/ 鑑定理論

個別分析とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

対象不動産の個別的要因が、対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力を持っているかを分析して、その最有効使用を判定することです。つまり、地域の普通の使われ方を土台に、この土地・この建物に最も合う使い方を決める作業です。

個別分析とは

同じ住宅街の中でも、角地で広い土地と、奥まった細長い土地では、建てられる家も買い手も違います。地域分析で「このあたりは戸建住宅の街」と分かっても、それだけでは目の前の一区画にどんな使い方が一番合うかは決まりません。そこで、その不動産だけが持つ事情(個別的要因)が使われ方と価格にどう効くかを分析し、最有効使用を判定します。これが個別分析です。不動産の価格は最有効使用を前提とした価格を標準に形成されるので、鑑定評価に当たっては、対象不動産の最有効使用を判定する必要があります。

個別分析の図解:同じ街の中でも、土地ごとの事情で最も合う使い方は変わる。

同じ街の中でも、土地ごとの事情で最も合う使い方は変わる。

個別分析の結論は、対象不動産の最有効使用です

基準の定義で分析するものは対象不動産の個別的要因で、判定するものはその最有効使用です。地域分析が地域要因を分析して近隣地域の標準的使用を判定するのと、主語も結論も対になっています。個別的要因は対象不動産の市場価値を個別的に形成しているので、分析では、対象不動産の典型的な需要者がどの個別的要因に着目して行動し、代替・競争の関係にある不動産と比べた優劣や競争力の程度をどう評価しているかを的確に把握することが重要だとされています。買い手が何を見て隣の物件と比べるか、が分析の中心です。

地域分析だけでは、個別分析の代わりになりません

個々の不動産の最有効使用は、一般に近隣地域の地域の特性の制約下にあります。だから個別分析では、近隣地域の標準的使用との相互関係を明らかにして判定しますが、地域の普通の使い方が分かっただけで最有効使用が決まることはありません。対象不動産の位置、規模、環境等によっては標準的使用と異なる用途の可能性もあり、その場合はそれぞれの用途に対応した個別的要因の分析を行った上で判定します。地域要因と重なって見える個別的要因についても、地域分析を丁寧にしたからといって個別的要因の分析を省くことはできません。基準は、一般的要因の分析とともに、地域分析及び個別分析を通じて最有効使用を判定しなければならないと定めています。

個別分析の図解:地域の普通の使い方が分かっても、この一区画の中身を見ないと最有効使用は決まらない。

地域の普通の使い方が分かっても、この一区画の中身を見ないと最有効使用は決まらない。

建物を壊す場合でも、建物の個別的要因は分析します

現実の建物の用途等が更地としての最有効使用と一致していないときは、用途を継続する場合の経済価値と、取壊しや用途変更に要する費用等を勘案した経済価値を十分に比較考量します。この比較では、物理的・法的に見た取壊しや用途変更の実現可能性、その後の競争力を踏まえた収益の変動予測の不確実性、工事期間中の逸失利益の程度に留意します。どれも建物の構造や状態や用途といった建物の個別的要因を見なければ判断できないので、取り壊す結論になる場合でも建物の分析は省けません。他の専門家による解体費の見積書は費用等を把握する資料としては役立ちますが、実現可能性や継続した場合の経済価値まで分かるわけではないので、建物の分析の代わりにはなりません。

個別分析の図解:解体の見積書で分かるのは費用だけ。壊せるか、続けたらいくらかは建物を見て分析する。

解体の見積書で分かるのは費用だけ。壊せるか、続けたらいくらかは建物を見て分析する。

分析結果は、手法の適用や試算価格の調整にも使います

個別的要因の分析結果は、最有効使用の判定に使って終わりではありません。基準は、鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきだと定めています。取引事例と比べるときの個別的要因の格差、収益還元法で見込む純収益、複数の試算価格のどれをどれだけ信頼するかの判断は、いずれもこの分析から出てきます。

個別分析とは、対象不動産の個別的要因が対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力を持っているかを分析してその最有効使用を判定することをいう。

出典: 総論第6章 第2節

実務ではこう使う

現地調査では、接道・形状・規模・建物の状態といった対象不動産固有の事情を確かめ、その物件を買うのは誰か、その人が何を見て競合物件と比べるかを考えます。そのうえで近隣地域の標準的使用と照らして最有効使用を決め、評価書に判定の理由を書きます。分析で分かった強みと弱みは、事例との比較や利回りの判断にもそのまま使います。

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