不動産鑑定士試験の免除制度とは?短答式免除・論文式の科目免除の条件を整理
不動産鑑定士試験の免除制度を2系統に分けて整理します。短答式試験の合格者がその後2年間は短答式を免除され論文式から受験できる仕組みと、司法試験合格者・公認会計士試験合格者・大学教員などが受けられる論文式の科目免除の条件、免除の申請手続きと必要書類、免除を前提にした学習計画の組み替え方まで解説します。
「不動産鑑定士 免除」で検索してこのページにたどり着いた方の多くは、次のどちらかを知りたいはずです。ひとつは「短答式に受かったら、来年は短答式を受けなくていいと聞いたが本当か」。もうひとつは「司法試験や公認会計士試験に受かっているが、鑑定士試験でも一部の科目が免除されるのか」。
この2つはまったく別の制度です。前者は短答式試験そのものの免除、後者は論文式試験の一部科目の免除であり、対象者も、免除される範囲も、必要な書類も違います。ところが検索して出てくる情報は両者が混ざっていることが多く、「自分はどちらに当てはまるのか」がわからないまま出願期限が来てしまう人が少なくありません。
この記事では、不動産鑑定士試験の免除制度を2系統に分けて整理し、それぞれの条件・期間・申請方法を解説します。そのうえで、免除を使える人が学習計画をどう組み替えるべきか、他資格からの転向組がどこに時間を投下すべきかまで踏み込みます。制度の細目は年度ごとの受験案内で確定するため、最終確認は必ず国土交通省の公式資料で行ってください。
本記事の役割
本記事は不動産鑑定士試験の免除制度に絞って解説します。試験全体の制度・科目・日程・受験料などの基本情報は不動産鑑定士試験とは?制度・科目・日程・受験料・申込方法の完全ガイド、短答式試験そのものの内容は短答式試験とは?試験科目・試験時間・合格率と科目別対策を参照してください。
不動産鑑定士試験の免除制度は2系統ある
まず全体像です。不動産鑑定士試験の免除には、性格の異なる2つの系統があります。
| ①短答式試験の免除 | ②論文式試験の科目免除 | |
|---|---|---|
| 誰が対象か | 短答式試験に合格した人 | 一定の資格・学位・職歴を持つ人 |
| 何が免除されるか | 短答式試験そのもの(鑑定理論・行政法規の2科目まるごと) | 論文式試験のうち特定の科目(民法・経済学・会計学) |
| 期間 | 合格発表の日から2年を経過する日まで | 条件を満たす限り |
| 典型的な該当者 | 前年・前々年の短答式合格者 | 司法試験合格者、公認会計士試験合格者、大学の教員・博士 |
| 申請 | 出願時に申請が必要 | 出願時に申請と証明書類が必要 |
この表を見て自分がどちらに該当するかを最初に確定させてください。両方に該当する人(たとえば公認会計士試験合格者が短答式に合格した場合)は、両方の免除を同時に申請できます。
最初に押さえるべき3つの原則
制度の細部に入る前に、免除制度に共通する原則を3つ確認します。ここを誤解していると、せっかくの権利を使い損ねます。
原則1:免除は自動では適用されない。申請が必要です。
短答式の免除も科目免除も、出願手続きの中で「免除を受けたい」と申請して初めて適用されます。前年に短答式に合格していれば国が勝手に判定してくれる、という仕組みではありません。申請を忘れれば、免除の権利があっても普通に短答式を受けることになります。
原則2:鑑定理論は免除の対象として定められていない。
短答式の鑑定理論も、論文式の鑑定理論(論文)も、鑑定理論(演習)も、受験案内が定める免除の対象には含まれていません。不動産鑑定士の中核をなす専門科目だからです。どの資格を持っていても、鑑定理論だけは全員が同じ土俵で戦います。裏を返せば、免除を持つ人ほど鑑定理論に時間を集中投下できるということでもあります。
原則3:論文式に「科目合格制」はない。
公認会計士試験のように、論文式の一部科目だけ合格しておいて翌年その科目を免除される、という制度は不動産鑑定士試験にはありません。論文式は毎回、免除申請していない全科目を一括で受け直します。「今年は民法だけ手応えがあったから来年は民法免除」ということにはならないので、論文式は毎年フルセットで仕上げる前提で計画を立てる必要があります。
この3点を踏まえたうえで、それぞれの制度を詳しく見ていきます。
短答式試験の免除:合格後2年間は論文式から受験できる
制度の内容
不動産鑑定士試験の短答式試験に合格した人は、その申請により、当該短答式試験の合格発表の日から起算して2年を経過する日までに行われる短答式試験が免除されます。根拠は不動産の鑑定評価に関する法律に置かれています。
これがどういう意味を持つかというと、短答式に一度合格すれば、その年を含めて3回、論文式試験に挑戦できるということです。2年目・3年目は5月の短答式を受験せず、8月の論文式だけを受けに行きます。
多くの受験生が「不動産鑑定士試験は短答式と論文式の2段階」とだけ理解していますが、実際にはこの免除制度によって短答式と論文式を切り離して攻略できる設計になっています。ここを理解しているかどうかで、受験戦略の自由度がまったく変わります。
免除期間を年で数えると
仮に1年目の5月に短答式を受験して合格したとします。合格発表は例年6月下旬です。その場合の受験カレンダーは次のようになります。
| 年 | 5月の短答式 | 8月の論文式 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 受験して合格 | 受験できる | 短答式合格。この年の論文式に挑戦可 |
| 2年目 | 免除(要申請) | 受験できる | 論文式に専念できる1回目 |
| 3年目 | 免除(要申請) | 受験できる | 論文式に専念できる2回目(免除の最終年) |
| 4年目 | 免除切れ。受験が必要 | その年の短答式に合格した場合のみ受験できる | 短答式からやり直し |
