/ 鑑定理論

正常価格の併記とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

正常価格又は正常賃料を求めることができる不動産について、依頼目的に対応した条件により限定価格、特定価格又は限定賃料を求めた場合に、かっこ書きで正常価格又は正常賃料である旨を付記してそれらの額を併記する記載の決まりです。つまり、条件付きの値段を鑑定評価額にするときは、条件のない市場の値段も横に添えます。

正常価格の併記とは

隣の土地を買い足す人にとっての値段(限定価格)は、誰でも買える市場での値段(正常価格)より高くなることがあります。限定価格の額だけ見せられても、読む人はどれだけ上乗せされているのか分かりません。そこで報告書の鑑定評価額の欄には限定価格を書き、その脇に「(正常価格 ○○円)」と添えます。この添え書きが正常価格の併記で、賃料なら限定賃料に正常賃料を添えます。

正常価格の併記の図解:限定価格の横に、かっこ書きで正常価格を添える。

限定価格の横に、かっこ書きで正常価格を添える。

併記が要るのは、限定価格・特定価格・限定賃料の三つです

三つとも、正常価格や正常賃料を求めることができる不動産について、依頼目的に対応した条件を付けて求める価格や賃料です。条件の分だけ正常価格からずれるので、そのずれを読む人が見比べられるように、基準は正常価格又は正常賃料の額を併記させます。基準は理由を書いていませんが、かっこ書きで「正常価格である旨を付記」させるのは、二つの額のどちらが鑑定評価額なのかを読む人が取り違えないため、と読めます。

特殊価格と継続賃料には、併記が求められません

特殊価格は、文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提に求める価格です。継続賃料は、賃貸借等の継続に係る特定の当事者間で成立する賃料です。基準は併記の対象を限定価格・特定価格・限定賃料の三つに限って定めており、この二つに正常価格や正常賃料を併記する決まりは置いていません。理由は書かれていませんが、どちらも市場で誰でも取引する前提ではなく、利用現況や特定の当事者を前提にした価格・賃料なので、市場の水準と見比べさせる併記になじまないから、と読めます。特殊価格を求めたときは、併記ではなく、依頼目的と価格の種類との関連の項目で文化財の指定の事実等を明らかにします。

正常価格の併記の図解:文化財の特殊価格と、貸し続けている店舗の継続賃料には、かっこ書きの欄がない。

文化財の特殊価格と、貸し続けている店舗の継続賃料には、かっこ書きの欄がない。

かっこ書きの併記は、基準が定めた二つだけです

総論第9章がかっこ書きの併記を定めているのは、この正常価格又は正常賃料の併記と、支払賃料を求めた場合の実質賃料の併記の二つです。建物が建っている土地を建物が無いものとして評価する独立鑑定評価では、対象確定条件の内容と妥当だと判断した根拠を明らかにし、必要があると認められるときに条件が設定されない場合の価格等の参考事項を記載します。建物及びその敷地の額をかっこ書きで併記する決まりは、基準にはありません。

正常価格又は正常賃料を求めることができる不動産について、依頼目的に対応した条件により限定価格、特定価格又は限定賃料を求めた場合は、かっこ書きで正常価格又は正常賃料である旨を付記してそれらの額を併記しなければならない。

出典: 総論第9章 第2節

実務ではこう使う

隣地の買い増しで限定価格を求めた評価書では、鑑定評価額の欄に限定価格を示し、その下にかっこ書きで正常価格の額を添えます。依頼者はその差額を見て、隣地を買うためにどれだけ上乗せしているかを把握できます。特殊価格の評価書ではこの併記は無く、文化財の指定の事実等を明らかにします。

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