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租税特別措置法 - 居住用財産の3000万円特別控除と軽減税率を解説

不動産鑑定士試験の行政法規で頻出の租税特別措置法を解説。居住用財産の3000万円特別控除(措法35条)・軽減税率(措法31条の3)・買換え特例(措法36条の2)の要件と重複可否を体系的にまとめています。

租税特別措置法とは

租税特別措置法(以下「措法」)は、政策目的を達成するために所得税法・法人税法などの原則的な課税ルールに対する特例を定めた法律です。不動産税制においては、居住用財産の売却に関する多くの優遇措置が措法に規定されており、不動産鑑定士試験の行政法規科目でも重要な論点となっています。

措法の不動産関連規定は、市場における居住用不動産の流通を促進し、住宅取得を奨励するという政策目的のもとで設けられています。各特例の適用要件と効果を正確に把握することが、試験対策と実務の両面で求められます。

基本となる所得税法の譲渡所得の計算方法については所得税法の不動産譲渡所得で解説しています。本記事では、その上に乗る特例制度を体系的に整理します。


措法31条 - 長期譲渡所得の特例税率

個人が、その有する土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物で、その年1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡をした場合には、課税長期譲渡所得金額に対し、所得税の額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
― 租税特別措置法 第31条第1項

措法31条は、長期譲渡所得(所有期間5年超)に対して所得税15%・住民税5%の合計20%の税率を適用することを定めています。これは所得税法の原則(総合課税・累進税率)の特例として設けられたもので、不動産の長期保有と円滑な流通を促進する目的があります。

長期譲渡所得の税率体系

区分所得税率住民税率合計
措法31条(通常の長期)15%5%20%
措法31条の3(10年超・6,000万円以下部分)10%4%14%
措法31条の3(10年超・6,000万円超部分)15%5%20%

措法31条の3 - 居住用財産の軽減税率

措法31条の3は、長期間保有した居住用財産の売却に対して、さらに有利な軽減税率を定めています。

適用要件

  1. 所有期間: 譲渡した年の1月1日現在、所有期間が10年を超えていること
  2. 用途: 自己の居住の用に供している家屋またはその敷地の売却であること
  3. 居住用財産の要件: 以前に居住していた場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  4. 前年・前々年の非適用: 前年または前々年にこの特例を受けていないこと

税率の適用区分

個人が、その有する居住用財産(その年1月1日において所有期間が10年を超えるものに限る。)の譲渡をした場合において、当該譲渡に係る課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下であるときは、所得税の額は15%に代えて10%とする。
― 租税特別措置法 第31条の3(趣旨を反映した要約)

課税長期譲渡所得金額に応じて税率が異なります。

課税長期譲渡所得金額所得税率住民税率合計税率
6,000万円以下の部分10%4%14%
6,000万円超の部分15%5%20%

例えば、課税長期譲渡所得が8,000万円の場合:

$$\text{税額} = 6{,}000\text{万円} \times 14\% + 2{,}000\text{万円} \times 20\% = 840\text{万円} + 400\text{万円} = 1{,}240\text{万円}$$
確認問題

措法31条の3の軽減税率(10年超の居住用財産の特例)は、課税長期譲渡所得金額がいくらであっても6,000万円以下の部分に対して所得税10%、住民税4%が適用される。


措法35条 - 居住用財産の3,000万円特別控除

措法35条は、居住用財産を売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。

概要と特徴

個人が、その居住の用に供している家屋で政令で定めるもの又は当該家屋の敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡をした場合(当該譲渡が、その者が当該家屋を取り壊した後に行われた場合その他政令で定める場合を含む。)には、前条の規定の適用がある場合を除き、当該課税長期譲渡所得金額又は課税短期譲渡所得金額から3,000万円(当該課税長期譲渡所得金額又は課税短期譲渡所得金額が3,000万円に満たない場合には、当該課税長期譲渡所得金額又は課税短期譲渡所得金額)を控除する。
― 租税特別措置法 第35条第1項(趣旨を反映した要約)

3,000万円特別控除の最大の特徴は、所有期間の長短を問わず適用可能な点です。長期譲渡でも短期譲渡でも、居住用財産の売却であれば3,000万円を控除できます。

適用要件

  1. 居住用財産: 自己の居住の用に供している家屋またはその敷地の売却
  2. 居住用財産の範囲: 現在居住中の場合のほか、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
  3. 前年・前々年の非適用: 前年または前々年にこの特例を受けていないこと
  4. 関係者への売却の禁止: 配偶者・直系血族・生計を一にする親族への売却は不可