つまり論文式のチャンスは1年目・2年目・3年目の計3回。4年目に論文式を受けたい場合は、その年の5月にもう一度短答式に合格し直す必要があります。ここは表の読み違いが起きやすいところです。4年目の論文式は「免除が切れたけれど論文式だけは受けられる」のではなく、その年の短答式に受かって初めて受験資格が生まれます。受験案内でも、論文式試験を受験できるのは「その年の短答式試験の合格者」と「免除申請をした過年度の短答式合格者」に限られる旨が示されています。
なお「2年を経過する日まで」という数え方は合格発表日を起点とするため、単純な暦年で数えると1回分を取り違える危険があります。
ただし実務上の確認方法は簡単です。その年の受験案内には、免除の対象となる短答式合格年が具体的な年で明記されます。たとえば「◯◯年または◯◯年の短答式試験に合格し、かつ免除申請をした者について短答式試験を免除する」といった書き方です。自分の合格年がそこに載っているかどうかを見れば、免除が使えるかは一目で判定できます。日数を自分で数える必要はありません。手元の短答式試験の合格通知書で自分の合格年と受験番号を確認し、受験案内の記載と突き合わせてください。ここを勘違いすると、免除が切れているのに論文式だけ出願して受験できない、という最悪の事故が起こります。
短答式合格の価値は「1回の合格」ではない
この制度の重要な帰結は、短答式試験の合格が持つ価値が、その年の1回分ではなく3年分あるという点です。
短答式は鑑定理論40問・行政法規40問の計80問、各科目100点の200点満点で、おおむね総合7割が合格ラインの目安とされます(年度により変動)。合格ラインの詳しい推移と足切りの考え方は短答式の合格ライン・ボーダーは何点?にまとめています。
この短答式に1回受かるだけで、その後2年間は5月の試験を回避して8月の論文式に全力を注げます。5月の短答式に向けた直前期の負荷(行政法規の数値暗記の総ざらいなど)が丸ごと消えるわけですから、2年目・3年目の学習効率は1年目とは比較になりません。
短答免除を戦略に変える3つの使い方
短答式の免除は、単に「楽になる」制度ではありません。受験戦略そのものを設計し直せる材料です。代表的な使い方を3つ挙げます。
使い方1:初年度は「短答式に全振り」する段階戦略
働きながら受験する人、学習開始が遅れた人にとって現実的なのが、1年目は短答式の合格だけを目標にするという割り切りです。
不動産鑑定士試験の学習時間は一般に2,000〜3,000時間と言われます(科目別の内訳は勉強時間は2000〜3000時間|科目別の時間配分と短縮のコツを参照)。これを1年で消化しようとすると、社会人にはかなり厳しい水準になります。
そこで負荷を2段に分けます。
| 段階 | 期間の目安 | やること | 到達目標 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 学習開始〜1年目の5月 | 鑑定理論(短答レベル)+行政法規 | 短答式合格 |
| 第2段階 | 1年目の6月〜2年目の8月 | 鑑定理論(論文・演習)+民法・経済学・会計学 | 論文式合格 |
この設計の利点は、1年目に教養3科目(民法・経済学・会計学)へ手を出さなくてよくなることです。行政法規は短答式にしか出題されないため、1年目は「鑑定理論+行政法規」という短答式の2科目に資源を集中できます。
一方でリスクもあります。1年目の論文式を捨てる判断をすると、免除の3回のうち1回を実質的に使わないことになります。免除期間は2年間しかないため、第2段階が想定より延びると3年目に追い込まれます。この戦略を採るなら、1年目の6月から論文対策を即座に立ち上げることが条件です。短答合格直後の動き方は短答合格直後にやるべきこと|論文式試験への最速切替ガイドにまとめています。
使い方2:2年目・3年目に論文式へ全資源を投入する
短答免除が効いている年は、5月までの時間の使い方が根本的に変わります。免除がない年とある年で、1〜7月の配分を比べてみます。
| 期間 | 免除なしの年 | 免除ありの年 |
|---|---|---|
| 1〜3月 | 行政法規の暗記・鑑定理論の短答演習 | 鑑定理論(論文)の答案作成、教養3科目の理解 |
| 4〜5月 | 短答式の直前対策(ほぼ全振り) | 論文答案の量産、演習(計算)の精度上げ |
| 6〜7月 | 短答の疲労回復+論文対策の立ち上げ | 答練・模試の復習、本番シミュレーション |
免除がない年は、4〜5月の約2ヶ月が短答式に吸い取られます。この2ヶ月は論文式まで残り3ヶ月という最も重要な時期であり、ここを短答式に使わなくて済むアドバンテージは非常に大きいものがあります。論文式まで3ヶ月の設計は論文式の勉強時間|科目別の配分と短答合格後3ヶ月の使い方を参照してください。
使い方3:短答の知識を「維持だけ」して落とさない
免除の年に起こりがちな失敗が、行政法規と短答レベルの鑑定理論の知識が抜け落ちることです。
これが問題になるのは2つの場面です。ひとつは、3年目までに論文式に受からず4年目に短答式を受け直すことになった場合。もうひとつは、行政法規の知識(都市計画法・建築基準法・国土利用計画法など)が論文式の鑑定理論でも背景知識として効いてくる場面です。
対策はシンプルで、免除の年も行政法規の肢別演習を週に1〜2回、30分だけ回すことです。ゼロにするのではなく、細く長く維持する。これだけで再受験時の立ち上がりがまったく違います。
| 免除年の行政法規の扱い | 4年目に再受験することになったとき |
|---|---|
| 完全にゼロにした | ほぼ初学者に戻る。3〜4ヶ月の再構築が必要 |
| 週30分だけ維持した | 1〜2ヶ月で本番水準に戻せる |
「免除期間中に受かるから維持は不要」と考えるのは、期待値の計算としては危険です。維持コストは週30分。それに対して落としたときの再構築コストは数百時間です。
論文式試験の科目免除:他資格・学位・職歴による免除
ここからは2つ目の系統、論文式試験の一部科目の免除です。短答式の免除とはまったく別の制度で、対象者も申請書類も異なります。
論文式試験の科目と配点
まず前提として、論文式試験の科目構成を確認します。
