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投資信託法とJREITの仕組みを詳しく解説

投資信託及び投資法人に関する法律の概要からJREITの仕組み、導管体要件、鑑定評価義務まで詳しく解説。不動産鑑定士試験の行政法規対策に必要なJREIT関連知識を体系的にまとめました。

投資信託及び投資法人に関する法律の概要

投資信託及び投資法人に関する法律(以下「投信法」)は、投資信託及び投資法人の制度を確立し、投資者の保護を図るとともに、投資信託及び投資法人に係る資産の運用を通じて国民経済の健全な発展に資することを目的としています。

この法律は、投資信託又は投資法人を用いて資産の運用を行う仕組みを確立し、これらを用いた資金の運用が適正に行われることを確保するとともに、この仕組みを通じて投資者の保護を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。― 投資信託及び投資法人に関する法律 第1条

投信法は1951年に制定された法律ですが、2000年の改正で「投資法人制度」が導入され、不動産への投資を行う投資法人(いわゆるJREIT)の設立が可能になりました。この改正が日本における不動産投資信託市場の発展の契機となっています。

不動産鑑定士試験の行政法規科目においても、投資信託法とJREITは出題頻度の高いテーマです。投信法の基本的な仕組みを理解した上で、JREITにおける鑑定評価の役割を把握しておくことが求められます。


JREITの仕組みと関係者

JREITとは

JREIT(Japan Real Estate Investment Trust)は、投信法に基づいて設立される投資法人が、投資家から集めた資金を不動産等に投資し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する仕組みです。2001年9月に東京証券取引所に最初の2銘柄が上場して以来、市場は拡大を続け、現在では60銘柄以上が上場し、時価総額は十数兆円規模に達しています。

JREITの特徴は、少額の資金で不動産投資が可能となる点、流動性が高い点(証券取引所で売買可能)、そして専門家による運用が行われる点にあります。

投資法人の仕組み

JREITの中核をなす「投資法人」は、資産を主として特定資産に対する投資として運用することを目的として設立される法人です。投資法人は以下の特徴を有します。

  • 器(ビークル)としての法人:投資法人自体には従業員がおらず、実質的な業務はすべて外部に委託する
  • 投資口の発行:株式会社の株式に相当する「投資口」を発行して資金調達を行う
  • 投資主総会:株式会社の株主総会に相当する「投資主総会」を最高意思決定機関とする
投資法人は、資産を主として特定資産に対する投資として運用することを目的として、この法律に基づき設立された社団をいう。― 投資信託及び投資法人に関する法律 第2条第12項

JREITの主要な関係者

JREITは、投資法人を中心として複数の関係者によって運営されています。

関係者役割
投資法人不動産等の資産を保有する器(ビークル)
資産運用会社投資法人から委託を受け、資産の運用(物件の取得・売却・管理方針の決定等)を行う
資産保管会社投資法人の資産の保管を行う(信託銀行等)
一般事務受託者投資法人の事務(会計、投資主名簿管理等)を受託する
投資主投資口を保有する投資家(株式会社における株主に相当)
執行役員投資法人の業務を執行する(株式会社の取締役に相当)
監督役員執行役員の職務執行を監督する(株式会社の監査役に相当)

資産運用会社は投信法に基づく金融商品取引業者(投資運用業の登録が必要)であり、投資法人との間で資産運用委託契約を締結します。資産運用会社の役割はJREITの運営上極めて重要であり、投資法人のパフォーマンスは資産運用会社の運用能力に大きく依存します。

確認問題

JREITにおける投資法人は、自ら従業員を雇用して不動産の運用を行う法人である。


利益配当の仕組みと導管体要件

導管体要件とは

JREITが投資家にとって魅力的な投資商品となっている最大の理由の一つが、導管体要件(パイプライン要件)を満たすことによる法人税の実質的な非課税措置です。

通常の法人(株式会社等)が不動産賃貸業を営む場合、賃貸収入から経費を差し引いた利益に対して法人税が課税されます。しかし、JREITは一定の要件(導管体要件)を満たすことで、利益の分配金を損金に算入でき、法人段階での実質的な課税を回避できます。

