市場性を有する場合の建物のみの鑑定評価とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説
建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合に、鑑定評価の依頼目的及び条件により建物だけを対象として行う鑑定評価です。つまり敷地と一体化している状態を前提に、全体の鑑定評価額の内訳として建物について部分鑑定評価を行うもので、積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格と建物残余法による収益価格を比較考量...
市場性を有する場合の建物のみの鑑定評価とは
会社が本社ビルを帳簿に載せるときや、建物だけを担保に取るときには、土地と建物を分けた金額が要ります。土地建物をまとめて売れば1億円という物件でも、「そのうち建物はいくらか」を求めるのがこの評価です。建物は敷地と結び付いてはじめて役に立つので、基準は両者を一体として評価するのを通例とし、建物だけを対象にするのは鑑定評価の依頼目的及び条件による場合と定めています。売ろうと思えば売れる普通の建物、つまり建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合なので、市場で付く値段の内訳として建物の価格を求めます。

土地と一緒に売れる建物を、一体の値段の内訳として求める。
建物を切り離すのではなく、一体の値段の内訳として求めます
総論の対象確定条件には、土地だけを建物が無い更地として対象にする独立鑑定評価と、土地と建物が結合した状態を所与としてその構成部分を対象にする部分鑑定評価があります。総論は独立鑑定評価を土地についてだけ定めていて、建物を独立したものとして対象にする条件は置いていません。基準に理由は書いていませんが、土地は建物を取り壊せば更地として売れるのに対し、建物は敷地から離すと使いようがなく市場で値段が付かないから、と読めます。そこで建物のみの鑑定評価は、その敷地と一体化している状態を前提に、全体の鑑定評価額の内訳として建物について部分鑑定評価を行うものとされています。内訳として求めるので、その建物の敷地の価格形成要因も踏まえることになります。建物の所有者が敷地を持っているか、自用か賃貸かにかかわらず、建物だけを対象にするなら部分鑑定評価です。

敷地から浮かせた建物には値段が付かない。建ったままの内訳として見る。
積算価格を標準にし、比準価格と収益価格は比較考量します
鑑定評価額は、積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び建物残余法による収益価格を比較考量して決定します。積算価格は、その建物を今建て直すのに要する再調達原価から、古くなった分の減価修正をして求めます。比準価格は土地建物一体の取引事例から配分法で建物分を取り出したもの、収益価格は一体の純収益から土地に帰属する分を差し引く建物残余法によるものです。基準は理由を書いていませんが、事例や収益から建物分を切り出すには配分という一手間が入るのに対し、原価法は建物そのものを直接に捉えるので、積算価格が中心に置かれていると読めます。三つを対等に関連づけるのではなく、標準と比較考量に重みが分かれています。

建て直す原価から傷んだ分を引く積算価格が、建物を直接つかむ。
複合不動産価格から配分した価格を標準にすることもできます
ただし書は、建物及びその敷地としての価格(複合不動産価格)をもとに建物に帰属する額を配分して求めた価格を標準として決定することもできる、としています。留意事項はその配分の方法を建付地について述べる方法に準ずるとしており、複合不動産価格に建物の構成割合を乗じる割合法と、複合不動産価格から直接求めた敷地の価格を控除する控除法が使えると読めます。土地建物一体の価格が確かに求められる物件で、内訳という考え方をそのまま数字にする道です。原則の積算価格を標準とする定めと並ぶ、もう一つの決め方です。
この場合における建物の鑑定評価額は、積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び建物残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする。
出典: 各論第1章 第3節
実務ではこう使う
企業の資産評価や減損会計、建物だけを担保に取る融資、土地の所有者と建物の所有者が違う場面の建物売買などで、建物だけの評価を依頼されます。評価書では敷地と一体の状態を前提にしていることを明記し、再調達原価と減価修正の内訳、配分法に用いた事例、建物残余法の純収益と土地帰属分を示します。複合不動産としての価格が確かに求められる物件では、そこから割合法や控除法で建物分を配分した価格を標準にする選択も依頼者に説明します。
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