/ 鑑定理論

鑑定評価書の利用者とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

依頼者及び提出先等のほか、法令等に基づく不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえ販売される金融商品の購入者等をいいます。つまり、その評価書の数字をもとに何かを判断する人すべてで、条件を付けてよいかどうかは、この人たちの利益を害するおそれがないかで決めます。

鑑定評価書の利用者とは

評価書を読むのは依頼者だけではありません。融資の可否を決める銀行、投資先を選ぶ投資家のように、評価額をもとに自分のお金の判断をする人が後ろに控えています。基準はこの人たちをまとめて鑑定評価書の利用者と呼びます。現実と違う条件を付けて評価するとき、その条件で困るのは、依頼者よりむしろ後ろにいる人たちです。だから条件設定の妥当性は、この利用者の利益を害するおそれがないかどうかで確かめます。

鑑定評価書の利用者の図解:評価書の数字で判断する人は、依頼者の後ろにも並んでいる。

評価書の数字で判断する人は、依頼者の後ろにも並んでいる。

利用者は、依頼者から金融商品の購入者等まで三段に広がります

一段目は依頼者です。二段目は提出先等で、評価書が依頼者以外に提出される場合の提出先と、評価額が依頼者以外に開示される場合の開示の相手方を指します(総論第8章第2節)。三段目は、法令等に基づく鑑定評価を踏まえて販売される金融商品の購入者等で、投資法人の投資口を買う投資家のように、評価書を直接受け取らない人まで含みます。この定義から、評価書を手にするかどうかではなく、その数字で判断するかどうかで利用者が決まると読めます。

条件を付けてよいかは、この利用者の利益で判断します

対象確定条件は、依頼目的に照らして利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点から妥当性を確認して設定します。想定上の条件も同じ観点が要り、調査範囲等条件は、設定しても利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合に限って設定できます。条件が変われば評価額が変わり、その評価額で判断するのは利用者だからです。隣地の所有者や建物の入居予定者のように、評価書で判断する立場にない人は、この判断の相手ではありません。

害するおそれとは、利用者が影響を自分で判断できないことです

留意事項は、現実の利用状況と異なる対象確定条件を設定した場合に、その相違が価格に与える影響の程度等を利用者が自ら判断することが困難と判断されるとき、利益を害するおそれがあるとしています。現実と違う条件を付けただけで、直ちに害するおそれがあるわけではありません。銀行が「建物が無いものとして」という条件を読み、建物分の影響を自分で見積もれるなら、条件を付けて評価できます。読み手に影響の大きさが見当もつかないなら、条件を付けてはいけません。

鑑定評価書の利用者の図解:条件の影響を読み手が自分で見積もれるかどうかで決まる。

条件の影響を読み手が自分で見積もれるかどうかで決まる。

重大な影響が及ぶ場面では、条件設定が原則禁止です

証券化対象不動産の鑑定評価や、会社法上の現物出資の目的となる不動産の鑑定評価のように、評価が利用者の利益に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、現況と異なる対象確定条件、想定上の条件、調査範囲等条件を原則として設定できません。基準に理由は書かれていませんが、利用者が多く、一人ひとりが影響を自分で判断しにくい場面だからと考えられます。この原則に基準が付けている例外は、証券化対象不動産で各論第3章第2節の要件を満たす未竣工建物等鑑定評価です。

鑑定評価書の利用者の図解:投資家が大勢いる証券化では、現況と異なる条件は原則付けない。

投資家が大勢いる証券化では、現況と異なる条件は原則付けない。

「鑑定評価書の利用者」とは、依頼者及び提出先等(総論第8章第2節で規定されるものをいう。)のほか、法令等に基づく不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえ販売される金融商品の購入者等をいう。

出典: 総論第5章 第1節

実務ではこう使う

受付の段階で「この評価書は誰が読み、誰の判断に使われるのか」を依頼者に確かめます。金融機関への提出、投資家への開示、株主への説明のように利用者の範囲が広いほど、現況と異なる条件は避けます。設定するなら、現況との違いと価格への影響を評価書に書き、読み手が自分で判断できるようにします。

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