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不動産鑑定における差額配分法の計算と考え方

継続賃料を求める差額配分法の計算式と考え方を解説。正常実質賃料と現行実質賃料の差額に配分率(一般的には1/3)を乗じる仕組み、実質賃料の概念、賃料上昇局面・下落局面それぞれの数値例、配分率の判定に影響する5つの要因を整理。

差額配分法とは

不動産鑑定評価における差額配分法とは、継続賃料を求める手法の一つです。対象不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料(正常実質賃料)と、実際に支払われている実質賃料(現行実質賃料)との間に発生している差額について、契約の内容や経緯等を総合的に勘案して、その差額のうち適切な部分を現行実質賃料に加算(又は減算)して試算賃料を求める方法です。


差額配分法の基本算式

$$差額配分法による賃料 = 現行実質賃料 ±(正常実質賃料 − 現行実質賃料)× 配分率$$
構成要素意味
正常実質賃料価格時点における新規の正常賃料(実質ベース)
現行実質賃料現在支払われている賃料(実質ベース)
差額正常実質賃料と現行実質賃料の差
配分率差額のうち賃料に反映させる割合

実質賃料の概念

差額配分法では実質賃料を用います。実質賃料とは、支払賃料に一時金の運用益及び償却額を加算した賃料です。

実質賃料 = 支払賃料 + 一時金の運用益 + 一時金の償却額
賃料の種類内容
支払賃料テナントが毎月支払う賃料
実質賃料支払賃料+一時金の運用益・償却額(経済的な実質コスト)

一時金には、保証金・敷金(運用益のみ)や権利金(運用益+償却額)等が含まれます。


計算例

前提条件

項目金額
現行支払賃料50万円/月
保証金の運用益2万円/月
現行実質賃料52万円/月
正常実質賃料(新規)60万円/月
配分率1/3

計算

差額 = 60万円 − 52万円 = 8万円/月
配分額 = 8万円 × 1/3 ≒ 2.7万円/月
差額配分法による実質賃料 = 52万円 + 2.7万円 = 54.7万円/月
差額配分法による支払賃料 = 54.7万円 − 2万円 = 52.7万円/月

賃料が下落している場合

項目金額
現行実質賃料60万円/月
正常実質賃料(新規)52万円/月
配分率1/3
$$差額 = 52万円 − 60万円 = −8万円/月 配分額 = −8万円 × 1/3 ≒ −2.7万円/月 差額配分法による実質賃料 = 60万円 − 2.7万円 = 57.3万円/月$$

配分率の考え方

配分率とは

配分率は、正常実質賃料と現行実質賃料の差額のうち、どの程度を継続賃料に反映させるかを決定する率です。差額の全部を一度に反映させるのではなく、契約の安定性等を考慮して一部を反映させるという考え方に基づいています。

配分率の判定に影響する要因

要因配分率への影響
乖離の程度乖離が大きいほど配分率を高くする傾向
経過期間直近合意からの経過が長いほど高くなる傾向
賃料改定の経緯過去の改定パターンを考慮
契約の内容賃料改定条項の有無等
賃貸人・賃借人の関係当事者間の力関係

一般的な配分率

実務では、配分率として以下のような水準が採用されることが多いとされています。

配分率採用の傾向
1/3最も一般的(賃貸人・賃借人・社会全体に等分)
1/2乖離が大きい場合等
2/3乖離が著しく大きい場合

ただし、配分率は個別の案件の事情に応じて判断すべきものであり、一律に定まるものではありません。


差額配分法の特徴と限界

特徴

特徴内容
新規賃料との関連正常実質賃料(新規賃料水準)を基点とする
市場動向の反映賃料市場の変動を直接反映できる
差額の配分急激な賃料変動を緩和する機能

限界

限界内容
正常実質賃料の精度新規賃料の査定精度に依存
配分率の主観性配分率の決定に客観的基準が乏しい
乖離が小さい場合差額が小さいと手法としての有効性が低下

他の継続賃料手法との関係

差額配分法は、他の継続賃料評価手法と関連づけて最終的な賃料を決定します。

手法アプローチ着目点
差額配分法新規賃料との差額を配分市場賃料との乖離
利回り法基礎価格に利回りを乗じる不動産価格の変動
スライド法現行賃料に変動率を乗じる経済指標等の変動
賃貸事例比較法継続賃貸事例と比準類似事例の動向

継続賃料の評価においては、これらの手法による試算賃料を総合的に勘案して鑑定評価額を決定します。


確認問題

差額配分法は、新規賃料を求める手法である。

確認問題

差額配分法では、正常実質賃料と現行実質賃料の差額の全額を賃料に反映する。

確認問題

差額配分法で用いる実質賃料とは、支払賃料に一時金の運用益及び償却額を加算したものである。


まとめ

差額配分法は、正常実質賃料と現行実質賃料の差額に着目し、その適切な部分を配分して継続賃料を求める手法です。配分率の判定が重要なポイントであり、乖離の程度・経過期間・契約の経緯等を総合的に考慮して決定します。利回り法スライド法等の他の手法と関連づけて、適正な継続賃料を求めることが重要です。

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