導管体要件の具体的内容

租税特別措置法第67条の15に規定される導管体要件の主な内容は以下の通りです。

要件内容
配当要件配当可能利益の90%超を分配すること
国内不動産要件総資産の50%超が不動産等の特定資産であること
上場要件事業年度を通じて投資口が上場されていること等
所有分散要件発行済投資口総数の50%超が一の者により保有されていないこと
借入先要件借入先が機関投資家に限定されること等
投資法人の各事業年度の所得の金額のうち、配当可能利益の額の百分の九十に相当する金額を超えて利益の配当の額として支払う場合には、当該利益の配当として支払った金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。― 租税特別措置法 第67条の15(要旨)

配当の90%超ルールの意味

導管体要件のうち最も重要なのが配当可能利益の90%超を分配するという要件です。この要件を満たすことで、分配金が損金に算入されるため、投資法人段階での法人税負担はほぼゼロとなります。

投資家にとっては、不動産から生じる収益のほぼ全額が分配金として受け取れることを意味します。これは株式会社が内部留保を行うことで配当が少なくなるのとは対照的です。

ただし、このルールは裏を返せば、JREITは内部留保がほとんどできないということでもあります。大規模修繕や新規物件取得のための資金は、増資(投資口の追加発行)や借入によって調達する必要があります。

確認問題

JREITが導管体要件を満たすためには、配当可能利益の80%以上を投資主に分配する必要がある。


JREIT取得時の鑑定評価義務

鑑定評価の義務付け

JREITにおいて不動産鑑定評価は極めて重要な役割を果たしています。投信法及び関連法令により、投資法人が不動産等の取得・譲渡を行う際には、原則として不動産鑑定士による鑑定評価を取得することが義務付けられています。

投資法人は、不動産の取得又は譲渡を行う場合には、あらかじめ、当該不動産について、不動産鑑定士による鑑定評価を受けなければならない。― 投資信託及び投資法人に関する法律施行規則(投信法関連規定の要旨)

鑑定評価が求められる場面

JREITにおいて鑑定評価が求められる主な場面は以下の通りです。

場面鑑定評価の内容
物件取得時取得価格の妥当性を検証するための鑑定評価
物件売却時売却価格の妥当性を検証するための鑑定評価
期末(決算時)保有不動産の期末時点の鑑定評価(継続評価)
投資法人の合併時合併比率の算定の基礎となる鑑定評価

特に期末の継続評価は、JREITが保有するすべての不動産について毎期実施されるため、JREIT市場は不動産鑑定業界にとって重要な業務の供給源となっています。

利害関係者からの鑑定評価の制限

JREITの鑑定評価においては、利益相反を防止する観点から、利害関係者からの鑑定評価には一定の制限があります。例えば、投資法人の資産運用会社と利害関係のある不動産鑑定業者による鑑定評価は、適正性の担保が問題となります。

投資法人の規約や自主規制ルールにおいて、利害関係のない不動産鑑定業者に鑑定評価を依頼することが求められるケースが多く、鑑定評価の独立性・客観性の確保が重視されています。


鑑定評価と投資口価格の関係

投資口価格の決定要因

JREITの投資口価格は証券取引所における需要と供給によって決定されますが、その基礎となる理論価値は、保有不動産から生じるキャッシュフロー(賃貸収入等)とそこから支払われる分配金に基づいて算定されます。

投資口価格と不動産鑑定評価額の関係を理解するためには、以下の指標が重要です。

  • NAV(Net Asset Value:純資産価値):保有不動産の鑑定評価額の合計から負債を控除した純資産額
  • NAV倍率:投資口価格の時価総額 / NAV(株式のPBRに相当)
  • 分配金利回り:一口当たり分配金 / 投資口価格

鑑定評価額の変動が投資口価格に与える影響

期末の鑑定評価において保有不動産の鑑定評価額が上昇すれば、NAVが増加し、NAV倍率が低下するため、投資口価格の上昇要因となります。逆に鑑定評価額が下落すれば、NAVの減少を通じて投資口価格の下落要因となります。

