開発法とは?開発許可が必要な土地の鑑定評価方法
開発法の定義・計算公式・適用手順を基準原文の引用とともに解説。開発許可が必要な土地の鑑定評価方法、原価法との違い、試験での出題ポイント・暗記のポイントまで体系的に解説します。
はじめに ― 開発法の位置づけ
鑑定評価基準では、不動産の価格を求める手法として三方式(原価法・取引事例比較法・収益還元法)が規定されています。しかし、大規模な土地やマンション用地、宅地造成が必要な土地など、開発を前提としなければ適切に価格を把握できない不動産が存在します。このような不動産を評価するための手法が「開発法」です。
開発法は三方式とは別に各論第1章において規定されており、三方式を補完する役割を担います。「開発によって実現する将来の価値」から「現時点の土地の価値」を逆算するという独自のアプローチを採用しています。
対象不動産について、開発(造成又は建築等をいう。)を行うことが最有効使用と認められる場合における当該開発後の更地又は建物及びその敷地の価格を基礎とし、開発に通常必要とされる費用及び発注者が通常得るべき利益を控除して求められた価格を標準として、対象不動産の試算価格を求めるものとする。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章
本記事では、開発法の定義・計算公式・適用手順を体系的に解説します。最有効使用の判定もあわせてご覧ください。
開発法の定義と基本公式
基本公式
開発法の基本公式は以下のとおりです。
開発法による価格 = 完成後の価格 − 通常の投下資本相当額 − 発注者利益
| 構成要素 | 意味 |
|---|---|
| 完成後の価格 | 開発完了後の不動産(更地又は建物及びその敷地)の価格 |
| 通常の投下資本相当額 | 開発に通常必要とされる費用(造成費・建築費・販売費・金利等) |
| 発注者利益 | 開発事業を行う発注者が通常得るべき利益(事業リスクの対価) |
この計算構造は、デベロッパーの立場から見ると「完成後の販売価格から、開発にかかるすべてのコストと利益を引いた残りが、土地に支払える上限価格」という意味を持ちます。
開発法の基本公式は「完成後の価格 + 通常の投下資本相当額 + 発注者利益 = 開発法による価格」である。
開発法が適用される場面
適用の前提条件
開発法を適用するための最も重要な前提条件は、対象不動産について開発を行うことが最有効使用と認められることです。
典型的な適用対象
| 不動産の種類 | 具体例 | 想定される開発内容 |
|---|---|---|
| 素地(宅地見込地) | 農地・山林で宅地への転換が見込まれる土地 | 造成工事、インフラ整備 |
| 大規模画地 | 広大な未利用地、工場跡地 | 区画割り、造成 |
| マンション用地 | マンション建設に適した更地 | マンション建設 |
| 戸建分譲用地 | 戸建住宅の分譲に適した更地 | 区画割り、戸建住宅の建設 |
| 開発許可を要する土地 | 都市計画法上の開発許可が必要な規模の土地 | 許可取得後の造成・建築 |
開発許可との関係
都市計画法では、一定の規模以上の開発行為を行う場合に開発許可の取得が義務づけられています。市街化区域では原則として1,000平方メートル以上、市街化調整区域では原則としてすべての開発行為が許可の対象です。
開発法を適用する際には、対象地において開発許可の取得が可能かどうかの確認が不可欠です。
開発法の適用手順
ステップ1:最有効使用の判定
対象不動産の最有効使用を判定します。法的に許容され、物理的に可能であり、経済的に最も合理的な利用方法を検討し、開発を行うことが最有効使用であると判断された場合に開発法の適用に進みます。
ステップ2:完成後の不動産の価格の査定
開発完了後の不動産の価格を査定します。これは開発法の最も重要な構成要素です。
| 開発の内容 | 完成後の価格の把握方法 |
|---|---|
| 宅地造成 | 造成完了後の各画地の更地価格の合計 |
| マンション建設 | 完成後の各住戸の分譲価格の合計 |
