証券化対象不動産の未竣工建物等鑑定評価とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説
証券化対象不動産について、工事が完了していない建物等を工事の完了を前提として鑑定評価することで、総論第5章の要件に加え、工事の中止・工期の延期・工事内容の変更で生じる損害が売買契約上の約定や各種保険等により回避される場合に限り行えます。つまり、完成しなかったときに投資家が損をしない仕組みがあるときだけ認...
証券化対象不動産の未竣工建物等鑑定評価とは
投資法人が、まだ鉄骨しか立っていない物流施設を「完成したら買う」と約束することがあります。買値を決めるには完成した姿での評価額が要りますが、もし工事が途中で止まれば、完成を前提に資金を出した投資家が損をします。一般の鑑定評価なら、設計図書や請負契約書がそろい工事完了の実現性が高ければ、完成を前提にした未竣工建物等鑑定評価ができます。証券化対象不動産では、そこにもう一つ、工事が止まったときの損害が契約の約定や保険で回避されること、という要件を重ねます。

図面と請負契約だけでなく、工事が止まったときの損害を誰が負うかまで確かめる。
総論の要件に加え、損害が回避される場合に限り行えます
要件は二段構えです。一段目は総論第5章第1節Ⅰのなお書きで、竣工後の物的確認のための設計図書等と権利の態様の確認のための請負契約書等を収集し、法令上必要な許認可等が取得され、発注者の資金調達能力等から工事完了の実現性が高いと判断されることです。二段目が各論第3章第2節の追加要件で、工事の中止、工期の延期又は工事内容の変更が発生した場合に生じる損害が、売買契約上の約定や各種保険等により回避される場合に「限り」行うことができます。回避されない場合は行えません。工事の中止や遅延がやむを得ない事由によるものでも、投資家の損害は同じなので、回避の措置は求められます。
証券化でも一切できないわけではなく、条件設定の唯一の例外です
総論第5章は、証券化対象不動産の鑑定評価では原則として現実の利用状況と異なる対象確定条件、想定上の条件、調査範囲等条件を設定してはならないとし、ただし書きで、各論第3章第2節の要件を満たす場合には未竣工建物等鑑定評価を行うことができると定めています。広範な投資家等に影響するから工事完了を前提にした評価は一切できない、というわけではなく、対象確定条件が「必ず」現実の利用状況どおりになるわけでもありません。損害回避の仕組みが確認できるときだけ、現実と異なる状態を前提にすることを認める、という組み立てです。

現実と異なる条件の門は閉じているが、損害回避を確かめた未竣工建物等鑑定評価だけ通れる。
価格時点は今であり、竣工する将来の日ではありません
留意事項は、未竣工建物等鑑定評価は価格時点において当該建物等の工事が完了し、その使用収益が可能な状態であることを前提として鑑定評価を行うものであると定めています。今日という価格時点に、完成して使える建物があるものとして値を付けるのであって、評価する日を竣工予定日まで先に動かすのではありません。証券化対象不動産だからといって、広範な投資家等への影響を理由に価格時点を竣工後の将来時点に置き換えることはありません。
確認資料と入手時期を処理計画で確かめ、変更があれば記録します
処理計画の策定に当たっては、あらかじめ依頼者に対し、必要となる資料の主な項目とその入手時期を確認します。未竣工建物等鑑定評価なら、設計図書等、請負契約書等、法令上必要な許認可等の取得に係る確認資料がその中心です。作業の途中で設計図書や建築確認の内容が変わって採用する数量が変わったときは、確認を行った年月日、確認を行った不動産鑑定士の氏名、相手方の氏名及び職業、確認の内容などの記録を作成し、鑑定評価報告書の附属資料として添付します。
証券化対象不動産の未竣工建物等鑑定評価は、総論第5章第1節Ⅰ2.なお書きに定める要件に加え、工事の中止、工期の延期又は工事内容の変更が発生した場合に生じる損害が、当該不動産に係る売買契約上の約定や各種保険等により回避される場合に限り行うことができる。
出典: 各論第3章 第2節
実務ではこう使う
開発型の私募ファンドや投資法人のフォワード・コミットメント案件で、建築中の物流施設や賃貸マンションを竣工前に取得するときに依頼されます。鑑定士は請負契約書と建築確認、工事遅延時の違約条項や完成保証保険の内容を確認し、損害回避の仕組みが確認できなければ条件設定を断ります。
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