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法人税法の不動産減価償却と時価評価 - 不動産鑑定士試験向けに解説

不動産鑑定士試験の行政法規で頻出の法人税法を解説。土地の非減価償却・建物の定額法(2016年4月以降)・RC造47年など法定耐用年数、低廉譲渡の寄附金認定、税務上の時価と正常価格の関係まで体系的にまとめています。

法人税法と不動産の関係

法人が不動産を保有・売却する場合、その税務処理は法人税法に基づきます。法人税法は法人の所得を計算するための規定であり、不動産の減価償却や時価評価に関するルールが定められています。

不動産鑑定士試験の行政法規科目において、法人税法の不動産関連規定は重要な論点です。個人の不動産売買が所得税法・租税特別措置法によって規律されるのに対し、法人の不動産取引は法人税法によって処理されます。

特に、税務上の「時価」と不動産鑑定評価における「正常価格」の関係は、鑑定士の実務においても重要なテーマです。法人間の不動産取引、同族会社への低廉譲渡、グループ会社間の取引など、様々な場面で税務上の時価の概念が問題となります。


法人税法31条 - 減価償却の基本規定

内国法人が各事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、当該事業年度に係る償却限度額に達するまでの金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
― 法人税法 第31条第1項

法人税法31条は減価償却の基本規定です。固定資産の取得価額は一度に損金に算入されるのではなく、耐用年数にわたって減価償却費として毎期損金(費用)に算入されます。

土地は非減価償却資産

法人税法において、土地は減価償却の対象外です。土地は使用・時間の経過によって価値が減少しないと考えられているため、非減価償却資産として取り扱われます。

資産の種類減価償却の可否理由
土地不可使用・時間の経過によって価値が減少しない
建物可(法定耐用年数に従って)時間の経過とともに物理的・機能的に劣化する
建物附属設備可(独自の耐用年数あり)設備は建物本体より早く劣化する
構築物可(独自の耐用年数あり)舗装・フェンス等も経年劣化する

建物の減価償却方法 - 2016年4月以降は定額法のみ

建物の減価償却方法については、2016年(平成28年)4月1日以降に取得した建物・建物附属設備・構築物は定額法のみが採用されます。

内国法人が当該各事業年度終了の日において有する減価償却資産につき、当該資産の取得価額、当該資産の当該事業年度の月数、当該資産の耐用年数等を基礎として政令で定める方法により計算した金額を、償却限度額とする。
― 法人税法 第31条(趣旨を反映した要約)

定額法の計算式

$$\text{年間減価償却費} = \text{取得価額} \times \text{定額法の償却率}$$
$$\text{定額法の償却率} = \frac{1}{\text{耐用年数}}$$

定額法では、毎年同額の減価償却費が計上されます。

改正の経緯

取得時期建物の償却方法
1998年3月31日以前に取得定額法または旧定率法を選択可
1998年4月1日〜2016年3月31日取得定額法のみ(建物)、建物附属設備は定率法も可
2016年4月1日以降に取得定額法のみ(建物・建物附属設備・構築物すべて)
確認問題

2016年4月1日以降に取得した建物について、法人は定額法または定率法のいずれかを選択して減価償却を行うことができる。


法定耐用年数

減価償却の計算において用いる耐用年数は、財務省令(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)に定める法定耐用年数によります。個々の建物の実際の経済的耐用年数とは異なる場合がある点に注意が必要です。

主要な建物の法定耐用年数

構造法定耐用年数
鉄筋コンクリート造(RC造)47年
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)47年
重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超)34年
軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超4mm以下)27年
軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm以下)19年
木造・合成樹脂造22年
木骨モルタル造20年

主要3構造(RC造47年・重量鉄骨34年・木造22年)は試験頻出です。

定額法の償却率と計算例

RC造建物(取得価額1億円、耐用年数47年)の場合:

$$\text{年間減価償却費} = 1\text{億円} \times \frac{1}{47} \approx 212\text{万円}$$

47年後の帳簿価額(残存価額)は1円(備忘価額)となります。

中古建物の耐用年数

中古建物を取得した場合、以下の簡便法により耐用年数を計算できます。

法定耐用年数全部経過後の場合:

$$\text{見積耐用年数} = \text{法定耐用年数} \times 20\%$$

法定耐用年数の一部経過後の場合:

$$\text{見積耐用年数} = (\text{法定耐用年数} - \text{経過年数}) + \text{経過年数} \times 20\%$$

例えば、RC造(法定耐用年数47年)で20年経過した中古建物の場合:

$$\text{見積耐用年数} = (47 - 20) + 20 \times 0.2 = 27 + 4 = 31\text{年}$$
確認問題

鉄筋コンクリート造(RC造)の建物の法定耐用年数は34年である。


法人税法37条 - 寄附金の損金不算入

法人税法37条は、法人が支出した寄附金について、損金算入できる金額に上限を設ける規定です。

低廉譲渡と寄附金認定

内国法人が各事業年度においてした寄附金の額(法人が資産を低額で譲渡した場合において、当該資産の譲渡の時における価額と当該資産の当該時における譲渡の対価の額との差額に相当する金額を含む。)の合計額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
― 法人税法 第37条(趣旨を反映した要約)