| 科目 | 配点 | 免除の対象になり得るか |
|---|---|---|
| 民法 | 100点 | なり得る |
| 経済学 | 100点 | なり得る |
| 会計学 | 100点 | なり得る |
| 不動産の鑑定評価に関する理論(論文) | 200点 | ならない |
| 不動産の鑑定評価に関する理論(演習) | 100点 | ならない |
| 合計 | 600点 |
免除の対象になるのは、いわゆる教養3科目(民法・経済学・会計学)の300点分です。鑑定理論の300点分は誰も免除されません。論文式試験の全体像は論文式試験の全貌|試験概要・科目配点・合格のカギを参照してください。
代表的な免除対象者
科目免除の対象者は、大きく「学識・職歴によるもの」と「他の国家試験の合格によるもの」に分かれます。以下は代表例です。
| 区分 | 対象者の例 | 免除され得る科目 |
|---|---|---|
| 学識・職歴(法律学) | 大学等で通算3年以上、法律学に属する科目の教授・准教授だった人/法律学に属する科目の研究により博士の学位を授与された人 | 民法 |
| 学識・職歴(経済学) | 大学等で通算3年以上、経済学に属する科目の教授・准教授だった人/経済学に属する科目の研究により博士の学位を授与された人 | 経済学 |
| 学識・職歴(商学) | 大学等で通算3年以上、商学に属する科目の教授・准教授だった人/商学に属する科目の研究により博士の学位を授与された人 | 会計学 |
| 他の国家試験 | 司法試験(または旧司法試験第二次試験)に合格した人 | 民法 |
| 他の国家試験 | 公認会計士試験(または旧公認会計士試験第二次試験)に合格した人 | 会計学+その試験で受験した科目(民法または経済学) |
ここで見落とされやすいポイントが3つあります。
ポイント1:学識・職歴の区分名は「民法」「会計学」ではありません。
大学教員・博士の区分は、免除される科目名そのものではなく、法律学・経済学・商学という学問分野の単位で定められています。民法の免除に対応するのは「法律学に属する科目」、会計学の免除に対応するのは「商学に属する科目」です。自分の専攻や担当科目がどの区分に入るかは、科目名だけでは判断できないことがあります。
ポイント2:公認会計士試験合格者は、会計学だけではない可能性があります。
公認会計士試験の合格者は会計学に加えて、その試験で受験した科目が民法または経済学であれば、その科目も免除の対象になり得ます。公認会計士試験の論文式は選択科目制で、民法や経済学のほかに経営学・統計学といった選択肢があります。したがって選択科目に民法を選んでいた人は「会計学+民法」の2科目、経営学を選んでいた人は「会計学」のみ、というように同じ公認会計士試験合格者でも免除される範囲が変わります。自分がどの科目で受験したかを合格時の記録で確認してください。
ポイント3:免除できる科目が複数あっても、全部使う必要はありません。
免除を申請できる科目が複数ある場合、その全部を申請することも、一部だけを任意に選んで申請することもできます。たとえば会計学と民法の免除資格がある人が、民法だけ免除して会計学は受験する、という選び方も制度上は可能です。得意科目を敢えて受験して得点源にするか、学習負担を減らすことを優先して全部免除するかは、自分の実力と残り時間で判断することになります。ただし後述のとおり科目数が減るほど1科目あたりの失敗が響くようになるため、迷ったときは免除して鑑定理論に資源を寄せるほうが安全側の判断です。
重要な注意:ここに挙げたのは代表例であり、対象となる資格・学位・職歴の範囲や、実際に免除される科目の組み合わせは、年度ごとの受験案内で細かく定められています。「自分の資格・経歴で何が免除されるか」は、必ずその年の国土交通省の受験案内(不動産鑑定士試験の実施に関する公告)で確認してください。この記事の記述だけを根拠に出願計画を立てないでください。
特に次のようなケースは自己判断が危険です。
- 大学教員としての年数のカウント方法(専任・非常勤の扱い、通算の可否)
- 「法律学に属する科目」「商学に属する科目」の具体的な範囲
- 修士と博士の扱いの違い(学位は博士が要件とされています)
- 他の試験の一部合格・科目合格しかしていない場合
- 旧制度(2006年の試験制度改正前)の合格実績を持っている場合
該当しそうな心当たりがあるなら、出願期間より前に受験案内を取り寄せ、必要であれば試験の実施主体に問い合わせてください。出願期間が始まってから証明書類を取りに走ると間に合いません。
免除で消えるのは「600点満点のうち最大300点分」
科目免除がどれだけ大きいかを、点数で見ておきます。
論文式は600点満点で、うち教養3科目が300点、鑑定理論が300点です。仮に司法試験合格者が民法の免除を受けると、受験科目は500点満点になり、鑑定理論の占める比率が $300 \div 500 = 60\%$ に上がります。会計学と民法の2科目が免除される公認会計士試験合格者であれば400点満点となり、鑑定理論の比率は $300 \div 400 = 75\%$ に達します。3科目すべて免除された場合は、鑑定理論300点だけで合否が決まることになります。
ここで重要なのが、合否判定は免除科目を除いた受験科目の得点で行われるという点です。受験案内では、免除科目がある場合は免除科目を除いた科目の合計得点を基に偏差値等を用いて算出した総合点をその人の総合点として判定する、という趣旨が示されています。免除科目に「平均点が与えられる」わけでも、免除そのものが加点として働くわけでもありません。免除とはその科目が合否計算から消えるということであり、残った科目の重みがそのぶん増すという意味です。
