価格等調査ガイドラインとは?不動産鑑定評価基準との関係をわかりやすく解説
価格等調査ガイドラインの内容と鑑定評価基準との関係をわかりやすく解説。鑑定評価と価格等調査の違い、調査報告書と鑑定評価書の区分、ガイドライン制定の背景、依頼目的に応じた調査の範囲と深度の設定方法まで整理します。
価格等調査ガイドラインとは
不動産鑑定士が行う不動産の価格等に関する業務は、「鑑定評価」だけに限られません。実務においては、鑑定評価基準に則った厳格な鑑定評価のほかに、簡易な価格調査や意見書の作成など、多様な業務が行われています。こうした鑑定評価に該当しない価格等の調査について、その適正な実施を確保するために定められたのが「価格等調査ガイドライン」です。
不動産鑑定士試験の受験生にとって、鑑定評価と価格等調査の違いを正確に理解することは、鑑定評価制度の全体像を把握する上で重要です。
鑑定評価と価格等調査の違い
鑑定評価の定義
鑑定評価とは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づき、不動産鑑定士が鑑定評価基準に従って行う不動産の経済価値の判定を行い、その結果を鑑定評価書として交付する業務です。
鑑定評価基準は、総論第1章第3節において鑑定評価を次のように定義しています。
不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第3節
価格等調査の位置づけ
価格等調査とは、不動産鑑定士が不動産鑑定業者の業務として行う、鑑定評価に該当しない不動産の価格又は賃料に関する調査をいいます。価格等調査ガイドラインは、この価格等調査について、その適正な実施のための基本的な指針を定めたものです。
両者の主な違い
| 項目 | 鑑定評価 | 価格等調査 |
|---|---|---|
| 根拠 | 鑑定評価法・鑑定評価基準 | 価格等調査ガイドライン |
| 成果物 | 鑑定評価書 | 調査報告書 |
| 手順の厳格さ | 基準に定める全手順を履行 | 一部の手順を省略可能 |
| 手法の適用 | 原則として三方式の併用 | 依頼目的に応じて柔軟に対応 |
| 条件設定 | 基準に定める条件設定の要件を満たす必要 | 比較的柔軟な条件設定が可能 |
| 利用目的 | 対外的な証明力を持つ | 参考資料としての位置づけ |
ガイドラインの制定背景
多様化する価格調査ニーズ
不動産に関する価格調査のニーズは多岐にわたります。例えば、以下のようなケースでは、鑑定評価基準に厳格に準拠した鑑定評価までは必要とされないものの、不動産鑑定士の専門的知見に基づく価格情報が求められることがあります。
- 企業の内部意思決定のための参考価格の把握
- 資産管理のための価格のモニタリング
- 概算価格の迅速な把握
- デューデリジェンスにおける参考情報の提供
- 訴訟における参考資料としての価格意見
適正な業務遂行の必要性
こうした鑑定評価に該当しない価格等の調査においても、不動産鑑定士の専門家としての信頼性を維持するためには、一定の品質が確保される必要があります。価格等調査ガイドラインは、鑑定評価と価格等調査の区分を明確化し、価格等調査においても適正な業務遂行が行われるための指針を提供しています。
ガイドラインの基本的な考え方
鑑定評価との明確な区分
価格等調査ガイドラインの最も重要な原則は、鑑定評価と価格等調査を明確に区分することです。価格等調査の結果は「調査報告書」として交付され、鑑定評価書と混同されることがあってはなりません。
調査報告書には、当該業務が鑑定評価ではなく価格等調査である旨を明記することが求められます。これにより、利用者が鑑定評価書と調査報告書を混同するリスクを防止しています。
不動産鑑定士の責任
価格等調査においても、不動産鑑定士は専門家としての責任を負います。鑑定評価ほどの厳格な手順は求められないものの、その結果については、不動産鑑定士としての知識・経験に基づく合理的なものでなければなりません。
依頼目的に応じた対応
価格等調査は、依頼目的や利用者の属性に応じて、調査の範囲や深度を適切に設定することが認められています。例えば、企業の内部管理目的であれば簡易な調査で足りる場合がある一方、対外的に利用される場合にはより丁寧な調査が必要となります。
調査報告書の記載事項
必要的記載事項
価格等調査の結果として交付される調査報告書には、以下の事項を記載することが求められています。
| 記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 鑑定評価ではない旨の記載 | 当該業務が鑑定評価基準に基づく鑑定評価ではないことを明記 |
| 調査の目的 | 依頼者が価格等調査を必要とした理由・背景 |
| 調査価格又は調査賃料 | 調査の結果として求められた価格又は賃料 |
| 対象不動産の表示 | 所在、地番、地目、構造、面積等 |
