/ 鑑定理論

事業の継続を前提とした価格とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、現状の事業が継続されるものとして、当該事業の拘束下にあることを前提に求める価格です。つまり、工場やホテルを今の事業のまま使い続けたらいくらか、を示す価格で、その使い方が最有効使用と異なれば特定価格になります。

事業の継続を前提とした価格とは

経営に行き詰まった会社が会社更生や民事再生の手続に入っても、工場やホテルをすぐ閉めるとは限りません。事業を続けながら立て直す道を選ぶなら、その土地や建物は、今の事業に縛られたまま(事業の拘束下)で使われ続けます。更地にして売ればもっと高いかもしれない、という話はいったん横に置き、今の事業を続けたらこの不動産はいくらか、を手続の関係者に示すのがこの価格です。基準の留意事項は、対象不動産の利用現況を所与とした結果、前提とする使い方が最有効使用と異なることになれば、特定価格として求めなければならない、と定めています。

事業の継続を前提とした価格の図解:今の事業を続ける前提だから、事業の拘束下にある価格を求める。

今の事業を続ける前提だから、事業の拘束下にある価格を求める。

利用現況を所与とするので、最有効使用と違えば特定価格です

正常価格は、市場参加者が最有効使用を前提に価値判断をする市場で成り立つ価格です。事業を続けたままの価格は、今の使い方(利用現況)を動かさない前提で求めるので、その使い方が最有効使用と異なれば、正常価格の前提が崩れ、特定価格として求めなければなりません。留意事項は「異なることとなる場合には」特定価格と定めているだけなので、今の事業を続けることがそのまま最有効使用なら、正常価格の前提は崩れず、正常価格として求めることになると読めます。

事業の継続を前提とした価格の図解:利用現況を所与とするから、最有効使用と違えば特定価格。

利用現況を所与とするから、最有効使用と違えば特定価格。

根拠は会社更生法と民事再生法の二つです

会社更生法も民事再生法も、会社をつぶさずに事業を続けながら立て直すための法律です。基準はこの価格の根拠として二つの法律を並べていて、同じ章の早期売却を前提とした価格が民事再生法だけを根拠にしているのと対になります。基準に理由は書いていませんが、どちらの手続でも、事業を続けたままの不動産の価値を示す場面があるためと考えられます。

不動産に帰属する純収益に基づく収益価格を標準にします

各論第1章は、この価格を求めるときは、原則として事業経営に基づく純収益のうち不動産に帰属する純収益に基づく収益価格を標準とし、比準価格を比較考量のうえ、積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する、と定めています。ホテルの売上から出る利益には、経営者の腕や従業員の働きの分も含まれているので、そのうち土地と建物が生んでいる分だけを切り出して収益価格を求めます。事業を続けたままの価格なので、事業の収益から出る収益価格が主役で、比準価格は参考、積算価格は検証の役目です。

事業の継続を前提とした価格の図解:事業の利益のうち、土地と建物が生んだ分だけを使う。

事業の利益のうち、土地と建物が生んだ分だけを使う。

鑑定評価に際しては、上記鑑定評価目的の下で、対象不動産の利用現況を所与とすることにより、前提とする使用が対象不動産の最有効使用と異なることとなる場合には特定価格として求めなければならない。

出典: 総論第5章 第3節

実務ではこう使う

更生手続中の工場の評価では、事業計画から将来の事業収益を見積もり、そのうち不動産に帰属する純収益を切り出して収益価格を求め、同業種の取引事例があれば比準価格を比較考量し、積算価格で検証します。評価書には、現状の事業の継続を所与としたこと、それが最有効使用と異なるかどうか、特定価格とした理由を書きます。

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