さらに見落としてはいけないのが、論文式試験の合格基準には総合点の基準(概ね6割が目安とされます)に加えて、各科目について一定の得点が必要とされている点です。つまり科目ごとの足切りがあります。免除で科目数が減ると、残った1科目あたりの重みが増すだけでなく、足切りに引っかかったときの逃げ場もなくなります。教養科目が1科目しか残らない人にとって、その科目での大事故は即座に致命傷になるということです。「免除が多いほど安全」ではなく「免除が多いほど各科目の失敗が許されない」と理解してください。
| 免除の状況 | 受験科目の満点 | 鑑定理論の比率 |
|---|---|---|
| 免除なし | 600点 | 50% |
| 民法のみ免除 | 500点 | 60% |
| 会計学+民法の免除 | 400点 | 75% |
| 教養3科目すべて免除 | 300点 | 100% |
つまり免除を受けるほど、鑑定理論の出来がそのまま合否になるという構造です。「免除があるから有利」で終わらせず、「鑑定理論で失敗したら逃げ道がなくなる」というリスクとして捉えるべきです。教養科目で稼いで鑑定理論の失点を補う、という戦い方ができなくなるからです。
免除がある人ほど、鑑定理論の答案精度を上げることに資源を集中してください。基準の適用については次の記述が土台になります。
鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用すべきである。この場合、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第8章
この一文は、答案で手法選択の理由を書くときの土台になります。ポイントは「複数の手法を適用すべき」とされていること、そして適用が困難な場合でも「その考え方をできるだけ参酌するように努めるべき」とされていることです。文言を雑に覚えて「常に三手法を併用しなければならない」と書いてしまうと、基準の理解が浅いと判断されます。免除で時間に余裕がある人ほど、こうした条文レベルの正確さで差をつけられます。
鑑定理論の論文対策の全体像は鑑定理論(論文)の勉強法|基準暗記から答案作成まで完全ガイドにまとめています。
免除の申請手続き:出願時にやること
手続きの基本的な流れ
免除は、受験願書の提出(出願)と同時に申請します。試験に合格してから後出しで申請することはできません。一般的な流れは次のとおりです。
| ステップ | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1 | その年の受験案内・願書を入手 | 例年、出願期間の前に国土交通省が公告 |
| 2 | 願書の免除申請欄に記入 | 該当する免除の種類を正確に選ぶ |
| 3 | 証明書類を用意する | ここが最も時間がかかる |
| 4 | 出願期間内に提出 | 期限を過ぎたら翌年まで待つことになる |
証明書類の準備は「出願の1ヶ月前」から始める
免除申請でつまずく最大の原因は、証明書類が出願期限に間に合わないことです。
短答式の免除は、自分の手元にある書類で証明できるため比較的シンプルです。書面で申請する場合、証明書類として想定されているのは短答式試験の合格通知書(合格者に郵送されるもの)や、短答式に合格した年の論文式試験の受験票といった、過去に短答式へ合格した事実を示す書類の原本または写しです。ここで用語に注意してください。短答式の合格者に届くのは「合格通知書」で、「合格証書」は論文式に最終合格した人に届くものです。願書の記載や問い合わせのときに混同しないようにしてください。
これらの書類をすべて紛失してしまった場合でも救済はあります。国土交通省に申請すれば合格したことを証明する書類(合格証明書)を発行してもらえます。ただし発行には日数がかかる(1週間程度が目安として案内されています)ため、出願直前に気づくと間に合いません。書類が見当たらないと気づいた時点ですぐ動いてください。
なお電子申請を利用する場合、短答式免除の証明書類は不要とされている年度があります。書面申請か電子申請かで手間が大きく変わるため、その年の受験案内で申請方式ごとの取扱いを確認してください。ただし氏名が変わっている場合など、追加の書類を求められるケースはあります。
一方、科目免除の証明書類は外部機関から取り寄せる必要があります。
| 免除の種類 | 必要になり得る書類 | 取得にかかる時間の目安 |
|---|---|---|
| 短答式の免除 | 短答式試験の合格通知書、論文式試験の受験票など(いずれもなければ合格証明書の発行申請) | 手元にあれば即日/再発行は1週間程度 |
| 他の国家試験による科目免除 | 当該試験の合格を証する書類(例:公認会計士試験なら公認会計士・監査審査会が発行する合格証明書) | 取り寄せに数日〜数週間 |
| 学位による科目免除 | 学位記の写し・学位授与証明書 | 大学へ申請。1〜2週間かかることも |
| 職歴による科目免除 | 在職期間・職名を証する書類 | 勤務先の事務手続き。所要日数が読みにくい |
原本を提出するか写しでよいか、写しの場合に原本照合が必要か、返信用封筒を同封するかといった細部は年度ごとの受験案内で指定されます。返信用封筒を入れ忘れると原本が返却されないといった扱いが明記されていることもあるため、証明書類の提出方法の項は一字一句読んでください。また、免除の可否の判断のために受験願書の受領後に追加書類の提出を求められることがある点も押さえておく必要があります。出願期間ぎりぎりに提出すると、この追加確認に対応する余裕がなくなります。
出願期間が始まってから準備を始めると間に合わないことがあるため、心当たりのある人は前年の受験案内を参考に、必要書類の見当をつけて早めに動いてください。
申請しなかった場合はどうなるか
免除の権利があるのに申請しなかった場合、その年は免除なしで受験することになります。短答式の免除であれば5月の短答式を受験することになり、科目免除であれば当該科目も答案を書くことになります。
ここで理解しておくべきなのは、申請し忘れても免除期間が延びるわけではないという点です。短答式の免除は合格発表の日から2年で切れます。免除が使える2年間のうち最初の年に申請を忘れれば、使える免除は実質1回分減ります。権利を失うのは自分の手続きミスのせいであり、救済はありません。
