/ 鑑定理論

典型的な需要者とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

個別的要因の分析で視点の主となる、対象不動産に係る需要者のうち市場で標準的に想定される買い手です。つまり、依頼者でも鑑定士でもなく、その不動産を買いに来るのはどんな人かを定め、その人がどこを見て値段を判断しているかを把握します。

典型的な需要者とは

駅前の広い更地を売りに出すと、買いに来るのはマンションの開発業者で、隣の小さな土地なら家を建てたい家族です。同じ土地でも、買う人が違えば見る所が違います。開発業者は容積率と間口を見て、家族は日当たりと学区を見ます。基準はこの「買いに来る人」を対象不動産に係る典型的な需要者と呼び、個別的要因(その不動産だけが持つ条件)の分析は、この需要者がどの要因に着目して行動するかをつかむところから始めます。

典型的な需要者の図解:同じ土地でも、買うのが開発業者か家族かで見る所が変わる。

同じ土地でも、買うのが開発業者か家族かで見る所が変わる。

着目する個別的要因は、典型的な需要者が決めます

個別的要因は、対象不動産の市場価値を個別的に形成しているものです。ただ、その要因がどれだけ値段に効くかは、要因そのものではなく、買う人が何を見るかで決まります。更地の典型的な需要者がマンション開発業者なら、開発業者がどの個別的要因に着目して価格等の判断をするかを分析します。需要者の姿を決めないまま要因を並べても、どれが重いのか分からず、個別分析になりません。地域分析では同一需給圏における市場参加者の属性及び行動を把握しますが、それを対象不動産一つに引き寄せて見た買い手が、この典型的な需要者だと読めます。

視点の主は市場の需要者で、依頼者ではありません

鑑定評価は依頼者から頼まれて行いますが、値段を付けるのは市場です。依頼者が「うちは眺めが自慢だ」と重く見ても、買い手が眺めを気にしなければ価格には効きません。だから基準は、着目する要因を決める主を対象不動産に係る典型的な需要者に置き、依頼者の希望や事情には置いていません。依頼者の事情は、鑑定評価の依頼目的や条件として扱う別の事柄です。

典型的な需要者の図解:依頼者が重く見る所ではなく、買い手が重く見る所で要因の重さを決める。

依頼者が重く見る所ではなく、買い手が重く見る所で要因の重さを決める。

需要者の視点は、手法の適用と報告書の記載にまで及びます

個別的要因の分析は最有効使用を判定するためのものですが、基準はその分析結果を、鑑定評価の手法の適用や試算価格・試算賃料の調整等の判断にも反映すべきだとしています。取引事例と比べるときも、収益を見積もるときも、典型的な需要者が重く見る要因を重く扱う、という一貫した姿勢です。さらに鑑定評価報告書には、同一需給圏における典型的な市場参加者の行動と、代替、競争等の関係にある不動産と比べた対象不動産の優劣及び競争力の程度等を記載しなければなりません(総論第9章)。個別分析で置いた需要者の姿が、そのまま報告書の記載につながります。

個別的要因は、対象不動産の市場価値を個別的に形成しているものであるため、個別的要因の分析においては、対象不動産に係る典型的な需要者がどのような個別的要因に着目して行動し、対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度をどのように評価しているかを的確に把握することが重要である。

出典: 総論第6章 第2節

実務ではこう使う

郊外の大規模な土地なら「典型的な需要者は物流施設の開発業者で、高速道路のインターまでの距離と敷地の形状・地盤を最も重視する」、駅近の小さな土地なら「典型的な需要者は戸建て分譲業者で、区画割りのしやすさと前面道路の幅を見る」というように、評価書で需要者の姿とその着眼点を先に書きます。以後の要因比較や利回りの判断は、この需要者の姿をもとに進めます。

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