| 調査の条件 | 前提条件、制約条件、限定事項 |
| 価格時点又は賃料の算定の期間 | 価格の判定基準日 |
| 調査の方法 | 採用した調査手法、参照したデータ等 |
| 調査を行った不動産鑑定士の氏名 | 責任の所在を明確にするため |
鑑定評価書との違い
鑑定評価書(鑑定評価報告書の記載事項参照)と調査報告書の主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 鑑定評価書 | 調査報告書 |
|---|---|---|
| 名称 | 鑑定評価書 | 調査報告書(名称は任意) |
| 記載の精度 | 基準が求めるすべての記載事項 | ガイドラインに基づく記載事項 |
| 手法の適用 | 適用した手法の詳細な説明 | 採用した方法の概要 |
| 試算価格の調整 | 詳細な調整過程の記載 | 必要に応じて記載 |
| 利害関係等 | 基準に定める利害関係の開示 | 必要に応じて記載 |
鑑定評価基準との関係
基準の適用範囲
鑑定評価基準の全体像で解説しているとおり、鑑定評価基準は「不動産の鑑定評価」に適用されるものです。鑑定評価基準が定める手順(対象不動産の確定、価格時点の確定、三方式の適用、試算価格の調整等)は、鑑定評価を行う場合に遵守すべきものです。
価格等調査においては、鑑定評価基準の手順のすべてを履行することは必ずしも求められません。ただし、鑑定評価基準の考え方を参考として、合理的な方法により調査を行うことが望ましいとされています。
鑑定評価が必要な場面
以下のような場面では、価格等調査ではなく、鑑定評価基準に基づく鑑定評価を行うことが求められます。
- 法令等に基づく鑑定評価: 地価公示、都道府県地価調査、固定資産税評価、相続税評価における標準宅地の鑑定評価等
- 証券化対象不動産の鑑定評価: 各論第3章に定める証券化対象不動産は、基準に従った鑑定評価が義務付けられている
- 裁判所の命じる鑑定: 訴訟における不動産の価格の鑑定
- 公的機関への提出: 官公庁への提出を前提とする場合
価格等調査で対応できる場面
以下のような場面では、価格等調査での対応が可能です。
- 企業の資産管理のための概算価格の把握
- ポートフォリオの評価替えにおける参考価格
- 不動産取引の意思決定のための参考情報
- コンサルティング業務の一環としての価格情報の提供
- 内部監査における参考資料
実務指針との関係
価格等調査ガイドラインは、不動産鑑定士協会連合会が定める実務指針とも関連しています。鑑定評価の実務指針は、鑑定評価基準の運用に関する具体的な指針を定めるものですが、価格等調査についても実務上の取扱いを示している部分があります。
不動産鑑定士は、鑑定評価基準、価格等調査ガイドライン、実務指針の三者の関係を正確に理解し、依頼目的に応じて適切な業務を遂行することが求められます。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 鑑定評価と価格等調査の区分: 両者の違いを正確に理解しているかが問われる
- 価格等調査の定義: 「鑑定評価に該当しない価格又は賃料に関する調査」という定義
- 調査報告書の記載事項: 「鑑定評価ではない旨」の記載が必要である点
- 鑑定評価が必要な場面: 証券化対象不動産等、鑑定評価が義務付けられる場面
論文式試験
論点1: 鑑定評価と価格等調査の制度的区分。 鑑定評価法、鑑定評価基準、価格等調査ガイドラインの三者の関係を体系的に論述する問題です。
論点2: 価格等調査における不動産鑑定士の責任。 鑑定評価ほどの厳格さは求められないとしても、専門家としての責任を負うことの意義を論述する問題です。
論点3: 調査報告書と鑑定評価書の違い。 両者の記載事項、法的効果、利用目的の違いを整理して論述する問題です。
暗記のポイント
- 価格等調査は「鑑定評価に該当しない不動産の価格又は賃料に関する調査」
- 成果物は「調査報告書」(鑑定評価書ではない)
- 調査報告書には「鑑定評価ではない旨」を明記する
- 証券化対象不動産等は価格等調査ではなく「鑑定評価が必要」
- 価格等調査においても不動産鑑定士は「専門家としての責任」を負う
まとめ
価格等調査ガイドラインは、鑑定評価に該当しない不動産の価格等の調査について、その適正な実施を確保するための指針です。鑑定評価と価格等調査の明確な区分がガイドラインの最も重要な原則であり、調査報告書には鑑定評価ではない旨を明記することが求められます。
価格等調査は、鑑定評価ほどの厳格な手順は求められないものの、不動産鑑定士は専門家としての責任を負います。依頼目的に応じた適切な調査の範囲と深度の設定が重要です。
鑑定評価制度の全体像を理解するために、鑑定評価基準の全体像、不動産の鑑定評価に関する法律、鑑定評価報告書の記載事項、鑑定評価の実務指針、鑑定評価基準の改正履歴も併せて参照してください。