/ 鑑定理論

手法の適用ができない場合の合理的な理由とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じて各論第1章から第3章が定める鑑定評価の手法を適用できないとき、対象不動産の市場の特性に係る分析結果等に照らして報告書に記載する理由です。つまり、本来使うはずの手法を使わなかったなら、その市場ではなぜ使えないのかを説明します。

手法の適用ができない場合の合理的な理由とは

医者が三つの検査のうち一つを省いたら、カルテに「なぜ省いたか」を書きます。鑑定評価も同じで、総論第8章は市場の特性を反映した複数の手法を適用すべきだとし、各論は種別・類型・賃料の種類ごとに使う手法を定めています。定められた手法を使わないのは例外なので、例外には理由が要ります。ただし「事例が見つからなかった」と一言書くだけでは足りず、その種類の不動産の市場がどうなっているかの分析結果に結びつけて書きます。これが留意事項の定める「合理的な理由」です。

手法の適用ができない場合の合理的な理由の図解:各論が定めた手法を外すなら、その市場でなぜ使えないかを書く。

各論が定めた手法を外すなら、その市場でなぜ使えないかを書く。

各論がその類型に定めた手法を外すときに、理由が要ります

各論は類型ごとに手法を定めています。貸家及びその敷地なら収益価格を標準に積算価格と比準価格を比較考量し、農地なら比準価格を標準に収益価格を参考にし、底地なら収益価格と比準価格を関連づけます。だから貸家及びその敷地で取引事例比較法を、農地で収益還元法を使わなかったなら、各論が予定した手法を外したことになり、理由の記載が要ります。反対に、底地で原価法を使わなくても、各論はもともと底地に原価法を予定していないので、「適用ができない場合」に当たらず、理由は要りません。

手法の適用ができない場合の合理的な理由の図解:各論の棚に載っている手法を外したときだけ、理由が要る。

各論の棚に載っている手法を外したときだけ、理由が要る。

理由は、市場の特性に係る分析結果等に照らして書きます

手法を使えない原因は、多くの場合、対象不動産の市場の側にあります。大規模工場の底地のように取引そのものがほとんど無い、あるいは賃貸市場が成り立っていない、といった事情です。留意事項は「市場の特性に係る分析結果等に照らし」と定めるだけで理由は書いていませんが、「資料が無かった」だけでは鑑定士の探し方の問題とも読めるのに対し、地域分析で把握した市場の特性から説明できれば、その手法を外しても額の説得力が保てることを第三者に示せるからだと考えられます。

継続賃料の四つの手法も同じ扱いです

各論第2章は、継続賃料を差額配分法による賃料、利回り法による賃料、スライド法による賃料及び比準賃料を関連づけて決定するとしています。この四つも各論が定めた手法なので、いずれかを適用できないときは、同じように合理的な理由を報告書に記載します。価格の手法だけの決まりではなく、賃料の手法にも同じ考え方が及びます。

対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じた各論第1章から第3章に規定する鑑定評価の手法の適用ができない場合には、対象不動産の市場の特性に係る分析結果等に照らし、その合理的な理由を記載する。

出典: 総論第9章 第2節

実務ではこう使う

大規模工場の底地の評価で、鑑定士は取引事例を探しても同種の底地の取引が市場にほとんど無いことを確かめ、評価書には「同一需給圏において大規模工場の底地の取引はきわめて少なく、比準価格を求めるに足る事例を収集できなかった」と市場分析の結果に照らして書きます。適用した収益還元法の妥当性も、同じ市場分析から説明します。手法を省いた理由が薄い評価書は、審査や訴訟で真っ先に突かれます。

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