非常用の昇降機とは?建築基準法での意味を図でわかりやすく解説
高さ31メートルをこえる建築物に設けなければならない、火災のときに消防隊が消火と救助に使うエレベーターです。つまり、はしご車が届かない高さの建物には、消防隊が上るための昇降機を建物の側で用意します。
非常用の昇降機とは
火事のとき、消防隊は外からはしご車で近づくか、建物の中を階段で上ります。はしご車が届く高さはおおむね10階建てまでで、その上の階へは重い装備を担いで階段を上ることになります。そこで建築基準法は、高さ31メートルをこえる建築物に、消防隊が消火と救助に使う専用のエレベーターを建物の側で用意させます。これが非常用の昇降機で、普段のエレベーターとは別に、各階に耐火構造で囲った乗降ロビーを付け、かごと中央管理室を結ぶ電話を備えるなど、消防隊が使うための造りが施行令で決められています。

はしご車が届かない高さだから、消防隊用のエレベーターを建物側で用意する。
境目は31メートルで、避雷設備の20メートルとは別です
34条2項は、高さ31メートルをこえる建築物に非常用の昇降機を求めます。条文に由来は書いていませんが、31メートルはおおむね10階建ての高さで、はしご車が届く限界から来た数字だと説明されます。「こえる」なので、高さがちょうど31メートルの建物には要りません。同じ章に出てくる避雷設備は、高さ20メートルをこえる建築物に設けます(33条)。こちらは雷が落ちやすい高さから決まった数字で、消防のはしご車とは由来が違います。
31メートルをこえる部分が小さければ、設けなくてよいです
高さが31メートルをこえていても、その上の部分に消防隊が上る必要が薄い建物には求めません。施行令129条の13の2が四つ挙げています。31メートルをこえる部分が階段室や機械室、装飾塔などにしか使われていない建物、その部分の各階の床面積の合計が500平方メートル以下の建物、その部分の階数が4以下で特定主要構造部を耐火構造とし100平方メートル以内ごとに防火区画した建物、その部分が機械製作工場や不燃性の物品の倉庫で主要構造部が不燃材料の建物です。高さ35メートルでも、31メートルをこえる部分の各階の床面積の合計が400平方メートルなら、上で人が使う面積が小さいので不要です。

31mをこえる部分の各階の床面積の合計が500㎡以下なら、要らない。
仮設の建物には求めません
災害のあとに建てる停車場や官公署などの応急仮設建築物と、工事現場の事務所や材料置場のような仮設建築物には、34条2項を適用しません(85条2項)。特定行政庁が1年以内の期間を定めて許可する仮設興行場、博覧会建築物、仮設店舗にも適用しません(85条6項)。短い期間で取り壊す建物に、消防隊用のエレベーターまで備えさせる意味が薄いからです。

1年以内で取り壊す仮設の建物には求めない。
高さ三十一メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。
出典: 建築基準法 34条2項
実務ではこう使う
高さ31メートル前後で必要な設備が変わるので、10階建て前後のビルは31メートルをぎりぎり下回る高さで設計されることが多くあります。既存ビルの評価では、非常用の昇降機の有無を図面と現地で確かめ、防災の面から建物の評価と用途の選び方に反映します。乗降ロビーの分だけ各階の床が取られるので、貸せる面積にも影響します。
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