ただし、投資口価格は鑑定評価額だけでなく、金利動向、不動産市場の見通し、個別銘柄の運用実績、マクロ経済環境など多くの要因によって変動するため、鑑定評価額と投資口価格が常に連動するわけではありません。

証券化対象不動産の鑑定評価においては、DCF法の適用が原則とされており、将来のキャッシュフロー予測に基づく評価が行われます。DCF法についてはDCF法の仕組みで詳しく解説しています。

証券化対象不動産の鑑定評価の特徴

JREITをはじめとする証券化対象不動産の鑑定評価には、以下の特徴があります。

  • DCF法の適用が原則:収益還元法のうちDCF法を必ず適用する
  • 直接還元法との併用:DCF法に加えて直接還元法も適用し、両者を比較検証する
  • エンジニアリングレポートの活用:建物の物理的状況に関する調査報告書を参考とする
  • 鑑定評価書の開示:JREITの決算資料として鑑定評価の概要が投資家に開示される
確認問題

JREITにおいて、投資法人が不動産を取得する際には、必ず不動産鑑定士による鑑定評価を取得しなければならない。


投資信託の類型と不動産関連投資

投資信託の分類

投信法に基づく投資信託は、様々な基準で分類されます。

分類基準類型特徴
設定形態契約型 / 会社型信託契約に基づくか、投資法人を設立するか
募集方法公募型 / 私募型広く一般投資家から募集するか、限定的に募集するか
追加発行オープン型 / クローズド型追加設定(追加発行)が可能か否か
運用対象証券投資信託 / 不動産投資信託等主として有価証券に投資するか、不動産等に投資するか

JREITは「会社型(投資法人型)・公募型・クローズド型・不動産投資信託」に分類されます。

私募REIT

上場JREITの他に、非上場の私募REITも近年拡大しています。私募REITは機関投資家向けの商品であり、以下の特徴があります。

  • 証券取引所に上場しないため、投資口価格の変動が小さい
  • 鑑定評価額に基づくNAVベースで投資口の発行・買戻しが行われる
  • 上場REITに比べて情報開示が限定的
  • 機関投資家(年金基金等)の長期安定投資に適する

私募REITにおいても不動産鑑定評価は重要な役割を果たしており、投資口の発行価格や買戻し価格の算定基礎として鑑定評価額が用いられています。


JREIT市場の現状と不動産鑑定への影響

市場の成長と多様化

2001年の市場創設以来、JREIT市場は着実に成長してきました。当初はオフィスビルを中心とした銘柄が主流でしたが、現在では住宅、商業施設、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設など、投資対象の多様化が進んでいます。

JREIT市場と不動産価格で解説されているように、JREIT市場の動向は不動産市場全体に大きな影響を与えています。JREITによる不動産の取得・売却は、不動産市場の主要な取引主体の一つとなっており、鑑定評価における取引事例としても重要です。

不動産鑑定業界への影響

JREIT市場の拡大は、不動産鑑定業界に以下のような影響を与えています。

  • 業務量の増大:期末の継続評価をはじめ、鑑定評価の需要が大幅に増加
  • 評価手法の高度化:DCF法の精度向上、エンジニアリングレポートの活用など
  • 透明性の向上:鑑定評価の概要が投資家に開示されることで、評価内容の透明性が向上
  • 国際基準との整合性:IVS(国際評価基準)との整合性を意識した評価手法の導入

まとめ

投資信託及び投資法人に関する法律は、JREITの法的基盤を提供する重要な法律です。投資法人を中心とした仕組み、導管体要件による税制優遇、そして鑑定評価の義務付けという3つの要素を正確に理解することが、不動産鑑定士試験の行政法規対策として不可欠です。

特に、配当可能利益の90%超分配という導管体要件、取得・譲渡時および期末時の鑑定評価義務、DCF法適用の原則といった数値基準や手続きは、試験で問われやすい論点です。

JREITと不動産鑑定評価の関係をさらに深く学ぶには、REIT向け鑑定評価鑑定評価書の読み方も参照してください。

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