広範な投資家等とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説
証券化対象不動産の鑑定評価が、依頼者のみならず重大な影響を及ぼす相手として基準が掲げる、投資家や融資者などの人々です。つまり、評価額を見て資金を出すかどうかを決める、依頼者以外の大勢の人のことです。
広範な投資家等とは
自宅を売るために鑑定を頼んだなら、評価額を見るのは依頼者と買い手くらいです。ところが投資法人が買うオフィスビルの評価額は、有価証券報告書や取得のお知らせに載り、投資口を買う個人、融資する銀行、格付けをする機関がそれを読みます。一つの評価額が、顔も知らない大勢の人のお金の判断を左右するのです。基準はこの人々を「広範な投資家等」と呼び、証券化対象不動産の鑑定評価を行う鑑定士の責務の一つ目に、依頼者のみならず広範な投資家等に重大な影響を及ぼすことを考慮するよう置いています。

評価額は依頼者だけでなく、開示を見る大勢の投資家と銀行の判断に使われる。
評価額は依頼者だけでなく、広範な投資家等の判断に使われます
基準の責務(1)は三つのことを言っています。依頼者のみならず広範な投資家等に重大な影響を及ぼすことを考慮すること、不動産鑑定評価制度に対する社会的信頼性の確保等について重要な責任を有していることを認識すること、そして証券化対象不動産の鑑定評価の手順について「常に最大限の配慮」を行うことです。「依頼者」は基準が「以下単に依頼者という」と定義した言葉で、証券化対象不動産の鑑定評価を頼んできた人を指します。投資や融資に係る利害関係者の参考資料になる、という言い方も、この広範な投資家等への影響を別の言葉で述べたものです。
制度への信頼を守るため、手順に常に最大限の配慮を払います
責務(1)が「結果」ではなく「手順」への配慮を名指ししているのには理由があります。評価書を読む投資家は現地を見ておらず、数字が正しいかを結果だけで確かめることができません。処理計画の確認と記録、依頼者立会いの実地調査、エンジニアリング・レポートの活用の判断、DCF法の適用過程の記載といった手順が残っていて初めて、読み手は評価を追いかけて信頼できます。一件の評価書のゆるみは、その評価書だけでなく鑑定評価という制度そのものへの信頼を傷つけるので、基準は「社会的信頼性の確保」を鑑定士の責任として書いています。

一枚の評価書のゆるみが、制度全体の信頼を揺らす。だから手順に常に最大限の配慮。
証券化では、現実と異なる条件は原則として設定できません
総論第5章は、証券化対象不動産の鑑定評価や会社法上の現物出資の鑑定評価のように、鑑定評価が鑑定評価書の利用者の利益に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、原則として、現実の利用状況と異なる対象確定条件、地域要因又は個別的要因についての想定上の条件、調査範囲等条件を設定してはならないと定めています。一般の鑑定評価では、依頼者が条件の影響を自分で見積もれることを前提に条件を認めますが、開示を見る投資家には「もし土壌汚染がなかったら」という条件付きの価格がどれだけ実際と違うのか見当がつきません。エンジニアリング・レポートの提出がなく専門性の高い調査が難しいときも、調査範囲等条件を付けて調査の外に置くのではなく、鑑定士が他の専門家に依頼するなどして調査を行い、対応した内容と理由を鑑定評価報告書に書きます。

エンジニアリング・レポートがなくても、条件で外に置かず、鑑定士が調べる。
例外は、要件を満たす未竣工建物等鑑定評価だけです
総論第5章のただし書きは、証券化対象不動産の鑑定評価でも、各論第3章第2節の要件を満たす場合には未竣工建物等鑑定評価を行うことができるとしています。その要件は、工事の中止や工期の延期などで生じる損害が、売買契約上の約定や各種保険等により回避されることです。投資家が損をしない仕組みが確認できる場合だけ、現実と異なる状態を前提にした評価を認める、という組み立てです。
(1)不動産鑑定士は、証券化対象不動産の鑑定評価の依頼者(以下単に「依頼者」という。)のみならず広範な投資家等に重大な影響を及ぼすことを考慮するとともに、不動産鑑定評価制度に対する社会的信頼性の確保等について重要な責任を有していることを認識し、証券化対象不動産の鑑定評価の手順について常に最大限の配慮を行いつつ、鑑定評価を行わなければならない。
出典: 各論第3章 第1節
実務ではこう使う
投資法人の物件取得では、評価額が有価証券報告書や取得時のプレスリリースに載り、投資口を買う個人投資家や融資する銀行がそれを読みます。だから鑑定士は、依頼者であるアセットマネジャーの要望より、開示を見る投資家に説明できるかどうかを基準にして、条件設定を断り、活用した資料の出所と判断の理由を鑑定評価報告書に残します。
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