/ 鑑定理論

工業地の個別的要因とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

工業地の一画地ごとに、その価格を個別的に形成する要因です。つまり、地勢や間口のほかに、従業員の通勤の便、輸送施設との位置関係、動力資源、用排水といった、工場を建てて動かすための条件を一画地の単位で見ます。

工業地の個別的要因とは

工場用地を探す会社の担当者になったつもりで、同じ工業団地の区画を見比べてみます。高速道路のインターチェンジに近く大型トラックが出入りしやすい区画、高圧の電力がすぐ引ける区画、工場の排水を処理する施設が整っている区画は、地勢や形が同じでも高く売れます。こうした、その一画地に備わっていて価格を個別に決める条件が、工業地の個別的要因です。基準は主なものを14項目例示していて、そのうち通勤の交通、輸送施設、動力資源、用排水の四つが、住宅地にも商業地にも無い工業地だけの項目です。

工業地の個別的要因の図解:同じ工業団地でも、運べる・動かせる・流せるがちがえば一画地ごとに価格がちがう。

同じ工業団地でも、運べる・動かせる・流せるがちがえば一画地ごとに価格がちがう。

工業地だけの四つの項目は、生産の流れを条件にしています

従業員の通勤等のための主要交通機関との接近性、幹線道路・鉄道・港湾・空港等の輸送施設との位置関係、電力等の動力資源の状態及び引込の難易、用排水等の供給・処理施設の整備の必要性の四つです。人を集め、原材料と製品を運び、機械を動かし、水を使って処理する、という工場の一日の流れがそのまま項目になっています。住宅地が住みやすさを、商業地が客の集まりやすさを見るのと同じように、工業地は物を作る条件を見ます。

工業地の個別的要因の図解:人を集め、運び、動かし、流す。工場の一日がそのまま四つの項目になる。

人を集め、運び、動かし、流す。工場の一日がそのまま四つの項目になる。

交通の項目は、客ではなく従業員の通勤のために見ます

商業地の「主要交通機関との接近性」には目的の語が無く、駅から客が歩いて来られるかを見る項目と読めます。工業地では同じ主要交通機関でも、「従業員の通勤等のため」と目的が書き添えられています。工場に客は来ないので、駅やバスの近さは働く人が通えるかどうかの条件になります。製品や原材料を運ぶ便は、輸送施設との位置関係という別の項目で見ます。

隣接不動産等周囲の状態は、工業地には例示されていません

住宅地では隣の家の様子が住み心地に直結し、商業地では隣の店で客の流れが変わるので、どちらにも「隣接不動産等周囲の状態」があります。工業地の14項目にはこの項目が無く、住宅地と商業地の両方にあって工業地に無いのはこれ一つだけです。基準に理由は書いてありませんが、工場の価値は隣に何があるかより、運べるか、動かせるか、処理できるかで決まる、と読めます。周囲の工場が出す公害のような地域全体の事情は、工業地域の地域要因の側で見ます。

工業地の個別的要因の図解:隣の様子が効く住宅地・商業地と、隣より道と電気が効く工業地。

隣の様子が効く住宅地・商業地と、隣より道と電気が効く工業地。

土壌汚染は、工業地でも例示され、影響は小さくありません

「土壌汚染の有無及びその状態」は、住宅地・商業地・工業地の三つすべてに例示されています。工業地には土壌汚染がつきものだから項目に入っていない、ということはありません。むしろ有害物質を使う工場の敷地であった履歴を持ちやすいのが工業地で、汚染があれば除去や拡散防止の措置の費用と土地利用上の制約が生じ、価格形成に重大な影響を与えることがあります。

工業地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。

出典: 総論第3章 第3節

実務ではこう使う

工業地の個別分析では、幹線道路やインターチェンジまでの距離と大型車が敷地に入れるか、高圧電力の引込みと工業用水の確保、排水の処理先、従業員が通える駅やバスの有無を現地と資料で確かめます。工場跡地では有害物質使用特定施設の履歴を調べ、土壌汚染の調査をどこまで行うかを依頼者と決めます。隣接地との関係は例示に無くても、騒音や振動をめぐる苦情の有無は現地で聞き取っておきます。

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