3,000万円控除の計算例

項目金額
譲渡収入金額5,000万円
取得費2,500万円
譲渡費用200万円
差引譲渡所得2,300万円
3,000万円特別控除2,300万円(上限適用)
課税所得0円

この例では、3,000万円の控除によって課税所得がゼロになり、税負担が発生しません。

確認問題

居住用財産の3,000万円特別控除(措法35条)は、所有期間が5年以下の短期譲渡の場合には適用できない。


措法36条の2 - 特定の居住用財産の買換え特例

措法36条の2は、居住用財産を売却して新たな居住用財産に買い換える場合に、売却益への課税を繰り延べることができる特例です。

適用要件

個人が、譲渡の年の1月1日において所有期間が10年を超える家屋(その者の居住の用に供しているものに限る。)又は当該家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡(以下この条において「旧居住用財産の譲渡」という。)をした場合において、当該旧居住用財産の譲渡に係る対価の額が1億円以下であり、かつ、一定の要件を満たす居住用財産(以下「買換資産」という。)を当該譲渡の日の前年1月1日から翌年12月31日までの間に取得するときは…課税を繰り延べることができる。
― 租税特別措置法 第36条の2(趣旨を反映した要約)

主な要件は以下のとおりです。

要件内容
所有期間譲渡年の1月1日現在、10年超
居住期間通算10年以上
譲渡対価1億円以下
買換え期間譲渡の前年1月1日〜翌年12月31日
買換え資産床面積50m2以上、土地は500m2以下

買換え特例の仕組み

買換え特例は課税の繰り延べであり、免除ではありません。売却益に対する課税は将来の売却時まで延期されます。

$$\text{課税繰延額} = \text{売却価額} - \text{購入価額}$$

購入価額が売却価額以上の場合は、売却益の全額が繰り延べられます。購入価額が売却価額を下回る場合は、差額部分のみ課税されます。


各特例の重複可否

措法35条(3,000万円特別控除)と措法31条の3(10年超の軽減税率)は重複して適用可能です。所有期間10年超の居住用財産を売却する場合、まず3,000万円を控除した後の金額に軽減税率を適用することができます。

特例の組み合わせ重複適用備考
措法35条(3,000万円控除)+措法31条の3(軽減税率)可能所有10年超が条件
措法35条(3,000万円控除)+措法36条の2(買換え特例)不可いずれか選択
措法31条の3(軽減税率)+措法36条の2(買換え特例)不可いずれか選択
確認問題

居住用財産の3,000万円特別控除(措法35条)と10年超所有の軽減税率(措法31条の3)は、重複して適用することができる。


実務上の留意点

「居住用財産」の定義

特例の適用を受けるには、対象不動産が「居住用財産」であることが必要です。実務上は以下の点に注意が必要です。

  • 転居後の取り扱い: 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日が期限
  • 別荘・セカンドハウス: 生活の本拠としていない場合は居住用財産に該当しない
  • 店舗兼住宅: 居住用部分と事業用部分を按分して適用(居住用部分が90%以上の場合は全体に適用可能)
  • 更地での売却: 家屋を取り壊して更地にした後でも、一定期間内であれば適用可能

鑑定評価との関係

税制の特例は、不動産市場における売主の行動に影響を与えます。例えば、3,000万円特別控除の適用により手取り額が増加する売主は、価格交渉において柔軟な姿勢を取れる場合があります。

不動産登記法に基づく登記情報と組み合わせることで、鑑定評価の資料収集においても各種特例の適用状況を推測することが可能です。


まとめ

租税特別措置法の居住用財産に関する特例を整理します。

措法31条: 長期譲渡所得(5年超)に所得税15%・住民税5%の合計20%を適用

措法31条の3: 所有期間10年超の居住用財産の売却について、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に14%(所得税10%+住民税4%)、6,000万円超の部分に20%を適用

措法35条: 所有期間の長短を問わず、居住用財産の売却益から最大3,000万円を控除。前年・前々年に同特例の適用を受けていないことが要件

措法36条の2: 所有期間10年超・譲渡対価1億円以下の居住用財産を買い換える場合に課税を繰り延べる特例

重複適用については、3,000万円控除と軽減税率(措法31条の3)は重複可能ですが、買換え特例との重複は不可です。試験では要件と重複可否の組み合わせが出題されやすいため、表を使って整理しておくことが効果的です。

所得税法の基本的な譲渡所得の計算方法を理解したうえで措法の特例を学ぶことで、税制全体の構造が把握できます。また、相続税法の土地評価とあわせて学習することで、不動産に関する税制の全体像が見えてきます。

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