当事者間で事実の主張が異なる事項とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説
対象不動産に関し、争訟等の当事者の間で事実についての主張が食い違っている事項で、それが判明している場合には、報告書の決定の理由の要旨にその事項の取扱いを記載します。つまり、貸主と借主の言い分が違うとき、どちらの言い分をどう前提にして評価したかを書き残します。
当事者間で事実の主張が異なる事項とは
賃料の増額をめぐる裁判で、貸主は「五年前に値上げの約束があった」と言い、借主は「そんな約束はしていない」と言う、という場面があります。鑑定士は裁判官ではないので、どちらが本当かを決める立場にはありません。けれども、どちらを前提にするかで継続賃料の額は変わります。だから基準は、争訟等の当事者間で主張が異なる事項が判明しているときは、その事項をどう扱って評価したかを報告書に書くよう求めています。読み手は、前提が変われば結論がどう変わるかを、その記載から判断できます。

言い分が食い違う事実は、どちらを前提にしたかを書いて評価する。
事実の争いを裁くのは裁判所で、鑑定士は取扱いを書きます
基準は「当該事項に関する取扱いについて記載しなければならない」と定めるだけで、主張が異なるときは鑑定評価をやめる、という定めも、鑑定士がどちらの主張が正しいかを決める、という定めもありません。契約締結の経緯や賃料改定の合意内容について貸主と借主の認識が食い違っていても、鑑定評価は行えます。争いがあるからこそ、額の前提を明らかにしないと、第1節が求める第三者への説明ができなくなります。
記載に当事者の同意は要りません
基準が定める要件は「判明している場合には」だけで、当事者の同意を得ることは求めていません。基準に理由は書かれていませんが、争訟の当事者は利害が対立しているので、一方が「その話は書かないでほしい」と言えば書けない、という決まりにすると、記載が当事者の意向に左右されます。それでは、第三者に決定の理由を説明できるようにするという趣旨が壊れます。

当事者が書かないでほしいと言っても、判明した事項の取扱いは書く。
条件を設定して評価した場合も、取扱いは記載します
一方の主張を前提とする条件を設定して評価することはあります。その場合も、主張が異なる事項があるという事実と、どちらを前提にしたかという取扱いは、決定の理由の要旨に書きます。基準は条件設定の有無で記載の要否を分けていません。条件を設定したなら、その内容と根拠は別の記載事項である「鑑定評価の条件」にも書き、両方の記載が合わさって、読み手は前提と結論のつながりを追えます。
対象不動産に関し、争訟等の当事者間において主張が異なる事項が判明している場合には、当該事項に関する取扱いについて記載しなければならない。
出典: 総論第9章 第2節
実務ではこう使う
賃料増額請求の訴訟で裁判所や一方の当事者から継続賃料の評価を依頼されたとき、鑑定士は貸主と借主の主張が食い違う点(直近合意時点はいつか、改定の約束があったか等)を整理し、評価書に「本件では甲の主張する時点を前提とした」「乙の主張については採用しなかった理由」といった形で取扱いを書きます。裁判所はその記載を見て、前提が変われば結論がどう変わるかを判断します。
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