もうひとつ、免除申請には受験票の扱いに関わる副作用があります。短答式の免除を申請した人には短答式試験の受験票が送られず、論文式試験の受験票のみが届く扱いになります。つまり免除申請が正しく受理されたかどうかは、受験票の到着状況からも間接的に確認できます。免除を申請したのに短答式の受験票が届いた、あるいは論文式の受験票が届かないといった場合は、申請が意図どおりに処理されていない可能性があるため、試験の実施主体にすぐ問い合わせてください。逆に「免除申請したから受験票が来なくて当然」と放置して、実は申請が通っていなかったというのが最悪のパターンです。
出願前チェックリスト
免除を使う年の出願は、通常の出願より確認事項が増えます。出願期間に入る前に次の項目を潰しておいてください。
| # | 確認事項 | 確認先 |
|---|---|---|
| 1 | その年の受験案内は公表されたか | 国土交通省の不動産鑑定士試験のページ |
| 2 | 自分の免除がいつまで有効か | 受験案内に明記された「免除対象となる合格年」+短答式試験の合格通知書 |
| 3 | 免除申請欄の記入方法 | 願書と受験案内の記載例 |
| 4 | 必要な証明書類の種類と通数 | 受験案内 |
| 5 | 証明書類の取得にかかる日数 | 発行機関(大学・勤務先・試験実施機関) |
| 6 | 出願期間の初日と最終日 | 受験案内(消印有効かどうかも確認) |
| 7 | 免除申請後に受験する科目の確定 | 自分で一覧化して二重確認 |
特に7番目は見落とされがちです。免除申請の結果、自分が本番で何科目・何時間試験を受けるのかを紙に書き出しておくと、直前期の時間配分の設計がぶれません。たとえば民法と会計学が免除される人であれば、論文式で受けるのは経済学と鑑定理論(論文・演習)だけになり、3日間の日程のうち自分が拘束される時間帯も変わります。試験日程と自分の受験科目の対応は、受験票が届いた段階でもう一度確認してください。
免除を前提にした学習計画の組み替え方
免除が確定したら、そのぶん浮いた時間をどこに投下するかを決めるところまでが計画です。「免除だから楽」で終わらせると、免除の価値の半分も回収できません。
浮く時間を数字で押さえる
科目別の標準的な学習時間の目安から、免除で浮く時間を概算します。学習時間の配分の詳細は勉強時間は2000〜3000時間|科目別の時間配分と短縮のコツを参照してください。
| 免除の種類 | 浮く学習時間の目安 | 何に相当するか |
|---|---|---|
| 短答式の免除(1年分) | 200〜400時間 | 行政法規の総復習+直前2ヶ月の短答特化 |
| 民法の科目免除 | 200〜300時間 | 論文答案の書き方の習得を含む |
| 会計学の科目免除 | 150〜250時間 | 簿記の基礎から仕上げまで |
| 経済学の科目免除 | 150〜250時間 | ミクロ・マクロの計算・グラフ |
たとえば公認会計士試験合格者が会計学の免除を受け、さらに短答式の免除も効いている年であれば、単純計算で $400 + 250 = 650$ 時間前後が他の科目に回せることになります。公認会計士試験で民法を選択受験していて民法の免除も加わるなら、さらに $200$〜$300$ 時間が上乗せされ、浮く時間は $850$〜$950$ 時間規模になります。これは論文式の鑑定理論をゼロから仕上げるのに十分な規模です。
浮いた時間の投下先の優先順位
浮いた時間の投下先は、次の順で考えてください。
第1優先:鑑定理論(論文)の答案作成量
免除があるほど鑑定理論の比重が上がるという前述の構造から、ここが最優先です。基準を「読める」から「書ける」に変えるには、実際に答案を書く量が必要です。
第2優先:鑑定理論(演習)の計算精度と速度
演習は100点あり、しかも計算過程の型が決まっているため、投下時間がそのまま点になりやすい領域です。免除で時間が余るなら、演習を「安定して7〜8割取れる科目」に育てるのは合理的な投資です。
第3優先:免除されない教養科目の底上げ
たとえば民法だけ免除される人にとって、経済学と会計学は依然として200点分あります。免除科目に安心して残り2科目が手薄になるのは典型的な失敗です。
第4優先:短答レベルの知識の維持
前述のとおり、行政法規を週30分だけでも回し続けます。
学習計画テンプレートへの落とし込み
免除の有無によって年間の計画は大きく変わります。月別のテンプレートは勉強スケジュール|2年・1年計画の月別テンプレートで公開していますが、免除がある人は次の点を変更してください。
| テンプレートの前提 | 免除がある場合の変更点 |
|---|---|
| 1〜5月は短答式対策が中心 | 1〜5月から論文答案の作成を開始する |
| 6月に論文対策へ切り替え | 6月は「切り替え」ではなく「加速」の月にする |
| 教養3科目を並行して進める | 免除科目を外し、残り科目と鑑定理論に再配分する |
| 直前期は暗記の総ざらい | 直前期は答案の量産と時間内完答の訓練 |
他資格からの転向組別・免除の活かし方
免除制度の恩恵を最も受けるのは、他資格からの転向組です。資格別に、免除の有無と戦い方を整理します。
公認会計士試験の合格者
免除の恩恵が最も大きい層です。会計学の免除が効く可能性があるうえ、公認会計士試験で鍛えた計算処理能力が鑑定理論(演習)にそのまま活きます。演習は収益価格の試算などを含む計算主体の科目であり、電卓処理と検算の習慣がある人は立ち上がりが速いのが特徴です。
ここで自分の選択科目を必ず確認してください。前述のとおり、公認会計士試験合格者の免除は会計学だけとは限らず、その試験で受験した科目が民法または経済学であれば、その科目も免除の対象になり得ます。選択科目によって、その後の学習計画がまるごと変わります。
| 公認会計士試験の選択科目 | 免除され得る科目 | 論文式で残る教養科目 |
|---|---|---|
| 民法 | 会計学+民法 | 経済学のみ |
