拠力

訴訟が長期化すると、当初提出した鑑定評価書の価格時点から数年が経過していることもあります。そのような場合、裁判所が最新の鑑定評価を命じることがあります。鑑定評価書の読み方を理解しておくと、裁判での活用もスムーズになるでしょう。

双方が別々の鑑定評価書を提出するケース

裁判では、原告と被告がそれぞれ異なる鑑定士に依頼した鑑定評価書を提出することがよくあります。このとき、両方の鑑定評価書の価格時点が同じであることが望ましいとされています。価格時点がずれていると、金額差が「市場の変動によるもの」なのか「評価手法の違いによるもの」なのか切り分けられず、争点が不必要に複雑になるためです。


会計・公共用地など他の場面での扱い

相続・裁判・金融機関以外にも、鑑定評価書の「時点」がシビアに問われる場面があります。

会計上の時価評価

賃貸等不動産の時価開示や減損会計などでは、決算日時点の時価が必要になります。会計の世界では「決算日に近い価格時点」が要求されるため、決算期に合わせて評価を取得・更新するのが基本です。前期に取得した評価書をそのまま当期の決算に流用することは、原則として想定されていません。

公共事業の用地取得

公共事業で用地を取得する場合、補償の基礎となる価格は契約時点に近い価格時点で求められます。事業の進行に時間がかかると、当初の評価から時点修正や再評価が必要になることがあります。

固定資産の現物出資・組織再編

会社への現物出資や合併・会社分割などでも、基準日時点の時価評価が求められます。手続のスケジュールが動くと基準日も動くため、価格時点を手続日程に合わせて設定する必要があります。

いずれの場面でも共通するのは、「制度や手続が要求する基準日」に価格時点を合わせるという発想です。鑑定評価書の有効性は、暦の上での経過日数だけでなく、「目的の基準日と一致しているか」で判断される、と理解しておくと迷いにくくなります。


鑑定評価書を長く活用するためのポイント

鑑定評価書の実質的な有効期間をできるだけ延ばすために、以下のポイントを意識しましょう。

利用目的を明確にしてから依頼する

「なんとなく知りたい」ではなく、「〇月までに裁判所に提出する」「来年の相続税申告で使う」など、利用目的と時期を明確にしたうえで依頼しましょう。目的に合った価格時点を設定することで、必要な場面で確実に使える鑑定評価書になります。

複数の目的で使う場合は事前に相談する

同じ不動産について、相続税の申告と遺産分割の調停の両方で鑑定評価書を使いたい場合、それぞれの目的に合った価格時点が必要になることがあります。事前に鑑定士に相談すれば、効率的な対応を提案してもらえるでしょう。

保管は大切に

鑑定評価書は再発行ができない場合もあるため、大切に保管してください。原本はファイリングして保管し、コピーを使用するのが望ましいです。電子データ(PDFなど)で提供してもらえる場合は、紙とデジタルの両方を保存しておくと安心です。

提出時期から逆算してスケジュールを組む

有効性を保つ最大のコツは、「提出のタイミングから逆算する」ことです。たとえば申告期限や裁判期日が決まっているなら、その直前に近い価格時点で評価が完成するよう、調査・分析の所要期間(通常2〜4週間程度)を見込んで早めに着手します。価格時点を新しく保てれば、それだけ「古さ」を理由に証拠力を疑われるリスクを下げられます。


再鑑定の費用を抑える方法

鑑定評価書の価格時点が古くなって再鑑定が必要になった場合、以下の方法で費用を抑えられる可能性があります。

方法内容節約効果
同じ鑑定士に依頼する前回の調査データを活用できるため作業効率が上がる中〜大
簡易な時点修正で対応する正式な再鑑定ではなく、前回評価の「時点修正」で済む場合がある
意見書で代替する正式な鑑定評価書ではなく価格意見書で足りる場合がある
資料を事前にそろえておく鑑定士の調査時間を短縮できる小〜中

とくに「時点修正」は、前回の鑑定から対象不動産や周辺環境に大きな変化がない場合に利用できる方法で、費用を大幅に抑えられます。詳しくは鑑定士に相談してみてください。費用の目安については鑑定費用の相場を参照ください。

「時点修正」とは何か

時点修正とは、ある時点の価格を、地価変動率などの指標を使って別の時点の価格に置き換える調整のことです。たとえば、過去の取引事例を価格時点に合わせる際に、

$$P_{\text{価格時点}} = P_{\text{事例時点}} \times (1 + r)$$

のように、変動率 $r$ を乗じて調整します($r$ は対象期間の地価変動率の目安)。鑑定評価そのものの内部でも日常的に使われる手法ですが、「前回評価から短期間しか経っておらず、対象や周辺に大きな変化がない」場合には、新規の鑑定をやり直すより軽い負担で時点のずれを補正できることがあります。

ただし注意点があります。時点修正はあくまで「大きな変化がないこと」が前提です。対象不動産や周辺環境、市場構造そのものが変わってしまった場合は、変動率を掛けるだけでは適正な価格にならないため、正式な再鑑定が必要になります。どこまで時点修正で足りるかは、最終的に鑑定士の判断になります。


試験対策のポイント(価格時点と確定)

