/ 鑑定理論

説明責任とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

証券化対象不動産の鑑定評価書について、依頼者及び利害関係者その他の者がその内容を容易に把握・比較できるよう、鑑定評価報告書の記載方法等を工夫し、鑑定評価に活用した資料等を明示する責務です。つまり、読み手が「なぜこの額なのか」を自分で追えるように書く義務です。

説明責任とは

家電を買うなら値段の理由はレビューや仕様表で分かりますが、鑑定評価額は「50億円」という数字一つです。証券化対象不動産では、その数字を読むのが依頼者だけでなく、開示を見る投資家や融資する銀行にまで広がり、しかも投資家は複数の物件、複数の鑑定業者の評価書を並べて読みます。根拠の分からない数字では、誰も資金を出せません。だから基準は鑑定士の責務の二つ目に、依頼者に資料と手順を説明して協力を得ること、そして評価書を読み手が容易に把握・比較できる形に整え、活用した資料を明示することを置き、これを説明責任と呼んでいます。

説明責任の図解:先に依頼者へ手順と資料を説明し、後で読み手が追える評価書にする。

先に依頼者へ手順と資料を説明し、後で読み手が追える評価書にする。

まず依頼者に資料と手順を説明し、協力を得ます

責務(2)の前半は依頼者に向いています。証券化等が円滑に行われるよう配慮しつつ、鑑定評価に係る資料及び手順等を依頼者に説明し、理解を深め、かつ、協力を得るものとする、と定めています。証券化対象不動産の評価は、エンジニアリング・レポート、レントロール、収支の実績、修繕計画といった依頼者からの資料に多くを負うので、何をいつ出してほしいのかを先に伝えなければ作業が進みません。ここで「配慮」するのは証券化の段取りが滞らないことであって、依頼者の望む価格に寄せることではありません。

読み手が把握・比較できるよう、記載を工夫し資料を明示します

責務(2)の後半は評価書の読み手に向いています。依頼者及び証券化対象不動産に係る利害関係者その他の者が内容を容易に把握・比較できるよう、鑑定評価報告書の記載方法等を工夫し、鑑定評価に活用した資料等を明示できるようにします。「比較」という語が入っているのは、投資家が複数の物件や複数の時点、複数の鑑定業者の評価書を並べて読むためと考えられ、DCF法の収益費用項目の統一もこの延長にあると読めます。資料の明示とは、どの数字がどの資料から来たかを、出所と入手日つきで読み手がたどれるようにすることです。

説明責任の図解:評価書の数字から、活用した資料の一覧まで読み手がたどれる。

評価書の数字から、活用した資料の一覧まで読み手がたどれる。

DCF法の積算内訳の付記と精緻化も、説明責任の中身です

各論第3章第5節は、収益費用項目ごとに記載した数値の積算内訳等を付記するものとし、DCF法の適用については今後さらなる精緻化に向けて自己研鑽に努めることにより説明責任の向上を図る必要があると定めています。貸室賃料収入なら各区画の面積と単価、修繕費なら修繕計画のどの工事かというように、数字の組み立てが見えて初めて、読み手は電卓で確かめられます。責務(2)が掲げた説明責任は、第5節でこのように具体化されています。

説明責任の図解:数字だけでなく積算内訳を添えるから、読み手が電卓で確かめられる。

数字だけでなく積算内訳を添えるから、読み手が電卓で確かめられる。

(2)不動産鑑定士は、証券化対象不動産の鑑定評価を行う場合にあっては、証券化対象不動産の証券化等が円滑に行なわれるよう配慮しつつ、鑑定評価に係る資料及び手順等を依頼者に説明し、理解を深め、かつ、協力を得るものとする。また、証券化対象不動産の鑑定評価書については、依頼者及び証券化対象不動産に係る利害関係者その他の者がその内容を容易に把握・比較することができるようにするため、鑑定評価報告書の記載方法等を工夫し、及び鑑定評価に活用した資料等を明示することができるようにするなど説明責任が十分に果たされるものとしなければならない。

出典: 各論第3章 第1節

実務ではこう使う

受任時に依頼者へ、必要なエンジニアリング・レポート、レントロール、収支実績、修繕計画の一覧と入手希望時期を渡して説明します。評価書では、活用した資料を出所と入手日つきで一覧にし、DCF法の各項目に積算内訳を添えて、投資家が他社の評価書と並べて読める形に整えます。

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