市場性を有しない場合の建物のみの鑑定評価とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説
建物及びその敷地が一体として市場性を有しない場合に、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物又は現況による管理を継続する公共公益施設の建物について、その保存等に主眼をおいて行う建物のみの鑑定評価です。つまり売る市場のない建物を守り続けるための値打ちとして評価する場面で、一般に特殊価格を求める場合に当たり、...
市場性を有しない場合の建物のみの鑑定評価とは
古い教会の礼拝堂や、県の指定文化財になっている旧家、今も使われている町の役場は、土地ごと売りに出ることがまずありません。それでも火災保険を掛けるときや公有財産の台帳に価格を載せるときには、建物の金額が要ります。基準はこうした建物を、建物及びその敷地が一体として市場性を有しない場合の建物のみの鑑定評価として別に置き、売るためではなく保存等に主眼をおいて評価すると定めています。求める価格は一般に特殊価格で、鑑定評価額は積算価格を標準にします。

文化財・宗教建築物・現役の公共公益施設。三つとも建物だけを、保存等に主眼をおいて見る。
求める価格は、特定価格ではなく特殊価格です
特殊価格は、文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした経済価値を表示する価格です。特定価格は、市場性を有する不動産について法令等による社会的要請を背景に正常価格の前提を満たさない場合に求める価格で、名前は似ていても前提が反対です。分かれ目は、その不動産に売り買いの市場があるかどうかです。礼拝堂や指定文化財の建物は市場がないので、今の使われ方を前提とした特殊価格になります。
保存等に主眼をおくので、積算価格を標準にします
市場性を有する場合の建物のみの鑑定評価では、積算価格を標準に比準価格と収益価格を比較考量しますが、市場性を有しない場合は積算価格を標準として決定するとだけ定めています。基準は理由を書いていませんが、売買の事例がなければ比準価格は作れず、入館料や参拝料は売るための収益ではないので収益価格も拠りどころにならない、と読めます。残るのは、その建物を建て直すのにいくらかかるかから傷んだ分を引く原価法です。主眼は有効活用ではなく保存等なので、収益を生む使い方を想定して価格を膨らませることもしません。
再調達原価と減価修正も、保存を前提に考えます
総論は、建設資材や工法の変遷で再調達原価を求めにくいときは、同等の有用性を持つものに置き換えて求めた置換原価を再調達原価とみなすと定めています。ただ、文化財の建物では旧来の資材や工法で建てられていること自体に存在意義があるので、安易に現代工法の置換原価に置き換えると保存等に主眼をおく趣旨から外れます。減価修正も、設計や設備の古さや市場性の低下は保存を前提とする評価では減価の理由になりにくく、主として経年や損耗という物理的要因に着目することになります。ここは基準が直接定めた文ではなく、特殊価格の趣旨から導かれる考え方です。

同じ工法で建て直す費用から、屋根や柱の傷んだ分だけを引く。
この場合の建物の鑑定評価は、一般に特殊価格を求める場合に該当するものであり、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物又は現況による管理を継続する公共公益施設の用に供されている不動産のうち建物について、その保存等に主眼をおいて行うものであるが、この場合における建物の鑑定評価額は、積算価格を標準として決定するものとする。
出典: 各論第1章 第3節
実務ではこう使う
寺社の本堂や教会、指定文化財の旧家、自治体が現況で管理を続ける庁舎や学校などについて、保険付保額の算定や公有財産の台帳価格のために建物の評価を依頼される場面です。評価書では特殊価格であることを明記し、伝統工法や特殊な資材を前提に再調達原価を積み上げ、修繕の必要性からみた物理的な減価を中心に減価修正を行います。市場価値ではないので、売却できる金額と誤解されないよう依頼者に説明します。
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