/ 鑑定理論

市場参加者とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

正常価格が成立する「合理的と考えられる条件を満たす市場」に参加する売り手と買い手で、自己の利益を最大化するため五つの要件を満たし、慎重かつ賢明に予測し、行動する者です。つまり、焦らず、調べ、手間をかけ、最有効使用で考え、普通に資金を用意できる、まともな売り手と買い手を想定しています。

市場参加者とは

中古住宅を買う人を思い浮かべてください。転勤で急いでいるわけでもなく、周りの相場を調べ、何軒か内見し、住宅ローンの事前審査も通した人と、事情があって明日までに現金が要る売り手とでは、付く値段が違います。基準は、正常価格が成立する市場の主役として前者のような人を想定し、その人が備えているべき要件を五つ挙げて「市場参加者」と呼びます。第3章で価格形成要因を「市場参加者の観点」から把握するときの市場参加者も、この売り手と買い手のことです。

市場参加者の図解:焦らず、調べ、手間をかけ、一番良い使い方で考え、資金も用意できる買い手。

焦らず、調べ、手間をかけ、一番良い使い方で考え、資金も用意できる買い手。

要件は五つで、動機・知識・労力・最有効使用・資金です

一つ目は、売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な動機のないこと。二つ目は、対象不動産とその属する市場について、取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。三つ目は、取引を成立させるために通常必要と認められる労力、費用を費やしていること。四つ目は、対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと。五つ目は、買主が通常の資金調達能力を有していることです。主体を「買主が」と限っているのは五つ目だけで、基準に理由は書かれていませんが、代金を用意するのは買う側だからと考えられます。

慎重かつ賢明に予測し、行動する姿勢まで含めて想定します

基準は五つの要件に加えて、市場参加者は「自己の利益を最大化するため」「慎重かつ賢明に予測し、行動する」と書きます。知識や資金があっても、それを使わずに勘で決める人では、市場価値と呼べる値段になりません。集めた情報から先行きを予測し、損をしないように賢く動く人が値段を作る主役だ、という前提です。

価値判断は、対象不動産の最有効使用を前提に行います

四つ目の要件は、市場参加者が対象不動産の最有効使用、つまりその不動産から最も高い効用を引き出せる使い方を前提に値段を考えることです。古い木造アパートが建つ土地でも、買い手は「取り壊してマンションを建てられるか」まで考えて値段を付けますよね。ただし建物とその敷地を一体で評価するときは、現実の建物の用途が更地としての最有効使用と合っていなくても、その建物及びその敷地としての最有効使用を前提に正常価格を求めます。更地の最有効使用に置き換えて考えるわけではありません。

市場参加者の図解:買い手は一番良い使い方で値段を付ける。建物付きなら、その建物と敷地としての最有効使用。

買い手は一番良い使い方で値段を付ける。建物付きなら、その建物と敷地としての最有効使用。

買い手が相対的に限られても、市場参加者の前提は崩れません

ホテルやゴルフ場のような事業用不動産は、買えるのは同業の事業者や投資家に限られます。それでも、その限られた買い手が五つの要件を満たして慎重かつ賢明に動くなら、正常価格の市場概念はそのまま成り立ち、求める価格は基本的に正常価格です。特定価格は法令等による社会的要請を背景とする目的で求める価格で、参加者の人数の多い少ないで決まるものではありません。

市場参加者の図解:ゴルフ場の買い手は少なくても、要件を満たす市場参加者。

ゴルフ場の買い手は少なくても、要件を満たす市場参加者。

なお、ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。

出典: 総論第5章 第3節

実務ではこう使う

取引事例を選ぶときは、売主と買主がこの五つの要件を満たす取引だったかを見て、親族間の恩恵的な取引や倒産による売り急ぎなら事情補正を検討します。市場分析では、対象不動産の典型的な需要者がどんな知識と資金力で判断するかを想定し、それに沿った収益や利回りの前提を置きます。

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