| 経済学 | 会計学+経済学 | 民法のみ |
| 経営学・統計学など | 会計学のみ | 民法・経済学 |
民法を選択していた人は、残る教養科目が経済学1科目だけになり、鑑定理論に投下できる時間が一気に増えます。逆に経営学・統計学で受験した人は民法と経済学の2科目が残るため、免除は会計学の1科目分と考えて計画を立ててください。
苦戦しやすいのは民法です。公認会計士試験で民法を選択していなかった場合、法的三段論法による答案作成をゼロから習得する必要があります。ダブルライセンスの戦略は公認会計士とのダブルライセンスを目指す学習戦略、民法の学習法は民法の勉強法|法的三段論法をマスターして高得点を狙うを参照してください。
| 強み | 弱み | 優先すべきこと |
|---|---|---|
| 会計学(免除の可能性)/演習の計算処理 | 民法の答案作成/鑑定理論の記述量 | 民法の三段論法と鑑定理論の答案訓練 |
司法試験の合格者・法学部出身者
民法の免除が効く可能性があり、さらに論文答案の作法(問題提起→規範定立→あてはめ→結論)がそのまま鑑定理論の論文で使えます。鑑定理論の論文は基準の文言を規範として扱う構造なので、法律答案の訓練は大きなアドバンテージです。
ここで予備試験の合格者は要注意です。受験案内で民法の免除対象として挙げられているのは「司法試験(または旧司法試験第二次試験)に合格した者」であり、予備試験の合格は司法試験の合格とは別のものです。予備試験に受かっている段階では民法の免除対象にはならないと考えて計画を立て、自分の該当可否は受験案内で確認してください。法律の学習経験が学習効率の面で有利に働くことと、制度上の免除が受けられることは別問題です。同じく、法学部卒であっても学位による免除は博士の学位が要件であるため、学部卒では対象になりません。
弱点は会計学と演習です。簿記の基礎がない場合、会計学は仕訳から始めることになります。会計学の勉強法|簿記未経験でも合格できる学習ステップが入口になります。
| 区分 | 民法の免除 | 学習面での有利さ |
|---|---|---|
| 司法試験の合格者 | 対象になり得る | 大きい |
| 予備試験のみ合格 | 対象にならないと考えるべき | 大きい |
| 法学部卒(学士) | 対象にならない | 中程度 |
| 法律学の博士 | 対象になり得る | 大きい |
| 強み | 弱み | 優先すべきこと |
|---|---|---|
| 民法(免除の可能性)/論文答案の型 | 会計学・経済学の計算/演習 | 簿記の基礎と演習の計算パターン習得 |
宅建士・不動産業界の出身者
宅建士の資格そのものによる科目免除はありません。ただし、行政法規の学習コストが大きく下がるという実務的なメリットがあります。都市計画法・建築基準法・国土利用計画法など、宅建で扱った法令が短答式の行政法規と重なるためです。
したがって宅建士の人は、短答式の免除を早期に取りに行く戦略と相性が良いといえます。1年目に短答式を確実に取り、2年目・3年目を論文式に使う設計です。詳しい戦略は宅建士から不動産鑑定士へステップアップする学習戦略にまとめています。
| 強み | 弱み | 優先すべきこと |
|---|---|---|
| 行政法規の既習範囲/不動産の実務感覚 | 民法・経済学・会計学の論文答案 | 1年目に短答合格→免除2年で論文に集中 |
大学の教員・研究者
大学等における通算3年以上の教授・准教授(助教授)としての職歴、または当該分野の博士の学位がある場合、科目免除の対象になり得ます。対応関係は「法律学→民法」「経済学→経済学」「商学→会計学」です。ここで注意したいのが、免除される科目名と、要件として求められる分野名が一致しないケースがあることです。会計学の免除を狙う場合に見るべき区分は「会計学に属する科目」ではなく「商学に属する科目」であり、民法の免除は「法律学に属する科目」の実績で判断されます。
また「大学等」には、学校教育法による大学・高等専門学校のほか、旧制度下の学校が含まれる形で定義されています。職歴の年数の数え方(専任・非常勤の扱い、複数機関の通算)や、自分の担当科目がどの分野区分に属するかの判断は受験案内の定めによるため、必ず事前確認が必要です。証明書類の取得に時間がかかる区分でもあり、免除の可否の判断のために追加書類を求められることもあるため、出願の1〜2ヶ月前から準備を始めてください。
経済学部・商学部の出身者
学位そのものによる免除は博士の水準が要件になるため、学部卒では対象になりません。ただし経済学・会計学の基礎があることは学習時間の圧縮に直結します。経済学の勉強法とレベル|ミクロ・マクロ攻略で自分の到達度を確認し、既習分野を飛ばして未習分野に時間を寄せてください。
免除がある年の週間スケジュール例
免除が効いている年は、5月までの平日・休日の使い方を論文式仕様に組み替えます。社会人(平日2時間・休日6時間、週22時間)のモデルケースを示します。
| 曜日 | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| 平日(月〜金) | 各2時間 | 鑑定理論の基準暗記30分+論文の論点整理60分+行政法規の肢別演習30分 |
| 土曜 | 6時間 | 鑑定理論の答案作成(2題)+見直し |
| 日曜 | 6時間 | 演習(計算)2時間+免除されない教養科目4時間 |
ポイントは3つあります。第一に、平日の30分を行政法規の維持に確保していること。免除年でも知識を落とさないための保険です。第二に、土曜を答案作成の日として固定していること。答案は「時間があるときに書く」ものにすると書かなくなるため、曜日で固定します。第三に、日曜に演習の計算を必ず入れていること。計算は間隔が空くと速度が落ちるため、週1回は必ず触ります。
週単位のスケジュールの組み方は社会人が合格する週間スケジュールの組み方も参考にしてください。
免除制度の誤解と落とし穴
混同されやすい4つの制度
検索でこの記事にたどり着く人の中には、別の制度と混同しているケースがあります。整理しておきます。
