複数の鑑定評価の手法の適用とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説
鑑定評価の手法の適用に当たっては、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであるという定めです。つまり、一つの手法の答えだけで決めず、市場に合う手法を複数当てて答えを突き合わせます。
複数の鑑定評価の手法の適用とは
家の値段を一人の不動産屋の言い値だけで決める人は少なく、別の店にも聞き、近所の売り出し価格も見て、家賃の相場からも考えます。鑑定評価でも同じで、一つの手法で出た価格は、その手法の資料と前提の癖をそのまま背負っています。そこで基準は、手法の適用の段階で、地域分析及び個別分析でつかんだ市場の特性等、つまりこの不動産を誰がどんな目で買うのかに合った手法を、複数適用すべきと定めています。複数の答えを並べて初めて、次の段階である試算価格の調整に進めます。

買い手の見方に合う手法を、一つに絞らず複数当てる。
適用するのは、市場の特性等を反映した複数の手法です
基準が求めるのは「地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した」複数の手法です。市場の特性等とは、同一需給圏の市場参加者がどんな属性で、何を重視して値段を判断しているか、といった分析の結果です(総論第6章)。この語があるので、市場と関係なく使える手法を片端から全部使うという意味にはなりません。反対に、市場に最も合う手法が一つはっきりしていても、それだけで済ませてよいとも書いていません。複数の手法で市場の見方を映し合わせることが、この定めの中身です。
適用が困難でも、その考え方をできるだけ参酌します
対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等によって、複数の手法をそろえられない案件があります。取引がほとんど無い地域や、再調達原価を出しようがない土地などです。基準はそのときも、適用できない手法の「考え方をできるだけ参酌するように努めるべき」としています。数字としての試算価格は出せなくても、その方式が価格をどう見るかという見方を検討に織り込む、ということです。適用できなかった手法については、市場の特性に係る分析結果等に照らした合理的な理由を鑑定評価報告書に記載します(総論第9章第2節)。

事例が無くて数字は出せなくても、その方式の見方は検討に織り込む。
複数の方式の考え方を含む一つの手法は、複数の適用とみなせます
留意事項は、市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価方式の考え方が適切に反映された一つの手法を適用した場合には、それらの方式に即した複数の手法を適用したものとみなすことができるとしています。どの手法がこれに当たるかは名指ししていません。基準が三手法の考え方を活用した手法として挙げる開発法(総論第7章第1節)のように、販売総額から建築費や造成費を引く一つの計算の中に複数の方式の見方が入る手法が、これに当たり得ると読めます。みなせる決め手は、その一つの手法の中に複数の方式の考え方が入っていることであって、その手法が市場に最も合っていることではありません。

一枚の計算書の中に複数の方式の見方が入っていれば、複数の手法を適用したとみなせる。
手法の細かな適用は、各論と団体の指針で定まります
対象不動産の種別及び類型、賃料の種類、市場の特性等に対応した手法の適用に関し必要な事項は、各論各章に定めるもののほか、不動産鑑定士等の団体が定める指針で定めます(総論第8章第7節留意事項)。この指針は、手法の適用について具体的に記述されたもので、国土交通省との協議を経て団体で合意形成がなされたものに限られます。総論第8章は「複数の手法を」という枠を決め、どの類型にどの手法をどう使うかの細部は各論と指針に任せる、という分担です。
この場合、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。
出典: 総論第8章 第7節
なお、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価方式の考え方が適切に反映された一つの鑑定評価の手法を適用した場合には、当該鑑定評価でそれらの鑑定評価方式に即した複数の鑑定評価の手法を適用したものとみなすことができる。
出典: 総論第8章 第7節
実務ではこう使う
賃貸マンションの評価なら、投資家が収益で買う市場だと分析したうえで、収益還元法を軸に原価法と取引事例比較法も適用し、三つの試算価格を次の調整の段階に渡します。土地建物一体の取引事例がほとんど無く比準価格を求められないときは、市場性の見方を検討に織り込んだうえで、適用できなかった理由を評価書に記載します。開発法のように複数の方式の考え方を含む手法を使ったときは、どの方式の考え方をどう反映したかを手法の適用の項で説明します。
関連用語
アプリで学習
基準ビューワー × 穴埋めドリルで効率的に学ぶ
鑑定評価基準の原文をスマホで閲覧しながら、穴埋めドリルや論証トレーニングで知識を定着。 短答式・論文式どちらの対策にも対応しています。
年額プランなら1日わずか27円