農地の賃貸借の対抗力とは?農地法での意味を図でわかりやすく解説
農地又は採草放牧地の賃貸借は、その登記がなくても、引渡しがあったときは、その後その土地について物権を取得した第三者に対抗することができる、という定めです(16条)。つまり、田んぼを引き渡されて耕していれば、地主が代わっても借り続けられます。
農地の賃貸借の対抗力とは
田んぼを借りて何年も耕してきたところへ、ある日「この土地は私が買った。出て行ってほしい」と知らない人が来る。民法では、賃借権は登記しなければ新しい所有者に対抗できませんが、農地の賃貸借で登記までする人はほとんどいません。そこで農地法16条は、登記がなくても引渡しを受けていれば、その後に所有権などの物権を取得した第三者に賃借権を主張できることにしました。借家人が建物の引渡しで守られる借地借家法と同じ考え方で、耕している人をその土地から追い出させないための規定です。

引渡しを受けて耕していれば、登記がなくても新しい地主に対抗できる。
民法の登記の原則を、引渡しで置き換えた規定です
民法605条は、不動産の賃貸借は登記をすれば物権を取得した者に対抗できると定めます。農地の賃貸借は小さな面積の口約束で始まることが多く、登記を求めると借り手がほとんど守られません。16条は、登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡しがあったときは、これをもってその後に物権を取得した第三者に対抗できると定め、引渡しに登記と同じ役目を持たせました。条文に引渡しの定義はありませんが、田や畑を借り手が実際に使える状態で受け取ることを指し、耕作を始めていればまず足りる、と読めます。
対抗できる相手は、引渡しの後に物権を取得した第三者です
条文は「その後その農地又は採草放牧地について物権を取得した第三者」と書いています。地主が田を売った場合の新しい所有者や、その田に抵当権を取得した者がこれに当たります。順番が要件で、引渡しの前にすでに物権を取得していた者には、賃借人のほうが後から来たことになるので対抗できません。物権を取得した第三者だけが相手で、地主本人との関係は契約そのもので決まります。

引渡しが先、売買が後。この順番なら新所有者に対抗できる。
使用貸借は守られず、賃貸借の契約は書面にします
16条が対象にするのは賃貸借だけで、借賃を払わずに借りる使用貸借は入りません。使用貸借で農地を借りている人は、引渡しを受けていても、地主が代わればその新しい所有者に対抗できません。賃貸借契約については、当事者は書面によって存続期間、借賃等の額と支払条件、その他の契約内容を明らかにしなければなりません(21条)。条文に理由は書いてありませんが、対抗力の強い権利だからこそ、いつからいくらで借りているかを書面で確かめられるようにしている、と読めます。

借賃を払う賃貸借は守られ、ただで借りる使用貸借は守られない。
農地又は採草放牧地の賃貸借は、その登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があつたときは、これをもつてその後その農地又は採草放牧地について物権を取得した第三者に対抗することができる。
出典: 農地法 16条
実務ではこう使う
農地の賃貸借は登記されないことが多いので、底地や貸付農地の評価では、登記簿ではなく現地で耕作者を確かめ、引渡しによる対抗力のある賃借権が付いているものとして負担を反映します。農地の賃借権は解約に都道府県知事の許可が要る強い権利なので、耕作権の負担は価格に大きく響きます。
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