ここからは、不動産鑑定士試験の学習者向けに、価格時点に関する出題ポイントを補足します。実務で「有効期限」を考える土台にもなる論点です。

価格時点は「対象確定」の一要素

鑑定評価基準では、鑑定評価の基本的事項として「対象不動産の確定」「価格時点の確定」「価格又は賃料の種類の確定」を求めています。

不動産の鑑定評価を行うに当たっては、基本的事項として、対象不動産、価格時点及び価格又は賃料の種類を確定しなければならない。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章

「有効期限」という語は基準に出てきませんが、その代わりに「価格時点の確定」が置かれています。本記事のテーマである有効性は、結局この「いつの価格か」という確定事項に帰着する、という構造を押さえておきましょう。

暗記のコツ:日付は3つに分けて覚える

学習でも実務でも混同しやすいのが日付です。次の3点セットで整理すると混乱しません。

  • 価格時点=価格が示す「いつ」(現在・過去・将来の3類型)
  • 鑑定評価を行った年月日(調査時点)=作業を行った時期
  • 作成日・交付日=評価書という書類ができた日

「価格時点と作成日は一致するとは限らない」は、本記事末尾のクイズにもなっている典型論点です。過去時点評価(相続・係争)を例に、価格時点が作成日より前になる流れをイメージで覚えておくと得点しやすくなります。

将来時点評価は慎重に

将来時点を価格時点とする評価は、将来の資料を前提にする以上、信頼性に限界があります。基準上も限定的な扱いで、原則は現在時点・過去時点が中心になる、という温度感を理解しておきましょう。


よくある質問

3年前の鑑定評価書を裁判で使うことはできますか?

法的には使用を禁じる規定はありませんが、裁判所がどのように評価するかは別の問題です。3年の間に不動産市場が大きく変動している場合、裁判所が「この評価書の信頼性は低い」と判断する可能性があります。争点の時期に近い価格時点の鑑定評価書を改めて取得することをお勧めします。

鑑定評価書に「有効期限1年」と書いてあることがありますが?

一部の鑑定士が、自主的に「本評価書は価格時点から1年を目安にご利用ください」と付記することがあります。これは法律上の義務ではなく、利用者への注意喚起として記載されているものです。

同じ不動産を何度も鑑定してもらうことはできますか?

はい、可能です。価格時点が異なれば、同じ不動産に対して何度でも鑑定評価を行うことができます。たとえば、毎年の決算期に保有不動産の鑑定評価を取得している企業は多数あります。

価格時点を過去の日付にしてもらうことはできますか?

できます。相続開始日や別居時点など、過ぎ去った特定の日を価格時点とする「過去時点評価」は、相続税や裁判の場面でよく使われます。ただし、過去の資料(当時の取引事例や地価動向など)に基づいて評価する必要があるため、あまりに古い時点や資料が乏しい時点は精度に限界が出ることがあります。

価格時点が古くなったら、評価額に「補正」をかけて使えますか?

軽微な期間の経過で、対象不動産や周辺環境に大きな変化がない場合には、「時点修正」で対応できることがあります。一方、対象不動産自体が変わった、市場が大きく動いた、といった場合は補正だけでは足りず、新たな鑑定評価が必要です。最終的に時点修正で足りるかは鑑定士の判断になります。

「鑑定評価書」と「価格調査・意見書」は有効性の考え方が違いますか?

はい。正式な鑑定評価書は基準に準拠し証拠力が強い一方、価格調査や意見書は簡易な性格で、たとえ調査時点が新しくても対外的な証拠力は鑑定評価書に劣ります。裁判・税務など公的な場面では、原則として正式な鑑定評価書を用います。


まとめ

不動産鑑定評価書に法律上の有効期限はありませんが、記載されている価格は「価格時点」という特定の日における適正価格です。時間の経過とともに、その価格と実際の市場価値との間にずれが生じるため、実務上は3か月〜1年程度を目安に有効性を判断するのが一般的です。

重要なのは、有効性が「暦の上の経過日数」だけで決まるわけではない、という点です。対象不動産の変化、周辺環境の変化、市場の急変、そして「提出先が求める基準日と価格時点が一致しているか」という観点が、評価書を今使えるかどうかを左右します。とくに相続税の申告、裁判への証拠提出、金融機関への担保評価、会計上の時価評価など、公的な場面で使用する場合は、価格時点のタイミングが極めて重要になります。利用目的と提出時期を明確にしたうえで、適切な価格時点を設定して鑑定評価を依頼しましょう。

鑑定評価書が必要な場面かどうか迷ったら、まずは鑑定が必要になる5つのケースを確認してみてください。鑑定評価の全体的な流れは不動産鑑定の流れで、評価書の読み方は鑑定評価書の読み方で解説しています。

確認問題

不動産鑑定評価書には、法律で定められた有効期限がある。

確認問題

鑑定評価書に記載される「価格時点」とは、鑑定評価額がいつの時点の価格であるかを示す日付のことである。

確認問題

鑑定評価書の「作成日(交付日)」と「価格時点」は必ず同じ日付である。

確認問題

不動産投資ファンドやREITでは、保有物件の鑑定評価を定期的に更新することが法令で義務付けられている。

確認問題

前回の鑑定から対象不動産や周辺環境に大きな変化がない場合でも、価格時点を新しくするには必ず一から再鑑定をやり直さなければならない。

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