/ 鑑定理論

投資採算価値を表す価格とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

証券化対象不動産に係る鑑定評価目的の下で、投資家に示すために求める、対象不動産の収益力を反映した価格です。つまり、投資家に開示される運用方法をそのまま前提にして「この物件で採算が取れるか」を示す価格で、その運用方法が最有効使用と異なれば特定価格になります。

投資採算価値を表す価格とは

リート(投資法人)は、多くの投資家からお金を集めてビルや賃貸マンションを買い、家賃収入を分配します。投資家は物件を自分の目で確かめられないので、「この物件は買値に見合う家賃を生むのか」を鑑定評価で示してもらいます。これが投資採算価値を表す価格で、投資家保護のために、対象不動産の収益力を適切に反映した収益価格に基づいて求めます。証券化の計画で投資家に開示される運用方法をそのまま前提にするのが特徴で、その運用方法が最有効使用と異なれば特定価格、同じなら正常価格になります。

投資採算価値を表す価格の図解:投資家に示すために、開示された運用方法で採算が取れるかを収益価格で示す。

投資家に示すために、開示された運用方法で採算が取れるかを収益価格で示す。

投資家に開示される運用方法を、そのまま前提にします

基準は、取得時又は保有期間中の価格を求めるときは、資産流動化計画等により投資家に開示される対象不動産の運用方法を所与とする、と定めています。所与とは、それを動かさない前提として受け入れる、という意味です。投資家がお金を出すかどうかを判断する材料は開示された運用計画なので、鑑定士がそれと違う使い方に引き直して評価しても、投資家の判断には役に立ちません。だから、最有効使用が建物の取壊しでも、開示された運用方法が老人ホームとしての事業継続なら、老人ホームとして使い続ける前提で価格を求めます。

投資採算価値を表す価格の図解:最有効使用が取壊しでも、開示された運用方法が老人ホームなら、そのまま前提にする。

最有効使用が取壊しでも、開示された運用方法が老人ホームなら、そのまま前提にする。

運用方法が最有効使用と異なれば特定価格、同じなら正常価格です

正常価格は、市場参加者が最有効使用を前提に価値判断をする市場で成り立つ価格です。開示された運用方法が最有効使用と違うなら、その前提が崩れるので、正常価格とは別の価格、つまり特定価格として求めなければなりません。反対に、運用方法が最有効使用と一致していれば、正常価格の前提は崩れないので正常価格です。同じ「投資採算価値を表す価格」という名前でも、価格の種類はこの一致・不一致で決まります。

譲渡するときの価格は、正常価格として求めます

特定価格になりうるのは、取得時と保有期間中の価格だけです。投資法人等が投資対象資産を譲渡するときに依頼される鑑定評価で求める価格は、正常価格として求める、と留意事項が定めています。基準に理由は書いていませんが、売る相手は市場の一般の買い手なので、開示された運用方法に縛られた価格を示しても投資家の役に立たない、と考えられます。

投資採算価値を表す価格の図解:買うときは特定価格になりうるが、売るときは正常価格。

買うときは特定価格になりうるが、売るときは正常価格。

求めるときは、DCF法を標準にして他の手法で検証します

各論第1章は、この価格を求めるときは、基本的に収益還元法のうちDCF法で求めた試算価格を標準とし、直接還元法による検証を行って収益価格を求め、さらに比準価格と積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する、と定めています。投資家に示す価格なので、将来の収支の予測から出る収益価格が主役で、比準価格と積算価格は検証の役目です。

投資対象資産としての不動産の取得時又は保有期間中の価格を求める鑑定評価については、上記鑑定評価目的の下で、資産流動化計画等により投資家に開示される対象不動産の運用方法を所与とするが、その運用方法による使用が対象不動産の最有効使用と異なることとなる場合には特定価格として求めなければならない。

出典: 総論第5章 第3節

実務ではこう使う

リートが物件を取得するときの評価では、投資家に開示する予定の運用計画を依頼者から受け取り、それを前提に保有期間中の収支と売却時の価格を予測してDCF法で価格を求めます。評価書では、その運用方法が最有効使用と一致するかを判定し、異なるなら特定価格とした理由と正常価格との違いを書いて、投資家への注意喚起とします。同じ物件でも、リートが売却するときの評価は正常価格で求めます。

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