1. 宅建試験の「5問免除」との混同
宅建試験には、登録講習を修了した人が5問分の出題を免除される制度があります。これは宅建試験の中の話であり、不動産鑑定士試験とはまったく無関係です。宅建の登録講習を受けても、不動産鑑定士試験で何かが免除されることはありません。
2. 実務修習との混同
不動産鑑定士になるには、試験に合格した後に実務修習を修了し、修了考査に合格する必要があります。実務修習には講義・基本演習・実地演習といった課程があり、経歴に応じた課程の扱いが定められている場合がありますが、これは試験の免除制度とはまったく別の枠組みです。「試験科目の免除」と「実務修習の課程の扱い」を混同しないでください。実務修習の要件は日本不動産鑑定士協会連合会など実施主体の公表資料で確認します。
3. 公認会計士試験の科目合格制との混同
公認会計士試験には論文式の科目合格制があり、一部科目に合格すれば以後一定期間その科目が免除されます。不動産鑑定士試験にはこの仕組みがありません。「一部科目だけ先に固めて、残りは翌年」という戦い方は取れないため、論文式は毎年フルセットで仕上げる前提が必要です。ここを誤解したまま計画を立てると、初年度の論文式で1〜2科目を捨てるという致命的な判断につながります。
4. 「難関資格なら何か免除があるはず」という思い込み
免除の対象は受験案内の表に列挙されたものに限られます。難関資格であれば横断的に優遇される、という一般則はありません。たとえば税理士の資格による科目免除は用意されていません。会計分野の専門資格であっても、免除の対象として名指しされていなければ対象外です。同様に、宅建士・管理業務主任者・FPといった不動産・金融系の資格も科目免除にはつながりません。自分の資格が対象かどうかは「難易度」ではなく「受験案内の表に載っているか」で判断してください。
| 制度 | 不動産鑑定士試験に存在するか |
|---|---|
| 短答式試験の免除(合格後2年間) | ある |
| 論文式の科目免除(資格・学位・職歴による) | ある |
| 論文式の科目合格制(一部合格→翌年免除) | ない |
| 講習受講による出題免除(宅建の5問免除のようなもの) | ない |
| 鑑定理論の免除 | ない |
| 税理士・宅建士など列挙外の資格による科目免除 | ない |
| 免除による受験手数料の減額 | ない(免除があっても同額) |
陥りやすい9つの落とし穴
実際に免除を使う人がはまりやすいパターンを挙げます。
1. 申請を忘れる
最も多く、最ももったいない失敗です。免除は申請主義。出願時に必ず申請欄を確認してください。
2. 免除の有効期限を数え間違える
「2年」の起点は合格発表の日です。暦年で雑に数えると1回分ずれます。その年の受験案内に免除対象となる合格年が明記されるので、自分の合格年が載っているかを確認してください。
3. 証明書類が間に合わない
学位授与証明書や在職証明書は取得に時間がかかります。出願期間に入ってから動くと詰みます。
4. 免除科目に安心して他科目が手薄になる
免除で浮いた時間を「休む時間」にしてしまうケース。浮いた時間の投下先を先に決めてください。
5. 免除がある年に鑑定理論で失敗する
免除が多いほど鑑定理論の比重が上がります。逃げ道が減っていることを自覚してください。
6. 免除期間中に短答の知識をゼロにする
4年目に再受験することになったときのコストが跳ね上がります。週30分の維持で防げます。
7. 「免除があるから受かる」と思い込む
免除は学習時間を減らす制度であって、合格水準を下げる制度ではありません。受験する科目の要求水準は誰にとっても同じです。不合格の典型パターンは不動産鑑定士試験に落ちた人の共通点5つにまとめています。
8. 免除していない科目を「捨てて」欠席する
これは知らないと致命傷になるルールです。受験案内では、免除申請した科目以外の科目を欠席した場合、受験そのものが無効となり、以後の科目も受験できない旨が定められています。「手応えがないから午後の1科目は捨てて、残りに集中しよう」という発想は通用しません。免除されていない科目は、たとえ白紙に近くても着席して最後まで受け切る必要があります。論文式は複数日にわたる日程なので、初日に1科目飛ばした結果それ以降の科目をすべて失う、という取り返しのつかない事態になり得ます。
9. 免除を「申請したつもり」で確認しない
願書の免除申請欄の記入漏れ、証明書類の貼付漏れ、電子申請での添付漏れは実際に起こります。免除の可否の判断のために追加書類を求められることもあります。出願後は受験票の到着で申請が反映されているかを確認し、想定と違えばすぐ問い合わせてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 短答式に合格したら、翌年は自動的に短答式が免除されますか
いいえ。申請が必要です。出願時に免除の申請をして初めて適用されます。前年の合格実績を国が自動で判定してくれるわけではありません。願書の免除申請欄を必ず確認してください。
Q. 短答免除の「2年間」とは、具体的にいつまでですか
短答式試験の合格発表の日から起算して2年を経過する日までに行われる短答式試験が免除されます。実務的には翌年と翌々年の2回分にあたります。判定に迷う必要はなく、その年の受験案内に「どの年の短答式合格者が免除対象か」が具体的な年で明記されるので、自分の合格年がそこに含まれているかを確認してください。
Q. 短答免除中に論文式に落ちたらどうなりますか
免除期間内であれば、翌年もまた短答式を受けずに論文式から受験できます。免除は「1回使ったら消える」ものではなく、期間内は有効です。したがって短答式に1回合格すれば、論文式には最大3回(合格年を含む)挑戦できます。
Q. 免除期間が切れたら、また短答式から受け直しですか
はい。免除期間が過ぎると、論文式を受けるためにもう一度短答式に合格する必要があります。だからこそ免除期間中に行政法規の知識を細く維持しておくことが保険になります。再受験の立て直し方は2年目で確実に合格する戦略を参照してください。
