/ 鑑定理論

早期売却を前提とした価格とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、財産を処分するものとして、通常の市場公開期間より短い期間で売却されることを前提に求める処分価格です。つまり、再生手続のために「急いで売ったらいくらか」を示す価格で、早期売却による減価が生じない特段の事情がない限り特定価格になります。

早期売却を前提とした価格とは

資金繰りに行き詰まった会社が民事再生の手続に入ると、持っている土地や建物を売ってお金に換え、債権者への返済に充てることがあります。ふつうに売るなら、広告を出して買い手が集まるまでじっくり待てますが、再生手続では待つ余裕がなく、短い期間で売り切らなければなりません。急いで売ると、買い手が限られて値段が下がるのがふつうです。この「急いで売ったらいくらか」を、対象不動産の種類や性格、所在地域の実情に応じて処分価格として求めたものが、早期売却を前提とした価格です。

早期売却を前提とした価格の図解:返済のために短い期間で売る前提だから、処分価格として求める。

返済のために短い期間で売る前提だから、処分価格として求める。

相当の期間の公開という、正常価格の前提が崩れます

正常価格は、対象不動産が相当の期間市場に公開されていることを条件の一つにしています。相当の期間とは、取得に必要な情報が公開され、需要者層に十分浸透するまでの期間です。早期売却は、その期間より短い期間で売ることを前提にするので、買い手に情報が行き渡る前に売ることになり、この条件を満たしません。だから基準は、早期売却による減価が生じないと判断される特段の事情がない限り、特定価格として求めなければならない、と定めています。

早期売却を前提とした価格の図解:買い手に情報が行き渡る前に売るから、正常価格の前提を満たさない。

買い手に情報が行き渡る前に売るから、正常価格の前提を満たさない。

減価が生じない特段の事情があれば、正常価格になります

特定価格になる理由は、急いで売ることで値段が下がる(減価が生じる)からです。だから、対象不動産への需要が強く、標準的な公開期間で成立する価格と短い期間で成立する価格に特段の差がないと判断できるなら、特定価格にする理由がなくなり、正常価格として求めます。基準が「特段の事情がない限り」と書いているのは、この場合を残すためです。

早期売却を前提とした価格の図解:需要が強くて急いでも値段が下がらないなら、正常価格。

需要が強くて急いでも値段が下がらないなら、正常価格。

比準価格と収益価格を関連づけ、積算価格で検証します

各論第1章は、この価格を求めるときは原則として比準価格と収益価格を関連づけ、積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する、と定めています。急いで売った事例と比べ、収益の面からも確かめる、という組み立てです。比較できる事例が少ないときは、通常の方法で正常価格を求めたうえで、早期売却に伴う減価を行って鑑定評価額を求めることもできます。

鑑定評価に際しては、通常の市場公開期間より短い期間で売却されることを前提とするものであるため、早期売却による減価が生じないと判断される特段の事情がない限り特定価格として求めなければならない。

出典: 総論第5章 第3節

実務ではこう使う

再生手続の申立代理人から財産評定のための評価を依頼されたら、市場公開期間をどれだけ短く見るかを地域の売却実態から判断し、早期売却の事例があれば比準し、乏しければ正常価格を求めてから減価率を査定します。評価書には民事再生法に基づく目的であること、特定価格とした理由、減価の根拠を書きます。需要が強く減価が生じないと判断したときは、その事情を示して正常価格とします。

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