/ 鑑定理論

対象不動産に係る市場の特性とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

対象不動産が取引される同一需給圏の市場について、市場参加者がどのような属性を持ち、どのような観点から不動産の利用形態を選んで価格形成要因を判断しているか、そして市場の需給がどう動いているか、という特徴です。つまり「誰が、何を見て買い、売り物と買い手はどちらへ動いているか」を、地域分析の中で把握したものです。

対象不動産に係る市場の特性とは

駅から歩いて十分の土地が二つあっても、子育て世帯が学区と駅までの道で選ぶ街と、投資家が利回りだけで選ぶ街では、値段の決まり方がまるで違います。同じ街でも、売り物が積み上がっている時期と、買い手が待っている時期では、決まる値段が変わります。地域分析は「どんな地域か」だけでなく、その不動産が取引される市場がどのような特性を持つかまで分析し、判定します。この、誰がどんな観点で選び、需給がどう動いているかという特徴が、対象不動産に係る市場の特性です。

対象不動産に係る市場の特性の図解:同一需給圏の市場で、誰が、何を見て買い、需給はどう動いているか。

同一需給圏の市場で、誰が、何を見て買い、需給はどう動いているか。

観点は市場参加者の属性及び行動と、市場の需給動向の二つです

基準は、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有し、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要だ、と定め、あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある、と続けます。前半が市場参加者の属性及び行動、後半が市場の需給動向で、留意事項はこの二つを把握の観点として並べています。人の側と、売り物と買い手の量の側の両方を見て初めて、その市場で値段がどう決まるかが分かるからです。属性として見る項目は業務用不動産と居住用不動産で異なります。基準は住宅地の同一需給圏の判定について、地域の名声、品位等による選好性の強さが同一需給圏の地域的範囲に特に影響を与える場合があることに留意を求めており、これは、居住用不動産の市場の特性を把握するときにも、この名声や品位が買い手の選び方と需給に効いていないかを見る、と読めます。

対象不動産に係る市場の特性の図解:人の側(属性と行動)と、売り物と買い手の量の側(需給動向)の両方を見る。

人の側(属性と行動)と、売り物と買い手の量の側(需給動向)の両方を見る。

資料は、平素からの聴聞と公表資料の両方でそろえます

留意事項は、平素から不動産業者、建設業者及び金融機関等からの聴聞等によって、取引件数、取引価格、売り希望価格、買い希望価格等の取引の情報を集めておくことを求めています。あわせて、公的機関、不動産業者、金融機関、商工団体等が出す地域経済や不動産市場の推移及び動向に関する公表資料を幅広く集めて分析することが重要だ、とも定めています。取引の現場にいる人の生の声と、数字でまとめられた公表資料は役目が違い、どちらか一方では市場の姿が片寄るからです。「平素から」とあるのは、留意事項に理由は書かれていませんが、依頼が来てから集め始めたのでは推移という時間の流れがつかめないため、と考えられます。

対象不動産に係る市場の特性の図解:業者や金融機関への聴聞と、公表資料の両方を、ふだんから集めておく。

業者や金融機関への聴聞と、公表資料の両方を、ふだんから集めておく。

結果は標準的使用の判定と、手法や試算価格の調整にも使います

基準は、把握した市場の特性を、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに、鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきだ、と定めています。地域分析の中で書いて終わりではなく、どの取引事例を選ぶか、どの利回りを使うか、どの試算価格を重く見るかという後の判断まで、この把握結果が支えます。近隣地域の範囲を決めるときや、類似地域と比べて地域要因の格差を判定するときも、市場の特性を踏まえて行います。

地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。

出典: 総論第6章 第1節

実務ではこう使う

評価の前に、地元の仲介業者や金融機関に「最近この辺を買っているのはどんな人か」「いくらなら決まるか」「売り物は増えているか」を聞き、公表されている成約動向や空室率の資料と突き合わせます。その結果を評価書の市場分析の欄に、需要者の姿、重視する要因、需給の推移として書きます。標準的使用の判定や、事例の選び方、利回りの判断の根拠にもなります。

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