/ 鑑定理論

過去と将来とにわたる長期的な考慮とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

不動産の属する地域は固定的なものではなく常に変化の過程にあるから、不動産の価格(又は賃料)は、通常、過去と将来とにわたる長期的な考慮の下に形成されるということです。つまり、今日の値段には、これまでの街の移り変わりと、これからの見通しの両方が織り込まれています。

過去と将来とにわたる長期的な考慮とは

駅の裏の古い住宅街で、一軒また一軒と店やマンションに建て替わっているとします。そこの家を買う人は、今の静かな住宅街の値段だけを見るのではなく、「十年前は畑だった」「十年後は商店街になりそうだ」という流れを見て値段を決めます。基準はこれを、地域は固定的なものではなく常に拡大縮小、集中拡散、発展衰退等の変化の過程にあるから、価格は過去と将来とにわたる長期的な考慮の下に形成される、と言います。だから今の使い方が一番良いか、その使い方をこの先も続けられるかは、いつも問い直さなければなりません。

過去と将来とにわたる長期的な考慮の図解:昨日の展開と明日の見通しの両方が、今日の値段に織り込まれている。

昨日の展開と明日の見通しの両方が、今日の値段に織り込まれている。

地域が固定的でないから、今の使い方を常に問い直します

理由は「地域は固定的なものではない」の一点です。街は広がったり縮んだり、人が集まったり散ったり、栄えたり衰えたりし続けています。地域が動くなら、今の利用形態が最適かどうか、仮に今は最適でも時の経過に伴ってそれを持続できるかどうかは、一度決めて終わりにできません。地域が動かないのなら、一度最適と決めた使い方をずっと続ければよく、問い直す必要はありません。

過去と将来とにわたる長期的な考慮の図解:まわりが動いているから、今の使い方が最適かを問い直す。

まわりが動いているから、今の使い方が最適かを問い直す。

過去と将来の両方を見て、どちらかに重みは付けません

基準は「過去と将来とにわたる」と両方を並べ、「今日の価格は、昨日の展開であり、明日を反映するもの」と続けます。過去は、地域がこれまでどう動いてきたかという事実で、資料で確かめられます。将来は、市場に参加する人がこの先をどう読んでいるかという予測で、価格はその予測を映して動きます(総論第4章の予測の原則)。将来の予測に限界があるからといって過去だけを重く見ると、明日を映すはずの価格から明日が抜け落ちます。

地域が変わるから、種別の転換や移行が起こります

地域が変化の過程にあるという第1章の考えを、第2章は種別の話として引き取ります。農地地域が宅地地域へ変わっていく途中の土地が見込地、住宅地域が商業地域へ変わっていく途中の土地が移行地です。畑の値段が畑としての収穫だけでは説明できず、将来の宅地としての値段に引っ張られるのは、この転換の途中にあるからです。過去と将来を見る考え方は、こうして種別の判定と価格の中身にまで及びます。

過去と将来とにわたる長期的な考慮の図解:農地地域が宅地地域へ変わる途中の畑は、見込地。

農地地域が宅地地域へ変わる途中の畑は、見込地。

不動産の属する地域は固定的なものではなくて、常に拡大縮小、集中拡散、 発展衰退等の変化の過程にあるものであるから、不動産の利用形態が最適なものであるかどうか、仮に現在最適なものであっても、時の経過に伴ってこれを持続できるかどうか、これらは常に検討されなければならない。したがって、不動産の価格(又は賃料)は、通常、過去と将来とにわたる長期的な考慮の下に形成される。

出典: 総論第1章 第2節

実務ではこう使う

評価書の地域分析では、その地域がこれまでどう変わってきたか、都市計画や開発の予定で今後どう変わるかを書き、価格時点の価格に将来の見通しを織り込みます。古い一軒家の評価でも、まわりでマンションへの建て替えが進んでいれば、いまの使い方を続けられるかを検討します。過去の取引事例を並べて時点修正を掛ければ済む、という仕事ではありません。

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