| 戸建住宅分譲 | 完成後の各戸建住宅の価格の合計 |
完成後の価格の査定にあたっては、取引事例比較法や収益還元法を適用して市場価値を把握します。
ステップ3:開発コスト(通常の投下資本相当額)の査定
開発に通常必要とされる費用を算定します。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 造成工事費 | 切土・盛土、擁壁工事、地盤改良 |
| 建築工事費 | 建物の建築に要する費用 |
| 設計・監理費 | 設計及び工事監理費用 |
| インフラ整備費 | 道路、上下水道の新設・整備 |
| 開発許可関連費用 | 申請手数料、各種調査費用 |
| 販売費 | 広告宣伝費、仲介手数料 |
| 金利 | 開発期間中の借入金利息 |
| 公租公課 | 開発期間中の固定資産税等 |
ステップ4:発注者利益の査定
発注者利益とは、開発事業を行う発注者が事業リスクを負担することの対価として通常得るべき利益です。一般的に完成後の分譲価格合計の5〜15%程度が目安ですが、案件ごとの個別事情によって変動します。
ステップ5:開発期間と時間価値の考慮
開発事業は通常1年以上の期間を要するため、資金の時間価値(投下資本の金利負担)を適切に反映する必要があります。
開発法と原価法の違い
開発法と原価法は、いずれも「費用」に着目する点で共通していますが、アプローチの方向が正反対です。
| 比較項目 | 開発法 | 原価法 |
|---|---|---|
| 出発点 | 完成後の価格(将来の価値) | 再調達原価(過去〜現在のコスト) |
| 計算方向 | 将来 → 現在(遡及的) | 過去 → 現在(累積的) |
| 控除するもの | 開発費用 + 発注者利益 | 減価額(物理的・機能的・経済的減価) |
| 規定箇所 | 各論第1章 | 総論第7章 |
開発法は原価法と同様に、再調達原価を出発点として試算価格を求める手法である。
開発法の実務上の注意点
完成後の価格の査定精度
開発法の信頼性は完成後の価格の査定精度に大きく左右されます。十分な市場調査、市場動向の考慮、複数の手法の適用による検証が重要です。
開発リスクの適切な反映
市場変動リスク、工事遅延リスク、許認可リスクなど、さまざまなリスクは主に発注者利益の水準に反映されます。
開発計画の合理性
想定する開発計画は、法令上の制限に適合し、物理的条件に適合し、市場において実現可能な内容でなければなりません。
試験での出題ポイント
- 開発法の定義 ― 開発が最有効使用と認められる場合に適用される
- 基本公式 ― 完成後の価格 − 通常の投下資本相当額 − 発注者利益
- 規定箇所 ― 三方式(総論第7章)とは別に各論第1章で規定
- 原価法との違い ― 計算方向が正反対(開発法は将来→現在、原価法は過去→現在)
- 適用条件 ― 開発を行うことが最有効使用と認められる場合
開発法は、不動産鑑定評価基準の総論第7章に規定される三方式のうちの一つである。
暗記のポイント
公式の暗記
「完成マイナス投下マイナス発注」
= 完成後の価格 − 通常の投下資本相当額 − 発注者利益
原価法との違い
「開発法は将来から、原価法は過去から」
重要キーワード一覧
| キーワード | 暗記ポイント |
|---|---|
| 適用条件 | 開発が「最有効使用」と認められる場合 |
| 規定箇所 | 各論第1章(三方式とは別) |
| 完成後の価格 | 開発完了後の更地又は建物及びその敷地の価格 |
| 通常の投下資本相当額 | 造成費・建築費・販売費・金利等 |
| 発注者利益 | 事業リスクの対価 |
まとめ
開発法は、開発を行うことが最有効使用と認められる不動産について、完成後の価格から通常の投下資本相当額と発注者利益を控除して試算価格を求める手法です。
- 三方式とは別に各論第1章で規定される補完的手法
- 基本公式は「完成後の価格 − 投下資本 − 発注者利益」
- 原価法とは計算方向が正反対(開発法は将来→現在)
- 適用条件は開発が最有効使用と認められること
- 素地、大規模画地、マンション用地、戸建分譲用地などが典型的な適用対象