Q. 論文式で一部の科目だけ良い点を取れば、翌年その科目は免除されますか
いいえ。不動産鑑定士試験の論文式に科目合格制はありません。公認会計士試験のような「科目合格→翌年以降免除」の仕組みは設けられていないため、論文式は毎年、免除申請していない全科目を受け直すことになります。
Q. 宅建士を持っていると科目免除がありますか
宅建士の資格による科目免除はありません。ただし行政法規の出題範囲と重なる部分が大きく、学習時間の面では明確に有利です。免除ではなく学習効率のアドバンテージとして活かしてください。
Q. 司法試験や公認会計士試験に合格していれば、鑑定理論も免除されますか
いいえ。鑑定理論は短答式・論文式・演習のいずれも免除の対象になりません。免除の対象となり得るのは民法・経済学・会計学の教養3科目です。むしろ免除がある人ほど鑑定理論の配点比率が上がるため、鑑定理論への集中投資が必要になります。
Q. 予備試験に合格していれば民法は免除されますか
受験案内で民法の免除対象として挙げられているのは「司法試験(または旧司法試験第二次試験)に合格した者」です。予備試験の合格は司法試験の合格とは別のものであるため、予備試験に受かった段階では民法の免除対象にはならないと考えて計画を立ててください。学習面では民法の素地が大きな武器になりますが、それは免除とは別の話です。自分の該当可否は必ずその年の受験案内で確認してください。
Q. 税理士の資格で免除される科目はありますか
税理士の資格による科目免除は用意されていません。会計分野の専門資格であっても、受験案内の免除対象として名指しされていなければ対象外です。会計学の免除に関わるのは、公認会計士試験の合格か、商学に属する科目での教授・准教授歴(通算3年以上)または博士の学位です。
Q. 大学院の修士課程を修了していれば免除されますか
学位による免除の要件は博士の学位です。修士では対象になりません。また博士であればどの分野でもよいわけではなく、法律学・経済学・商学のいずれかに属する科目に関する研究であることが求められます。自分の学位がどの区分に該当するかは判断が難しいため、証明書類とあわせて事前に確認してください。
Q. 短答式の免除と科目免除は同時に使えますか
はい。両方の要件を満たしていれば、同時に申請できます。たとえば公認会計士試験合格者が短答式に合格した場合、翌年は短答式が免除され、論文式では会計学(および公認会計士試験で民法か経済学を選択受験していればその科目)の免除を申請するという形になります。会計学だけが免除される場合、論文式で受験するのは民法・経済学・鑑定理論(論文・演習)です。民法も免除される場合は、経済学と鑑定理論だけになります。
Q. 免除を受けると受験手数料は安くなりますか
いいえ。受験案内では、短答式試験の免除や論文式試験の科目免除がある場合でも受験手数料は同額である旨が示されています。免除は「受ける試験が減るぶん安くなる制度」ではありません。
なお手数料を抑えたいのであれば、免除とは別の観点として電子申請を使うと受験手数料が割り引かれる扱いが案内されている年度があります。電子申請は短答式免除の証明書類が不要になるといった手続き上の利点もあるため、条件が合えば検討する価値があります。手数料の額そのものや納付方法、割引の有無は変更されることがあるため、金額は最新の受験案内で確認してください。
Q. 独学でも免除制度は問題なく使えますか
使えます。免除は出願手続きの中で完結するもので、予備校に通っているかどうかは関係ありません。ただし制度の細目を自分で受験案内から読み取る必要がある点は独学者の負担になります。独学の可否については独学で合格できる?リアルな可能性と限界を参照してください。
Q. 働きながらでも免除制度を前提に計画を立てられますか
むしろ社会人にこそ向いた制度です。1年目に短答式、2年目に論文式と負荷を2年に分散できるため、年間の学習時間を現実的な水準に抑えられます。両立の方法は社会人が働きながら合格する方法、合格者の年齢層の実像は合格者の年齢データを参照してください。
まとめ
- 不動産鑑定士試験の免除は①短答式試験の免除と②論文式の科目免除の2系統。まず自分がどちらに該当するかを確定させる
- 短答式に合格すると、合格発表の日から2年を経過する日まで短答式が免除され、論文式には合格年を含めて最大3回挑戦できる
- 論文式の科目免除の対象は民法・経済学・会計学の教養3科目。司法試験合格者は民法、公認会計士試験合格者は会計学+その試験で受験した科目(民法または経済学)が代表例だが、対象範囲は年度ごとの受験案内で必ず確認すること
- 大学教員・博士による免除は、免除科目名ではなく法律学・経済学・商学という分野区分で定められ、教員歴は通算3年以上が要件とされている
- 鑑定理論(短答・論文・演習)はどんな資格を持っていても免除されない。免除が多い人ほど鑑定理論の配点比率が上がり、逃げ道が減る
- 免除は申請主義。出願時に申請し、証明書類は出願期間の前から準備を始める
- 論文式に科目合格制はない。毎年、免除申請していない全科目を受け直す
- 免除申請していない科目を欠席すると受験が無効になり、以後の科目も受験できない。苦手科目を当日「捨てる」判断は取れない
- 免除で浮く時間は鑑定理論の答案作成→演習の計算精度→免除されない教養科目→短答知識の維持の順に投下する
- 免除期間中も行政法規を週30分だけ回して維持しておくと、再受験になったときの立て直しコストが数分の一で済む
免除制度は「有利な人だけの制度」ではありません。短答式の免除は、短答式に一度合格すれば誰でも使えます。負荷を2年に分けて現実的な計画に落とし込むための道具として設計し直せば、働きながらの受験でも十分に射程に入ります。制度の細目は必ず最新の受験案内で確認し、出願期限から逆算して書類を準備してください。
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