法人が不動産を時価より著しく低い価額(低廉)で譲渡した場合、時価との差額は寄附金として認定されます。

$$\text{寄附金認定額} = \text{税務上の時価} - \text{実際の譲渡対価}$$

例えば、時価1億円の不動産を6,000万円で関連会社に譲渡した場合、4,000万円が寄附金として認定され、損金算入限度額を超えた部分は損金不算入となります。

低廉譲渡の典型的な問題事例

ケース税務上の取り扱い
法人が同族株主等へ低廉譲渡時価との差額を寄附金認定
法人が従業員へ低廉譲渡時価との差額を給与認定(役員は役員給与)
法人が取引先へ低廉譲渡時価との差額を寄附金認定(交際費の場合あり)
グループ法人間の低廉譲渡グループ法人税制の適用(課税繰り延べ等)
確認問題

法人が不動産を時価よりも低い金額で関連会社に譲渡した場合、その差額は損金として認められる。


法人税法61条の2 - 時価評価の規定

法人税法61条の2は、有価証券の評価に関する規定ですが、不動産についても「時価」の概念が随所に登場します。法人が不動産を売却した場合の収益計上は、原則として時価(取引価額)で行われます

税務上の時価と鑑定評価の正常価格

税務上の「時価」と不動産鑑定評価における「正常価格」は、いずれも不動産の客観的な市場価値を指すという点で共通しますが、その算定プロセスと活用場面に相違があります。

比較項目税務上の時価鑑定評価の正常価格
定義不特定多数の当事者間で自由取引が行われた場合の価格合理的な市場が形成されている場合において成立するであろう市場価値を表示する適正な価格
根拠法人税法・所得税法・相続税法等不動産の鑑定評価に関する法律・不動産鑑定評価基準
評価者税務調査等では課税庁が判断不動産鑑定士が鑑定評価書を作成
活用場面法人税申告・税務調査売買・担保設定・相続税申告(通達によらない場合)等

法人の不動産取引において、税務調査で「時価」が争われる場合、不動産鑑定評価書が時価を証明するための重要な証拠となります。

低廉譲渡への対応策

適正な税務処理を行うためには、不動産の売買前に不動産鑑定評価を取得し、時価を確認することが有効な実務対策です。特に同族会社・関連会社間の取引においては、時価と乖離した価格での売買が寄附金認定を受けるリスクがあるため、事前に鑑定評価書を取得することが推奨されます。


不動産の原価法と法人税の減価償却の関係

不動産鑑定評価における原価法(積算価格の算定)と法人税法の減価償却は、建物の価値減少をどのように把握するかという点で関連しています。

項目不動産鑑定評価(原価法)法人税法(減価償却)
目的建物の現在の市場価値の算定建物取得費用の各期間への配分
耐用年数経済的残存耐用年数(市場の観点)法定耐用年数(法律で定められた年数)
減価の種類物理的減価・機能的減価・経済的減価を総合的に考慮時間の経過に基づく定額的な減価のみ
残存価値市場で形成される残存価値備忘価額(1円)まで償却

この相違から、法人税法上の帳簿価額と不動産鑑定評価による積算価格が大きく乖離することがあります。特に、法定耐用年数が経過して帳簿価額が1円となった建物が、実際の市場では相当の価値を持って取引されている場合がその典型例です。


試験での出題ポイント

法人税法の不動産関連規定の短答式試験における主要な出題ポイントをまとめます。

減価償却の基本知識

  1. 土地は非減価償却資産
  2. 建物は2016年4月以降取得分は定額法のみ
  3. 法定耐用年数:RC造47年・重量鉄骨34年・木造22年

低廉譲渡の税務処理

  1. 時価より低い価格での譲渡は差額を寄附金認定
  2. 寄附金は損金算入に限度額あり

時価と鑑定評価の関係

  1. 税務上の「時価」と鑑定評価の「正常価格」の概念の異同
  2. 法人間取引では事前の鑑定評価取得が紛争防止に有効
確認問題

法人税法上、土地は減価償却の対象となる資産であるため、毎期減価償却費を損金として計上することができる。


まとめ

法人税法の不動産関連規定について、重要なポイントを整理します。

減価償却の基本(法人税法31条): 土地は非減価償却資産。建物は2016年4月以降に取得したものは定額法のみ。法定耐用年数はRC造47年・重量鉄骨34年・木造22年。

寄附金認定(法人税法37条): 法人が不動産を時価より低い価額で譲渡した場合、時価との差額は寄附金として認定される。損金算入には限度額があり、超過分は損金不算入。

時価評価(法人税法61条の2等): 法人の不動産売却は時価(取引価額)で収益計上。税務上の時価と不動産鑑定評価の正常価格は概念的に近似するが、算定プロセスや活用場面が異なる。

法人が不動産取引を適正に行うためには、税務上の時価を正確に把握することが重要であり、そのために不動産鑑定評価が活用されます。

法人税法の不動産関連規定は、個人の所得税課税(所得税法の譲渡所得)や相続税法の土地評価とあわせて学ぶことで、個人・法人それぞれの税務処理の違いを体系的に理解できます。また、不動産登記法に基づく所有権・担保権の登記状況は、法人の不動産評価においても重要な確認事項です。

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