/ 鑑定理論

実質賃料の併記とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

支払賃料の鑑定評価を依頼された場合に、支払賃料である旨を付記して支払賃料の額を表示するとともに、その支払賃料が実質賃料と異なるときは、かっこ書きで実質賃料である旨を付記して実質賃料の額を併記する記載の決まりです。つまり、月々の家賃を鑑定評価額にするときは、敷金や礼金の分まで含めた賃料の全体も横に添えます。

実質賃料の併記とは

店舗を借りるとき、毎月払う家賃のほかに、礼金や敷金といった一時金を最初に払うことがあります。貸主の手取りは毎月の家賃だけではなく、一時金を運用した利益や、返さない分の償却額も入ってきます。この全部を合わせた経済的対価が実質賃料で、毎月払う額が支払賃料です。一時金があると二つの額はずれるので、支払賃料を鑑定評価額として示すときは、実質賃料をかっこ書きで添えて、読む人が賃料の全体を見られるようにします。

実質賃料の併記の図解:月々の支払賃料の横に、一時金の分まで含めた実質賃料を添える。

月々の支払賃料の横に、一時金の分まで含めた実質賃料を添える。

併記するのは、支払賃料が実質賃料と異なるときだけです

一時金の授受が無ければ、支払賃料と実質賃料は同じ額になります。基準は「支払賃料が実質賃料と異なる場合」に限ってかっこ書きの併記を求めます。理由は書かれていませんが、同じ額を二度書いても読む人に伝わる情報は増えないから、と読めます。礼金や敷金があって二つの額がずれるときに、初めて併記が要ります。

実質賃料の併記の図解:一時金があれば併記し、一時金が無ければ同額なので併記しない。

一時金があれば併記し、一時金が無ければ同額なので併記しない。

実質賃料を求めたときに、支払賃料を添える定めはありません

基準の文は「支払賃料の鑑定評価を依頼された場合」から始まり、その場合の実質賃料の併記だけを定めています。実質賃料の鑑定評価を依頼されたときに、支払賃料の額を添える決まりは基準にありません。基準は理由を書いていませんが、実質賃料は貸主が受け取る経済的対価のすべてなので、それだけで賃料の全体を表せます。一方の支払賃料は、一時金の条件が決まらなければ一つに決まらないので、実質賃料に添える額としてなじまないと考えられます。

決定の理由の要旨には、支払賃料と実質賃料との関連を書きます

鑑定評価額の決定の理由の要旨の「その他」の項目として、支払賃料を求めた場合には、その支払賃料と実質賃料との関連を記載します。かっこ書きの併記が二つの額を並べるのに対し、要旨に書く「関連」の中身は基準に細かく書かれていませんが、一時金の条件や運用益の考え方など、二つの額がどう結びつくのかを説明するものと読めます。同じ項目で、継続賃料を求めた場合には直近合意時点について記載することも定められています。

また、総論第7章第2節Ⅰ1.に定める支払賃料の鑑定評価を依頼された場合における鑑定評価額の記載は、支払賃料である旨を付記して支払賃料の額を表示するとともに、当該支払賃料が実質賃料と異なる場合においては、かっこ書きで実質賃料である旨を付記して実質賃料の額を併記するものとする。

出典: 総論第9章 第2節

総論第7章第2節Ⅰ1.に定める支払賃料を求めた場合には、その支払賃料と実質賃料との関連を記載しなければならない。また、継続賃料を求めた場合には、直近合意時点について記載しなければならない。

出典: 総論第9章 第2節

実務ではこう使う

店舗の新規賃料で、依頼者が「敷金と礼金を前提にした月額を知りたい」と言えば支払賃料の評価になります。評価書では月額の支払賃料を鑑定評価額として示し、一時金の運用益と償却額を足した実質賃料をかっこ書きで添え、理由の要旨で一時金の条件とその関連を説明します。一時金を取らない契約なら二つは同額で、併記は不要です。

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